義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子

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「どうしちゃったんですかね……?」
 よいしょっとソファーに寝かせながらレイナードは呟く、
「……まあ、気持ちはわからんでもないけど」
「?」
 首を傾げるレイナードに、ライサンダーは言った。
「ヴィルのやつ、普段はすげぇそつなくこなしてるんだよ。成績も運動も何でもできるし、何より顔もいいし。だから本当モテまくってて」
「はあ」
 確かにヴィルヘルムは容姿端麗である。成績優秀で文武両道だというのは、レイナードも知っている。
「だけど今みたいになっちゃってたらもう誰も近寄らねえよ。完全にヤバいやつだし」
「えっと……それはどういう……」
 レイナードが尋ねると、ライサンダーは苦笑した。そして少し考えてから口を開く。
「……まあ、簡単に言うとだな。ヴィルの奴って完璧すぎるんだよ。だから近寄り難いっていうかさ」
「はい」
 すすす…っと耳を近づけて続きを促す。
「なんだけど、高嶺の花っていうか、お近づきになりたい人は山ほどいる!男も女も関係なくな」
「は、はい……」
 なんとなく嫌な予感がしてレイナードの顔がひきつる。ライサンダーはにやりと笑って言った。
「でもさ、そんなヴィルのやつも本命にはへっぽこになっちまうわけよ。んでその本命っていうのがさ……」
「……僕?」
「そ!お前だよ!」
「う、うそぉ!?」
(だって、兄さんは僕のことなんて……)
 ヴィルヘルムにとって自分はただの義弟だと思っていたのに。だがしかし、ライサンダーは自信満々に言い切った。
「いや、絶対そうだって。お前といる時のヴィルはなんかこう…違う。もう本当どうかと思うぐらい別人になってる」
「そ、そうなの…?」
レイナードは改めてヴィルヘルムの様子を見た。レイナードを抱っこしたまま寝てしまっている。普段はキリッとしているあの顔も、今はどこか幼く見えるような気がするのは気のせいだろうか?
「だからさ」
「わっ!」
ライサンダーがレイナードの肩を抱くと顔を寄せてきた。そして小声で囁く。
「そーんなヴィルがメロメロになる相手がどんな奴なのか、ちょっと興味が湧いたわけよ」
「は、はあ……」
(な、なるほど……)
つまり、ライサンダーはヴィルヘルムの豹変ぶりからレイナードのことを知りたいらしい。確かにヴィルヘルムの変わりようは異常かもしれない。しかし何故自分なんかにそこまで執着するのだろうか?レイナードには理解できなかった。
「……まあでもさ」
「?」
ライサンダーはニヤリと笑った。そしてそのままレイナードの耳元に口を寄せると囁くようにこう言ったのだった。
「俺としては、ヴィルよりお前の方が謎めいてると思うわけよ」
「へ?」
(僕?)
レイナードがきょとんとした顔をすると、ライサンダーはぐっと顔を近づける。
「『王の都』から、俺たちの国に来た謎の美少女。あやしいって思わない方がおかしくない?」
「それは……」
(確かに……)
ライサンダーの言い分にも一理あるかもしれない。ヴィルヘルムもそうだが、レイナードが『王の都』から人質としてアドラー家へやってきたことは周知の事実である。ただ。
「僕、男の子ですけど……」
「知ってるよ」
「へ…?」
ライサンダーはあっさり頷いた。レイナードが戸惑うのも無理はないだろう。
「でもさ、美少女の方がときめくっていうか!」
「はあ…」
(なんか不思議な人だな、ライさん…)
「ヴィルヘルムがそこまで入れ込むってのが気になるわけよ。それに……」
「?」
ライサンダーはレイナードの耳元に口を寄せると囁いた。
「ヴィルがここまで執着する相手なんて初めてだからなあ」
(そ、そうなの?)
確かに、ヴィルヘルムは誰に対しても一線を引いて接している印象がある。しかしそれが自分に対してだけというのは考えにくかった。
「……ま!俺は別にお前が男だろうと女だろうと関係ねえし、単に興味があるだけだから気にすんな!」
「はあ……」
レイナードは曖昧に返事をした。
(この人、油断できないかも……)
「まあ、とにかく。俺はヴィルの弱みを握れるなら何でもいいんだよ」
「弱み?」
「そ!ま、その辺の詳しいことは内緒だけどな。だからお前とヴィルの関係についてもっと詳しく教えて欲しいわけ!」
(な、なるほど……)
 レイナードがヴィルヘルムに溺愛されていることは周知の事実だ。しかし、その実態は謎に包まれている部分も多いだろう。ライサンダーはそれを知りたがっているのだ。
「……言うと思います?」
「だよなー。でもさ、俺は諦め悪いから」
「?」
ライサンダーは至近距離でにっと笑う。
「仲良くしような?レイ」
「は、はい……」
(なんだか圧が……)
ライサンダーの笑顔に若干引きながらも、レイナードは答えたのだった。
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