追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第一章 リンドウの街 編

二十二話 幼女と青年、厄介事を引き受ける

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 アイシャに半ば強引に連れられ、ギルドの二階への階段を上がり、アイシャの部屋へと入るアカツキとルスカ。

「まぁ、どうぞ。座って下さい」

 アイシャに促され二人掛けの白いソファーへと腰掛ける。
アイシャがお茶を準備し終えて、テーブルに並べるとアカツキ達と向かい合わせにある一人掛けの椅子に座った。

「アイシャさん、色々手を回して下さりありがとうございます」

 アカツキはお茶を手に取る前に、頭を下げて礼を言う。
続けてルスカもアカツキに倣い頭を下げた。

「ちょ、ちょっと、頭を上げて下さい。ワタシは自分の仕事をしただけですって」

 ルスカも頭を下げてくるとは、予想していなかったのか慌てて止めに入った。

「あー、もう。これじゃ頼みにくくなっちゃう」
「頼みごと?」
「あー、えーっと。それは、また後で。それより拾った二人はどうしました?」

 何かを隠し誤魔化すような仕草を見せるアイシャに、一瞬眉をひそめる二人。
アカツキが、ミラ達がゴッツォの店で働くことになったと報告すると、大袈裟に喜ぶが尻尾は全く反応していない。

「そうですか、ゴッツォさんの。それは良かったです。何せ、あの宿は商人にとって生命線なんですよ」

 アイシャが言うには、グルメール王国を出るにはザンバラ砂漠を越えなくてはならず、行きも帰りもあの宿で休憩しなければならず、特に奴隷商人などは、顕著に各国を回らなければ商売にならないので、あの宿で働いている限りは安全を図れるだろうと。

 それを聞いた二人は、ゴッツォの店で働く事に予想外の効果で安堵する。

「実はその事で、お二人にお願いが──」
「よし、帰るのじゃ。アカツキ」
「そうですね」
「逃がしません!」

 帰ろうと立ち上がるアカツキの腰にしがみつき、引き止める。

「ええぃ、離すのじゃ」
「痛い痛い、尻尾引っ張らないで! ルスカ様ぁ」

 アカツキの腰にしがみつくアイシャの尻尾を力一杯引っ張り、引き離そうとするルスカ。

「お願いですから話だけでも聞いて下さ~い!」

 涙目で必死に訴えてくるアイシャに、ルスカはお尻に片足を乗せ全体重を後方に持っていき力一杯尻尾引き始める。

「ぎゃあー、ちぎれる、ちぎれる! 尻尾ちぎれちゃう!」

 アイシャの叫び声はギルド全体に響き渡り、下の酒場の男達は、静かにして欲しいとナーちゃんに訴えるのだが、誰も助けに行こうとはしなかった。


◇◇◇


 十分ほどのやり取りの結果、話だけ聞くという条件でアカツキが折れた。

「あー、いたたたっ。ルスカ様、本当にちぎれたらどうするんですかぁ?」
「うるさい! さっさと話すのじゃ!!」

 頭の上の犬のような耳は垂れ下がり、トーンの落ちた声で話始める。

「実は、調査してもらいたいことが御座いまして。アカツキさん達が拾ってきた子達の父親を調べて欲しいのです」

 麻薬中毒と思われるミラ達の父親を調べるということは、言わずもがな麻薬に関してと同意だ。
アカツキ達としては、ミラ達に関することでもあるので、手を貸したいが、気になることもある。

「どうして私達なのです? 確かにミラ達は拾いましたが、私達はまだFランクですよ?」

 アカツキの言う事は最もで、Fランクが受けれるクエストは、食材の採取や食材となる小動物の狩猟である。
犯罪の調査などはCランク以上が妥当だ。
ましてや、麻薬関係だとすれば組織的犯罪の可能性大である。

「えっと、本来はCランク以上にやらせるのですが、今回は父親個人の調査をしてもらいたいのです。簡単に言えば麻薬中毒者かどうかの確認です」

 アイシャは、お茶の入ったカップを手に取り一口飲む。
ただ、その視線はアカツキ達にはなく、斜め下の床を見ていた。

「何か、怪しいのじゃ」

 ルスカに指摘されると、アイシャの表情は変わらないが、尻尾がピンと立ったのを二人は見逃さなかった。

「さて、話は聞きましたし帰りましょうか。ルスカ」
「うむ、そうするのじゃ」

 二人が立ち上がると、アイシャはカップをテーブルに乱暴に置いて、慌てて二人にしがみつく。

「すいません、すいません。話をしますから! だから帰らないで!」
「だから何でワシらに頼むのじゃ!? さっきから耳が鼻に当たってくすぐったいのじゃ! 話さないと耳、引っこ抜くのじゃ!」
「やめてぇえ!」

 本当に鬱陶うっとうしくなってきたルスカは、アイシャに抱きつかれながらも唯一空いている右手で耳を掴むと、本気で力一杯抜きにかかる。

「いやあぁぁぁぁ!!…………」

 アイシャの悲鳴はギルド内に当然響いたが、酒場の男達には聞こえていない。
それは……

「ナーちゃん、わかる。わかるよ! なんかあのチビッ子怖えよな!」
「ヒック……わかりますかぁ……ギルマスもギルマスですよぉ。あんな睨むことないじゃないですかぁ、ヒック。わたし……久々におもらししちゃったぁ。えへへへ……」
「うんうん。おれもあの光景忘れられねぇよ」
「えへへへ……ヒック」

 一階は一階で、仕事放棄したナーちゃんと男達で盛り上がっていたから……


◇◇◇


「うぅ……髪の毛抜けたぁ」

 耳を掴まれた際、髪の毛を数本一緒に引っ張られた為、耳は抜けなかったが髪の毛は抜けたアイシャ。
途中から本気で泣き出すものだから、流石にアカツキは止めたのだが、ちょっと遅かった。

「そ、それで、どうして私達なのですか? その辺りから教えてください」

 未だに涙目のアイシャに、隠している事を聞き出そうとアカツキは問い詰める。

「それは、アカツキさん達が、ミラ……ちゃんでしたっけ? その子の関係者だからです」

 髪の毛の抜けた辺りを気にしながら手でさすり、アイシャは答えるが、アカツキ達はピンときていない。
ルスカが杖の先をアイシャに向けて脅すが、恐れおののくも、ギルドマスターとしての矜持だろうか、やはり話そうとはしない。

「それじゃ引き受けようにも……もう少し情報を下さい」

 アイシャは腕を組み考えぬいたた結果、与えた情報。
それは“向かう場所は首都のグルメール“。
“グルメールにもギルドがある”。
“リンドウのギルドに麻薬の情報が入ったのは初”。
この三点のみだったが、アカツキはテーブルに肘を乗せ頭を抱え込んでしまった。

「すごい厄介な案件じゃないですか……なるほど、これは私達じゃないと駄目ですね」

 どうやらルスカにもわかったらしく、呆れるように天井を見上げる。

「はぁ……つまりはグルメールのギルドからも王族からも、このリンドウに麻薬の情報が回ってきていない。関わりがある可能性が大、ということですね」

 アイシャは返事の代わりに黙って頷く。

 アカツキ達でなくてはならないのは、アカツキ達がミラの父親に接触してもおかしくないからで、他のパーティーだと不自然だからだ。
また、他のパーティーだと買収されて口外される可能性が非常に大きかった。

「お願いします! 報酬は銀貨一枚出しますから!」

 テーブルに額を擦り付け嘆願するアイシャ。
銀貨一枚は、かなり破格だ。実際ミラの父親が麻薬中毒者かを確認するだけ。
しかし、即答は出来ない。
ギルドや王族が関わっているという事は、何かあったとき首都のギルドの力を借りれない可能性が高いから。

「アカツキ、引き受けるのじゃ」
「ルスカ……しかし、それは」
「なに、何かあったらワシがアカツキを守るのじゃ! それにな状況が似ておるのじゃ。ルメール教の時と」

 カルト集団ルメール教。昔グルメール王国の暗黒の時代を作り、ルスカによって滅ぼされた犯罪集団である。

「それに、このまま行くと戦争が起こるのじゃ」
「「あっ!!」」

 アカツキもアイシャも失念していた。

 麻薬がこのローレライ全土に広まれば帝国もザンバラ砂漠の上にあるグランツ王国も黙っているはずがない。
グルメール王国の入り口にあたるリンドウの街が戦場になるのだ。

「わかりました。しかし、ミラの父親を調べるだけで良いのですか?」
「はい。確認出来れば、帝国のギルド本部も動いてくれます」

 ルスカは今一つ納得していない様子だが、アカツキは引き受ける事にした。

「ただ、一つ条件が……」
「ま、まさか。今になってワタシの身体を!?」
「だから、そんなの要りませんて」
「そんなの!?」

 アカツキの条件は、家に窯を作りたいので費用を出して欲しいとの事だった。

「はぁ……窯ですか? パンでも作るのですか?」
「はい。あとクッキーも焼けますし」
「クッキー! アイシャ、是非ともなのじゃ!」
「わ、わかりましたぁ! わかりましたから!」

 クッキーと聞き目を輝かせながらテーブルに体を乗り出すルスカ。
アイシャはルスカの勢いに呑まれ引き受けてしまう。

 後々後悔する事も知らずに……
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