追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第三章 迫る因果編

十四話 幼女と青年、ラーズ公領で辟易する

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「何故、この馬車なのですか?」

 パク──エルヴィス国王が是非使ってくれと用意された馬車にどう対応すればいいのか困っていた。

 一言で言えば、絢爛豪華。白馬の二頭立てに、様々な装飾が施されている。

「確かに馬車を用意する様にお願いしましたが、これはちょっと……」

 急遽一緒に行く事になった弥生は自分で馬に乗れず、アイシャやナックに同乗すると流石に馬に負担がかかる。
そこで、馬車を用意して欲しいと頼んだ所、来たのがこの馬車だった。

「俺も普通の荷馬車が来るのかと思ったのだがな。何せ盗賊避けにお願いしのだけど」

 ナックの提案で荷馬車に弥生、ルスカ、それに御者としてナックが乗る予定だった。

 当初ナックの話では、空馬車で向かえば盗賊に遭遇しにくく、わざわざ空と分かって襲う盗賊は少ない。
荷物類は、アカツキのアイテムボックスに入れておけば気付かれずに済む。

 ところが、こんな豪華絢爛な馬車になると何処ぞの王族だと勘違いしてくるだろう。
狙ってくれと言っているようなものである。

「取り替えて頂けませんか?」

 馬車を運んで来た兵士にお願いし、豪華な馬車は戻って行く。

「えー、なんで替えるのよ。私、乗りたかったなー」
「ワタシもあんな馬車に乗れる所に嫁ぎたい……誰かお金持ちいませんか~?」
「ワシも乗りたかったのじゃ!」
「え? ルスカもですか!?」

 弥生とアイシャだけでなくルスカからアカツキはブーイングを浴びる。
ナックが改めて詳しく理由を説明してくれているが、中々納得してもらえず、ようやく折れてくれた頃には別の荷馬車が到着していた。


◇◇◇


 元々乗って来た馬にはアカツキとアイシャが、荷馬車の御者にはナックが行い、荷台には弥生とルスカが乗る。
早朝に起きたにも関わらず、鍛冶屋に寄ってから出発する頃には日は傾きかけていた。

「それじゃあ、行きましょう」

 荷馬車を挟む様にアカツキとアイシャを乗せた二頭の馬が並走する。

 グルメールの西門を抜け街道に出ると、少し速度を速める。

 街道を西にずっと進むと日が沈み、空は黒いカーテンに覆われてくる。
ランプの灯りを頼りに馬を進めると、以前ルスカが魔法で森を削り作った道にやってきた。

「この辺りで少し休憩しましょう」

 薪を集めて焚き火を起こすと、アカツキは牛乳を温め始めて、全員にパンを配る。

「え? このパンってもしかして……」
「ええ、私が作ったものですよ」
「随分と柔らかいな。失敗したのか?」
「あはは、ナック違うわよ。このパンは柔らかいのが成功なのよ」

 弥生は久しぶりに、ナックは初めて食べる柔らかいパンに驚くと共に舌鼓を打つ。

「イチゴジャムもありますから好きに塗ってください」
「えっ!? ジャムもアカツキくんが!?」

 頷くアカツキを見て弥生は感嘆する。

「はぁ……アカツキくん、モテないでしょ」
「うっ……悪かったですね」

 弥生のストレートな言葉に軽くショックを受けたアカツキは、弥生から反らした目を焚き火に向ける。

「大丈夫じゃ、アカツキにはワシがいるのじゃ!」
「ルスカちゃんがいるのもモテない理由だわ。料理も出来て家事も出来る。しかも手際がいい。そしてルスカちゃん。普通の女性がアピールするもの無くなるもの。そりゃ、独り身だわ。あはは」

 ルスカのフォローを笑い飛ばす弥生にアカツキは再び目をやり笑顔を見せる。

「弥生さん。そっくりそのままお言葉返しますね」
「ふぐっ!」

 ちょっとからかうつもりだったのだろうが、思わぬしっぺ返しに落ち込む弥生だった。


◇◇◇


 交代で火の番をしながら眠ると、翌朝小鳥のさえずりで目を覚ますと、再び出発する。

 ルスカの作った道を通り抜けて、街道へと戻るとワズ大公と初めて出会ったハービスという小さな街を素通りする。

 ハービスを抜けて北へと伸びる街道を行くと、一台の荷馬車とすれ違いそうになる。
荷馬車には引っ越しだろうか、家財道具なども載っており初老の男性が声をかけてきた。

「あんたら、どこに行く気かね?」
「所用でラーズ公領に向かうのですが、もしかしてそちらから?」

 初老の男性は隣に乗っている奥さんらしき女性に相談するかのようにひそひそ話を始める。

「悪いこと言わねぇから、止めときな。あそこはもうダメだ」
「ダメ? 何かあったのですか?」
「もうあの街はボロボロだぁ。オラ達もやっとこさ逃げて来たのさ」

 初老の男性の言葉が俄には信じられなかった。
ラーズ公領は、前ワズ大公領だ。あのワズ大公が悪政を敷くとは思えない。
ラーズ公領になっておよそ一ヶ月。
住民が逃げ出すほど、荒れ果てているとは思えなかった。

 だが、どこか確信する所もある。
それはグルメールに配置された、あの門兵。

 もし、あんな門兵みたいな兵士がいるのなら……と。

「ご忠告感謝します。ですが、私達はどうして用があるので」
「それなら、精々気を付けてなぁ」

 初老の男性は手綱をしごくと馬を進めた。アカツキ達は頭を下げて見送ると再び出発する。

「アカツキさん。ちょっと厄介事になりそうですね」
「はい……」
「アイシャが関わっている時点で既に厄介事なのじゃ」
「ひどっ!!」

 アイシャとルスカのやり取りに、ほんわかな空気が流れるが皆の心中は不安でしかたなかった。


◇◇◇


 北へと真っ直ぐ進むこと三日。空に赤みが差し込んで来る。
やがて街道の先に小さな街が見えて来る。

「アイルの街ですね。ここからラーズ公領になります」

 アカツキは馬を止め、アイルの街を遠巻きに見る。

「変ですね。夕飯時なのに煙が上がっていません」
「本当だな。ちょっとおかしいぞ、これは……アカツキ、どうする?」

 アカツキに言われてナックも異変に気づく。このまま街に入っていいものかと悩みどころだ。

「迂回しましょう。アイシャさん、街に入らず迂回する事は?」
「可能です。この森の先に川があるので、そこを渡りさえすれば。浅いので馬も荷馬車も行けるはずです」
「わかりました。行きましょう」

 迂回を選んだアカツキ達は、街道を逸れて森に入り北西へと進んでいく。

 やがて川が見え始めて、川辺で野宿をすると翌朝川を渡り、更に森に入る。

 半日かけて西に伸びる街道に出てきたアカツキ達は、その街道を西に進む。

「この先にラーズ公領最大の街、ファーマーに着くはずです」

 アイシャの言葉通りに日が沈み始めた頃、街道の先に明かりが見えた。

「夜、入るのは危険なのじゃ。治安が悪くなっとるかもしれんしの」

 アカツキ達は街道の脇に馬車と馬を止めて一夜を過ごす。

 早朝になり歩みを進めて小一時間、ファーマーの門が見えてきた。

 その造りは、グルメールに負けず劣らずで、かなり高い石造りの門。

「おい! 止まれ!」

 門は開いており、さりげなく入っていこうとするアカツキ達を門兵が止める。

「通行料を払え! それが決まりなのだ。一人銀貨一枚だ。五人いるから五枚だな」

 無茶苦茶である。一人約十万円相当の入場料。
ひとまずアカツキが全員分立て替えて街に入ろうとするが、門をくぐる時に門兵から出る時も必要だからと言われた。

「何なんですか! この街は!」

 更に借金が増えたアイシャが入場料の高さにご立腹で、絶対取り戻すと息巻いている。

 門をくぐり大通りに出るとアカツキ達は街の意外な姿に驚く。

 それは首都グルメールでも少ない、高さからして五階建て位の建物の工事が行われていた。
それも、一つではなくかなりの数が。
中には一際高い建物も。

「これはどういう事なの? 腐敗しているイメージだったのだけど」

 弥生もこの建設ラッシュに目をやり、街は発展して途中ですれ違った初老の男性の言葉が嘘だったのかと思えた。

 ただ、アカツキとルスカはこの街の違和感に気づく。

「店がほとんど開いてませんね」
「うむ。それに街の規模に比べて人が少なすぎるのじゃ」

 二人に言われて上ばかりを見ていた弥生達も、ようやく視線を通りに戻すと通りにいるのは、ほとんど兵士の格好をしているか、土木作業に従事て資材を運んでいる人くらいだ。

「アカツキさん! ラーズ公に会いましょう。事情を聞かないと」

 アイシャに促されてアカツキ達は、通りを突き進む。

 通りの突き当たりには街の入口より大きな門が。
ただ、新しいわけではなく何度も修繕され造りも古そうな門だった。
入り口の鉄柵からは大きな屋敷が見える。
恐らくラーズ公の住まいなのだろうと予測出来た。

「すいません、ラーズ公にお会いしたいのですが」

 アカツキが馬を降りて門兵に声をかける。

「ラーズ様に会いたいだぁ? 帰れ、帰れ! ラーズ様はお忙しいのだ!」
「だったらこれをお渡し願います。ワズ大公からです」

 アカツキはワズ大公から預かった手紙を門兵に渡す。

「ワズ大公? ここはラーズ様の領地だ。そんなもんは知らん!」

 門兵は、ワズ大公から預かった手紙の署名すら確認せずにビリビリに破いてしまう。

「てめぇ、何しやがる! ワズ大公はラーズ公の父親だぞ!」

 ナックが真っ先にカッとなり怒鳴ると門兵は笛を鳴らし、ぞろぞろと他の兵士も集まってくる。

「みんな、ここは一旦退きましょう」

 破かれた手紙を拾いアカツキは馬を翻す。ナックも渋々馬車を動かしアカツキについて行った。

「ルスカ、よく怒りませんでしたね」
「うーん、何かあの手の門兵に慣れたのじゃ」

 グルメールの城門、ファーマーの入り口、ラーズ公の邸宅の門と、同じような態度の兵士にルスカを始め全員、辟易していた。
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