追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第一章 リンドウの街 編

十六話 幼女と青年、採取する

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「ご、ご馳走様でした……」
「ごちそうさま……」

 盗賊行為をしていた姉弟はお礼を言いながらも、鍋の中のサンドイッチは綺麗に無くなっていた。

 鍋をアイテムボックスにしまうと、アカツキはルスカと少年パクを馬に乗せ、手綱を木から外す。

「すいませんが、話は道すがら聞きます。ここでずっといる訳にはいきませんから。それと、歩けますか?」

 ルスカと少年はアカツキと歩幅が違う為、歩かせる訳にもいかず馬に乗せたが、女の子をどうするか悩み、ひとまず聞いてみることにした。

「わ、ワタシは大丈夫です。なんならワタシが馬を引くので、ご主人様は乗って下さっても」
「誰が、ご主人様ですか! はい、ルスカもそんな目で見ない。どうしてこうも、ちょくちょく奴隷になりたがるのですか? あ、もしかして奴隷だったのですか!?」

 女の子は大丈夫と自ら言ったので、歩きだすアカツキ達。
ルスカは奴隷と聞くと無表情になり焦点の定まらない目で、アカツキを見る。
しかし、それよりも問題は二人が逃げ出した奴隷かもしれないという事だが、ルスカがそれを否定する。

「アカツキ、それはないはずじゃ。奴隷には手首に奴隷輪というアイテムが着けられる。二人にはそれがないのじゃ」
「奴隷……輪、ですか?」
「うむ。契約時に着けられるのだが、一生外せぬのじゃ。無理に外そうとしたり、主人に反抗的な態度を取ると、奴隷輪の内側から魔法で手首を切り落とすのじゃ」

 平然と答えて妙に詳しいルスカだが、アカツキは敢えて言及しなかった。
しかし、二人は違う。顔が蒼白になっていたのだ。

「……まず、お名前をお教え願いますか? 私はアカツキ。こっちはルスカです。弟さんは、パクさんで良いのですよね? あとはあなたです」
「わ、ワタシはミラと言います。あの……実はワタシ達は奴隷商に売られる所で、逃げ出してきました」

 ミラという女の子が、そう吐露すると、頭を抱えだすアカツキとルスカ。

「契約は、その奴隷輪でしたっけ? 着ける前なのでしょうが、その奴隷商が主張してきたら厄介ですね」
「確かにのぉ。売られる事が決まっていたなら、お金のやり取りをしておるはずじゃ。厄介じゃのう」

 アカツキに同意するルスカだが、小声で「……あれは別に奴隷に着ける為に作ったのではないのじゃが……」と物騒な事を呟くのが聞こえる。
アカツキは聞かなかったフリをし、次の疑問をミラにぶつけた。

「先ほど“売られる”と言ってましたが、ご両親にですか?」
「はい。あ、いえ、母はいません。父と弟と三人暮らしだったのですが、父が麻薬にハマって……」

 麻薬を買うお金がなくなり子供を売った、そういう事だろう。
アカツキは二人に同情の表情を見せるが、ルスカは別の事に食いついく。

「麻薬じゃと!! あり得ぬ、材料となった植物は焼払ったはずじゃ」
「ルスカ。私が以前いた世界では、様々な麻薬が闊歩かっぽしていました。法で禁止にしたりしても、次から次へと……」
「くっ……! 新種か!」

 更に厄介事が増え、頭を悩ますルスカとアカツキ。
新種の麻薬に奴隷商、この奴隷商人も麻薬をしているミラ達の父親と取引するくらいだ、まともではないと考えられた。

「ミラ達の事は、後でギルドに報告するという事で。ひとまずクエストをこなしましょう。ミラ達も手伝ってもらいますよ」

 ミラ達は、ただ頷く。ギルドに自分達の事を報告したら、奴隷商の元に帰されるのではと、気が気でなかった。


◇◇◇


 闇の戸張が開け朝靄あさもやがかかり、空が銀色に輝きだした頃、南へと進んでいた街道は、直角に西側へと曲がった地点に到着する。

「さあ、この森の中の湖に、目的のピーンがあるはずです」

 アカツキ達は、森へと入っていく。森の中は高い木々で覆われランプの灯りを頼りに、ひたすら真っ直ぐに進む。
森のカーテンから日射しが入り込み、ランプの灯りが不要になった頃、目の前に大きな湖が目に飛び込んできた。

「さて……と、ピーンは何処でしょうか?」
「ピーンとは、あの果物のピーンですか? それなら彼処に」

 ミラが指差す方角にある木に、たわわに実った赤紫色の果実がなっている。

「確かにアレですね。ミラ、ありがとうございます」

 馬を引き、木の側までやってくるとアカツキは一つ失念していた。

「思っていたより、背の高い木ですね。私でも届きませんか」

 アカツキは手を伸ばし軽くジャンプするが、一番下にある物にも届かない。
さて困ったと顔をするアカツキに対して、ふふんと鼻息荒くルスカの顔が、したり顔に変わる。

「ワシの出番なのじゃ。魔法で楽勝なのじゃ」

 白樺の杖の先を木に向けると、緑色の光が輝き出す。

「ルスカ、待ってください! 木を傷つけては駄目ですよ!」

 それを聞いて、杖の先の光が消える。どうやらルスカは、木ごと薙ぎ倒すつもりだったようだ。したり顔から、気まずそうな顔に変わっていた。

「あの、ワタシとパクが木に登りましょうか?」
「おお、木登り得意なのですか!?」

 意外な才能だ。と思ったのだが返ってきた返事は、予想外のものだった。

「いえ、木登りなんて初めてです」
「はぁ……役に立ちたいという気持ちは嬉しいですが、無茶は止めてください」

 ミラの必要以上の献身ぶりに呆れつつ、どうしたものかと木の周りを歩く。
何かの影響でだろうか、周りには幾つかピーンが落ちている。

 アカツキは地面に落ちていたピーンを、拾い上げマジマジと観察すると、固い皮に覆われているだけあって、中までに達するキズらしいものは見当たらない。

「ミラ」

 アカツキはミラだけを側に呼んだのだが、ミラだけでなくパクとルスカもやってくる。

「ピーンの事を知ってそうなので、お聞きしますが、ピーンの皮は、料理などに使いますか?」
「え? うーん、固いし苦味が強いので食べないと思いますが」

 ミラからそう聞いたアカツキは、ピーンのなる木の側まで寄ると、木に対して横を向き右足を上げると、思いっきり木を蹴った。

「きゃあぁぁ!」
「……危ないっ」
「うわぁぁ、こ、怖いのじゃ」

 木は揺らされると、その枝からピーンを離し、下にいたアカツキ達に向かって落ちてくる。固く重いピーンの雨だ。ルスカ達はパニックになった。

「あああアカツキっ! 落とすなら一声かけて欲しいのじゃ!! 怪我するところだったぞ。あと、怖いのじゃ!」

 ルスカはアカツキに、恐怖で早くなった鼓動を押さえるように胸に手をあて、激昂する。

「す、すいません。まさか、こんなに落ちてくるとは。ミラ達も大丈夫でしたか?」

 ミラ達はお互い抱き合いながら、涙目で頷く。

 たった一度蹴って揺らしただけで、木になっていた三分の二以上のピーンが、落ちてきたのだ。木の周りは、あっという間にピーンだらけになっていた。

「と、取り敢えず拾いましょうか。それとミラは三つ、パクは二つ、自分で持ってください」

 ピーンを拾い集めると四十個以上あり、そのうち五個をミラ達に持たし、残りはアイテムボックスへとしまう。
ルスカは、何故アイテムボックスにしまうなら、ミラ達に個別に持たせるのかと、不思議な顔をする。

「いいですか。それは、あなた方の取り分になります。私達が受けたクエスト内容は、ピーン五個で銅貨三枚です。それが、あなた方の当面の生活費になるのですから、しっかり運ぶのですよ」

 ルスカは、アカツキに配慮に感心していた。
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