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5章 精彩に飛ぶ
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真っ白な世界で、少女が笑っている。水をたっぷり吸ったような、艶やかな黒髪をなびかせている。それがどうしようもなく美しくて、自分は彼女から目を離せないでいる。
君は誰だという声がでない。知っているのに、知らない。その顔は、白く白く塗りつぶされている。白いワンピースを纏って、自分の手を引いて、どこかへと導いていく。
どこに行こうというのだ。自分をどこに連れて行く気だ。
君はなんだ、君は誰だ。
顔が見えない。誰だか分からない。だというのに、彼女が笑っているのだと分かる。聞こえないのに、声が聞こえる。自分をどこか、知らない世界へ導こうとしている。背筋がぞっと冷える。
思わず、手を振り払う。瞬間、世界が暗転する。
少女は赤く染まっている。顔は赤く塗りつぶされ、ワンピースには血痕のような赤が、黒髪だけがそのままで不気味になびいている。笑い声はもうしない。聞こえるのは、地の底から響くような呻き声。自分に絡みつくように、その声が周囲から聞こえてくる。
なんなんだ。この景色は、なんなのだ。自分の記憶なのか。自分の想像なのか。
知らない、知らない、知らない、知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない。
こんなものは、知らない、はずなのだ。なのに、何故、こうも苦しいのだ。何故こんなに悔やんでいるのだ。何故、こんなに涙が止まらないのだ。何故、何故なんだ。
自分は、自分は、君は、君は……、君は………。
「あ、ああああああああああ、あああああぁぁあぁ!」
絶叫と共に、世界が戻る。
華也に突き付けられた銃口が、鮮明に見える。葛藤が、消え去っている。今胸の中にあるもの、これは何なのだろう。
本能のまま、美緒を抱えている男の前に移動する。一瞬の動揺を逃さず、引き金を引けば男の頭は柘榴の様に飛び散り、紅い水溜りができる。そんなことが起これば、悟とて動揺する。
「どこを、みている?」
死角からの声。そして、全身が冷たくなる感触。
視線のみを動かす。そこにいるのは、あののんべんだらりとした魔導官、だったモノ。
「あ、がっ……ぁ、ぁあ……」
美緒に突き付けられていた刃物はいつの間にか六之介の手にわたっている。それが悟の首に刺さり、頸動脈を切断していた。噴水の様に噴き出る赤い雨を浴びながら、六之介は残る三人の射手の元へ移動、頭部のみを撃ち抜く。
返り血で染まるその顔に浮かぶは、無。何も感じず、何も思わず。その瞳は暗く沈み、陽の光すら届かない。
「……う……りゅ、六之……さ」
華也の声が耳に届く。本来なら決して聞こえぬ声すらも、今の彼には届いた。彼女の元へ跳ぶ。そのわきで、痙攣している悟にとどめとばかりに銃弾を浴びせ、ついには人であったどうか疑わしくなるほど、破壊する。
「……華也ちゃん」
殴られた衝撃か、伽耶の意識は朦朧である。外傷もあるが、頭を殴られている。急ぎ治療せねばなるまい。
華也を抱きかかえ、美緒を背負う。
「……ちっ」
返り血が垂れ、華也の顔に滴る。
それがひどく不愉快でならなかった。無造作に転がる漁師の遺体に一瞥すると、その場から跳んだ。
君は誰だという声がでない。知っているのに、知らない。その顔は、白く白く塗りつぶされている。白いワンピースを纏って、自分の手を引いて、どこかへと導いていく。
どこに行こうというのだ。自分をどこに連れて行く気だ。
君はなんだ、君は誰だ。
顔が見えない。誰だか分からない。だというのに、彼女が笑っているのだと分かる。聞こえないのに、声が聞こえる。自分をどこか、知らない世界へ導こうとしている。背筋がぞっと冷える。
思わず、手を振り払う。瞬間、世界が暗転する。
少女は赤く染まっている。顔は赤く塗りつぶされ、ワンピースには血痕のような赤が、黒髪だけがそのままで不気味になびいている。笑い声はもうしない。聞こえるのは、地の底から響くような呻き声。自分に絡みつくように、その声が周囲から聞こえてくる。
なんなんだ。この景色は、なんなのだ。自分の記憶なのか。自分の想像なのか。
知らない、知らない、知らない、知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない。
こんなものは、知らない、はずなのだ。なのに、何故、こうも苦しいのだ。何故こんなに悔やんでいるのだ。何故、こんなに涙が止まらないのだ。何故、何故なんだ。
自分は、自分は、君は、君は……、君は………。
「あ、ああああああああああ、あああああぁぁあぁ!」
絶叫と共に、世界が戻る。
華也に突き付けられた銃口が、鮮明に見える。葛藤が、消え去っている。今胸の中にあるもの、これは何なのだろう。
本能のまま、美緒を抱えている男の前に移動する。一瞬の動揺を逃さず、引き金を引けば男の頭は柘榴の様に飛び散り、紅い水溜りができる。そんなことが起これば、悟とて動揺する。
「どこを、みている?」
死角からの声。そして、全身が冷たくなる感触。
視線のみを動かす。そこにいるのは、あののんべんだらりとした魔導官、だったモノ。
「あ、がっ……ぁ、ぁあ……」
美緒に突き付けられていた刃物はいつの間にか六之介の手にわたっている。それが悟の首に刺さり、頸動脈を切断していた。噴水の様に噴き出る赤い雨を浴びながら、六之介は残る三人の射手の元へ移動、頭部のみを撃ち抜く。
返り血で染まるその顔に浮かぶは、無。何も感じず、何も思わず。その瞳は暗く沈み、陽の光すら届かない。
「……う……りゅ、六之……さ」
華也の声が耳に届く。本来なら決して聞こえぬ声すらも、今の彼には届いた。彼女の元へ跳ぶ。そのわきで、痙攣している悟にとどめとばかりに銃弾を浴びせ、ついには人であったどうか疑わしくなるほど、破壊する。
「……華也ちゃん」
殴られた衝撃か、伽耶の意識は朦朧である。外傷もあるが、頭を殴られている。急ぎ治療せねばなるまい。
華也を抱きかかえ、美緒を背負う。
「……ちっ」
返り血が垂れ、華也の顔に滴る。
それがひどく不愉快でならなかった。無造作に転がる漁師の遺体に一瞥すると、その場から跳んだ。
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