追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第一章 リンドウの街 編

八話 幼女、青年と冒険者になる

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「ルスカ、ギルドマスターとお知り合いだったのですね? だったら初めから、そう言えば良かったのでは?」

 アカツキはルスカに尋ねるが、ルスカはキョトンとしている。

「知らぬのじゃ」

 一言でバッサリと斬られたアイシャは落ち込み、先ほどまで元気よく動いていた尻尾も垂れてしまい、気の毒にも思えてくる。

「あの……ワタシの名前は、ルスカ様が付けてくれたと聞いたのですが……」
「な、なんじゃと!? うーん、アイシャ・カッシュ……カッシュ……あ!」

 何か思い出した表情を見せると、アイシャも満面の笑みに変わり、尻尾がピンと直立になった。

「アカツキ! 飴玉飲み込んでしもうた。新しいの欲しいのじゃ」

 手の平を差し出し飴玉を要求する姿に、アイシャの尻尾は重力に負けて、最早ピクリともしない。

 アイシャに対して目を細め同情し始めたアカツキは、しゃがんでルスカの両肩を掴む。

「そろそろ、思い出してあげて下さい。飴玉は後であげますから」
「アイシャの事か? とっくに思い出したのじゃ。バーン・カッシュの孫──いや、曾孫だったはずじゃ」

 それを聞いた瞬間、アイシャの耳がピンと立ち、尻尾は千切んばかりに振りまくり思わずルスカに抱きついた。

「暑苦しいのじゃ! 嬉しいのはわかったからくっつな! それよりギルド登録じゃ。出来るのか、出来ないのか!?」
「ああ、ワタシとした事がすいません。どうぞ、ワタシの部屋に。説明致しますので」

 受付横の扉を開けると、二階へと上がる階段があり、中に入るように促され、二人は二階へと上がっていく。
続いてアイシャも入っていくが、その刹那受付のエルフの女性に対して目で殺すような視線で一瞥した後、一言漏らす。



 扉が閉まると、未だに腰を抜かしているエルフ女性は、ズボンと下着を履き替えて、今いる床を掃除する羽目になるのだった。


◇◇◇


「粗茶ですが」

 アイシャの部屋に入った二人は、三人掛けの白いソファーに促され腰を降ろす。
アイシャは、棚からティーポットとカップを取り出し、二人の前にあるアイボリーのテーブルに並べるとお茶を注ぎ、三人分のお茶が用意されると、ルスカ達が座るソファーの対面にある一人掛けの椅子に腰かける。

 各々がお茶を一度口をつけると、口火を切り出したのはルスカだった。

「それで? バーンはどうしておるのじゃ?」
「随分前に亡くなりましたよ。ワタシが生まれた頃には居ませんでしたし。ワタシの名前は、祖母がルスカ様に頼んだと言う話です。それに以前ワタシが幼い頃、一度お会いしましたよ」

 バーン・カッシュ。前回の魔王アドメラルク討伐を成した勇者パーティーの一人で、当時は若き剣士だった。
討伐後は犬の獣人の娘と結婚し、余生を過ごした。

「そうかぁ……亡くなったんじゃな。まぁ、あれから約百五十年経っているのじゃ、当然じゃな」

 カップの中のお茶を一気に飲み干す姿は、まるで寂しさごと飲み干しているようにも見える。

「それに幼い頃にワシに会ったとな?」
「はい。シャウザードの森に祖母とお礼を兼ねて。祖母のお手製のクッキーをお土産に」

 クッキーと聞き、目を大きくするルスカ。

「おお、思い出したのじゃ。あのクッキーは旨かったのじゃ! また食べたいものの一つなのじゃ」
「すいません、祖母もあの後、亡くなったのでクッキーはもう……」
「食べれぬのか!? はぁ……残念じゃ」

 酷く落ち込んだ表情のルスカだが、アカツキの方に顔を向けると頭の中を切り替えた。

「では、話題を戻すのじゃ。何故アカツキはギルド登録出来ぬのじゃ?」
「結論から申しますと、ギルド登録は可能です。ですが、受付の者が言う通りギルドの通例になっております。もし、これを無視されますと厄介事を抱えることになるのでお勧め出来ません」

 厄介事に巻き込まれれば、まずルスカが先ほどみたいな事を仕出かさないとも限らない。
アカツキにとっても、それは望む所ではなく、断念するしかなかった。

「なら、ワシはどうなのじゃ?」
「それも可能です。ワタシが身元を保証しましょう」

 意外にあっさり許可を出したアイシャ。
登録は受付でしか出来ないと言うので、三人揃って一階の受付へと戻って行った。

 一階の扉を開けると、受付のエルフの女性がいるのだが、先程とズボンの色が青から白へと変わっているのに、三人は気づき哀れみの目を向ける。

「あ、あの……先程はすいませんでしたぁ!」

 アカツキとルスカに向かって恭しく頭を下げる様子から、反省しているみたいだ。
実は、三人が二階に上がってからズボンと下着を履き替えて床を掃除している時に、酒場にいた魔法使いから、ルスカの危険性を教えられたのだ。
 
 危うく、リンドウの街全体が消え去る所だったと。

「ナーちゃん、この子がギルド登録をするから、手続きしてくれる?」

 アイシャは、ナーちゃんと呼んだ受付の女性エルフに指示を出すと、カウンターに登録書を取り出して手続きを開始する。

「すいません、こちらの登録書に必要な要項をご記入お願いします」
「ナーちゃん、わかったのじゃ」

 幼女に“ちゃん”付けで呼ばれ、エルフ女性は我慢しているのか顔が左半分ひきつっている。

 ルスカは受付のカウンターに置かれた登録書に記入をしようとしたが、ここで問題が発生する。

 カウンターまで、背が届かない。

 ルスカは目一杯背伸びをしているが、受付のナーちゃんからは頭の先すら見えない。

 その時、酒場から失笑が漏れたのが聞こえた。

 ルスカが酒場に向かって睨み付けると、慌てたのはアイシャとナーちゃん、それにナーちゃんにルスカの危険性を教えた魔法使いだ。

「おっ? おっ? おおっ!」
「これで書けるでしょう」

 後ろから抱きつかれる形でルスカは、アカツキに持ち上げられる。
初め驚きはしたものの、ご機嫌が良くなり登録書に記入していく。

 そんな二人を見ていた周りの人達は、酒場にある空いている椅子に目をやった。


◇◇◇


「はい。手続きは終わりました。こちらがギルド証になります」

 受付のナーちゃんがルスカにギルド証を手渡し終えると、安堵の表情を見せる。
 そんなナーちゃんにアイシャは、何かを耳打ちすると再びカウンターに登録書を置いた。

「えっと……アカツキさん、でしたっけ? あなたの手続きもしますので、こちらに必要な要項をご記入下さい」
「えっ? でも、私は……」

 先程登録は可能だとアイシャから聞かされてはいたが、同時に厄介事を抱える事になると説明されたばかりだ。

 恐らくアイシャに耳打ちによるものなのだろうが。

「アカツキさんの厄介事は、ギルドで引き受けます。ですので安心してください」

 アイシャが説明するのだが、どうも納得がいかない様子の二人。
 それなら何故始めに言わなかったのだろうかと。

「アイシャ……お前、ワシを利用するつもりじゃな?」
「そそそ、そんにゃことないです」

 思い切り動揺を見せるアイシャに対して、白樺の杖を突きつけると、「ひっ!」と悲鳴を漏らしアイシャは半歩後退する。

 アカツキはそれを見てルスカを止めると、アイシャに向き合う。

「私も説明願いたいですね。目的は……ルスカ、ですか?」
「ううっ……」

 二人に詰め寄られアイシャは観念し、説明を始めた。

「アカツキさんは知っていると思いますが、ギルド登録した人には幾つか義務がございます。
 その内の一つにギルドの要請に応えなければならない義務があるのですが、例えば万一魔物などに街が襲われた時にですね、ルスカ様が居れば心強いですし、それに比べればアカツキさんの厄介事など些細な事です。
 ですが、アカツキさんが先に登録すると、ルスカ様は登録しないでしょう? ですので、先にルスカ様に登録してもらったのです。うぅ……すいませんでしたぁ!!」 
 
 床に手を付き頭を下げるアイシャ。その頭を杖でポコポコと、ルスカが叩いている。
 アカツキは二人のやり取りは無視をして、登録書に記入し始めた。

 アイシャは、てっきりルスカのギルド登録を抹消を言われるとばかり思っていたので、アカツキの行動に驚く。

「あ、あの……よろしいのですか?」
「構いませんよ。この街は大き過ぎず小さ過ぎず、丁度良いですし、住みやすそうですからここを拠点にしようかと。その代わりに……条件が」

 構わないと言われ喜ぶも、つかの間、条件があると続けられ、ゴクリと生唾を飲み込む。

「ま、まさかワタシの身体が目当てですか……」

 ざわつき出す酒場の男ども。

 犬のように尻尾を振りながら誰にでもスキンシップが多いアイシャは酒場の人気者だ。
狙っている男は受付エルフのナーちゃんより多い。

「要りませんよ、そんなもの……私とルスカが住む家を紹介して欲しいだけですよ」
「そんなもの!?」

 アイシャはショックを受け、酒場の男どもは安堵する者と怒る者と半々なのだが、一人、受付のナーちゃんは、ほくそ笑んでいた。
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