追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第三章 迫る因果編

五話 幼女と青年のとある一日 後編

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「ただいまぁアカツキー、おやつ欲しいのじゃー」

 アイシャが帰り、日が傾いて少し気温が落ち着き出した頃、帰って来たルスカを見てアカツキが目を大きく見開き驚く。

「わぁぁ!! ルスカ、ちょっと待ってくださいー! 泥だらけじゃないですか!?」

 ルスカの服も靴も手も顔も髪も、全てに泥土が付いている。
アカツキは玄関先でルスカを立たせておき、急いで三つのかまどでお湯を沸かし始める。
沸かしている間に、ルスカを持ち上げると裏庭へと連れていく。

 床に落ちる泥にアカツキは阿鼻叫喚を上げる。
折角午前中に掃除をしたばかりなのにと。

 アカツキの嫌いなものの一つが“二度手間”である。
時短をモットーのアカツキにとって、時短を邪魔する“二度手間”は天敵なのだ。

 裏庭にルスカを運び入れ、水を汲むと濡らした布で顔や髪を拭いていく。

「ほら、ルスカ。手を洗って」
「アカツキ、お腹空いたのじゃ~」

 とことんマイペースなルスカに手を洗わせている隙に、アカツキは家に戻りアイテムボックスからパンとイチゴのジャムを取り出し、パンにナイフで切れ目を入れて間にジャムを塗り込む。

 その後、床に落ちた泥を拭き終えると、椅子とパンを持ったアカツキが裏庭に戻り、ルスカを椅子に座らしてパンを与える。

「お風呂入れて来ますから、それを食べておいてください」
「アカツキ! このパン柔らかいのじゃ」

 パンの柔らかさに困惑するルスカに、笑顔を見せることで成功したことを示してやると、ルスカは瞳を輝かせパンにかぶりつく。

「んん~!」

 ルスカは口一杯に頬を脹らませ、足をばたつかせる事で喜びを表す。

 アカツキはその間に、お風呂にお湯を入れた後、水を足してぬるま湯にしていく。

「さぁ、お風呂沸きまし──」

 アカツキがルスカを呼びに行くと、口も手もジャムでベトベトのルスカを見て思わず膝を折り手をつく。

「はぁ……着替え用意しますから、お風呂入って来てくださいね」
「アカツキも入るのじゃ!」

 アカツキは空を見上げると、西に沈みかける日の光が、空をオレンジ色のグラデーションで彩っていた。

「ちょっと時間早いですが、まぁいいですか」

 汚れた服と靴を脱がしアカツキはルスカを連れて風呂場に行く事にした。


◇◇◇


 風呂場の浴槽はアカツキには小さく、足を折り畳みながら浸かり、その隣でルスカは浴槽の中でぐるぐると回ったり潜ったりと落ち着きがない。

「はぁ……お風呂はやっぱりいいですね。ルスカ、肩までちゃんと浸かって」
「はーいなのじゃ」

 ルスカは気持ちのいい返事をすると、アカツキを真似て体育座りをして肩どころか鼻の辺りまで沈んでしまい、慌てて浴槽の縁に掴まり今度は肩まで浸かる。

 ここリンドウの街に戻り、竈が三つに増えてからは毎日の様にお風呂に入る二人。一般人が聞いたら羨ましがる話である。

 ただ、アカツキには一点不満が。石鹸だ。ルスカなどは特に気にする様子はないが、今までの習慣からかどうも石鹸を使わなければ落ち着かなかった。

「シャンプー……は、無理だとしてたも石鹸は欲しいですね。昔作り方を習ったような……忘れてちゃいましたね」

 しばらくしてお風呂から上がった二人。

 アカツキはルスカの髪を拭いてやる。
泥を落とし綺麗になった藍白の髪を、付いた水滴を挟むように拭いていく。
素っ裸で立っているルスカは、目を細めて気持ち良さそうにしている。
ルスカは、アカツキに髪を拭いて貰うのが好きで、アカツキもルスカの髪を拭いていると昔を思い出していた。


◇◇◇


 お風呂から上がり、ルスカとアカツキは夕飯の用意を始めた。

 アカツキは、アイテムボックスから小麦粉と塩、以前おにぎりを作った時に余った鮭と、パン作りで余ったバターを出すと、鮭に塩と小麦粉を振り焼いていく。

 今夜のメニューは鮭のバター焼きだ。

 ルスカも、お皿を用意したりフォークやナイフをテーブルに並べる。

 パンをいくつか出して籠に入れると、ルスカに渡す。鮭をひっくり返しバターを入れ、アカツキは火加減を調整した後、付け合わせの野菜を切っていく。

 鮭が焼き上がると、皿に付け合わせの野菜と共に盛り付けていく。

「いただきますなのじゃ」
「はい、どうぞ」

 アカツキが座る前に既に椅子に座っていたルスカの両手にはフォークとナイフが。
アカツキが座ると同時にフォークで鮭をぶっ刺して、そのまま口に運ぶ。
さりげなく、ルスカのすぐそばに皿を移動させてやるとその上にフォークから落ちた鮭が乗る。

「んー。今日もアカツキのご飯は美味しいのじゃ」
「ありがとうございます。ほら、パンもどうぞ」

 アカツキはルスカの食べる姿を嬉しそうな顔をして、見つめている。

「今日は何してたのですか?」
「どろけいしたのじゃ!」
「え? それは懐かしい。泥警なんてあるのですね」

 “泥棒と警察”。泥棒側と警察側に別れて行う追いかけつこ。
アカツキも小さい頃、よくやった遊びだ。

「アカツキもやったのか!? あれは投げる方は楽しいのじゃが、投げられる方は辛いのじゃ」
「投げる? 何をです?」

 ボールでも投げるのかと思いもしたが、辛いの意味がよく分からなかった。

「“泥刑”じゃから投げるのは泥に決まってるのじゃ」
「それで、泥だらけだったのですね……」

 アカツキとルスカは、今日あった出来事など他愛もない話をしながら団欒を過ごす。

 二人はあまり過去の事を話さないし聞かない。

 アカツキは、ルスカが自らの過去の話をしたがらないのを察していたし、敢えて聞く事がなかったのは今の嬉しそうな顔のルスカの表情を変えたくないから。

 ルスカはルスカで、アカツキから妹の話を聞く度に胸にモヤモヤと嫌な気持ちが立ち上ぼる。
それ故に、自らアカツキの妹の話に触れなかった。

 しかし、二人にとってはそれでいいのだ。
 
 二人は楽しい団欒を噛み締めながら食事を進めるのだった。


◇◇◇


 窓の外は、すっかり日は落ちて家々に灯されているランプの明かりのみ。
人の行き交う声も聞こえない静けさの中、アカツキとルスカが食器などを洗う音のみ。

 時折眠いのかルスカは目を擦りながらも、頑張ってお手伝いをする。

 食器を洗い終え、アカツキは馬に餌を与えると、腰を伸ばして空を見上げる。
前の世界では見られない星々の輝きを感慨深く眺めている。

 一緒に見ようと食器を片しに家に戻ったルスカを呼びに行くと、床に力尽きたルスカが。

「ほら、起きてルスカ。寝るなら、寝室で」
「うー……」

 ルスカがアカツキに向けて両手を伸ばして抱っこを要求してくる。

「ルスカ、寝る前にトイレはいいですか? おねしょしちゃいますよ」
「うー……おねしょしないのじゃ」

 アカツキに抱っこされたルスカは、否定しながらもアカツキから降りてトイレに向かう。

 椅子に腰掛け待っていると、ルスカが目を瞑りながらトイレから出てくる。

 このままだと、また床で寝そうなルスカを抱えて二階の寝室に運んでいく。
ベッドに寝かしつけ掛け布団をかけてやると、アカツキは隣に寝転びルスカの寝顔に癒されながら、うたた寝する。
ルスカもアカツキの胸に顔をすり寄ってぴったりと寄り添うのだった。

 アカツキの夜はまだまだ終わらない。

 ルスカの寝息が聞こえた頃、アカツキはそっとルスカから離れて寝室を後にする。

 一階の台所でアカツキは、苺を取り出しヘタを取ると鍋に砂糖を苺の三分の一入れて煮詰めていく。
ルスカが喜ぶ顔を思い浮かべながら。
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