追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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最終章

一話 ナック、領主としての務めを果たす

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 ドゥワフ国内で、改造魔王のアスモデスが暴れまわり壊滅寸前まで、追い込んでいた頃、グランツ王国の首都グランツリーにて、ルスカ達は焦っていた。
ドゥワフ国が終われば、次の標的は、グルメール王国のリンドウの街になる。
帝国の時みたいに間に合わないなんてことは、二度とやってたまるかと。

「まだなのか。まだ出来ぬのか!?」
「ちょっと待ってぇなぁ、ルスカ様。あと、少しやねん」

 スキル“精製”を使い、用意された小瓶に液体を詰めこむタツロウを、ルスカは必死に急かす。

「ええい、タツロウ! あとは、向かいながらやるのじゃ。出来るじゃろ?」
「出来へんことはないけど、集中も出来へんから時間がかかるで」
「構わぬのじゃ! アカツキ!」

 液体に入った小瓶をアイテムボックスへと入れたアカツキは、タツロウを蔦でぐるぐる巻きにして持ち上げると、ルスカを腕で抱えてグランツリーの城を出る。
既に馬車は用意されており、荷台には弥生とアイシャ、そして持って来たタツロウを乗せる。
御者は、アカツキと流星の二人。アカツキの膝の上にはルスカを乗せた。

 いつものメンバーではあるが、今回はカホはグランツリーに残る。
それは、万が一アスモデスが大回りしてグランツ王国へ向かわないとも限らないからだ。
カホならば、スキル“通紙”があり、素早く連絡が取れる為であった。

「よし、出発なのじゃ!」

 ルスカの掛け声で流星は手綱を動かして馬車を進ませたのだった。


◇◇◇


 ドゥワフ国から次はリンドウの街が狙われると予想したのは、アカツキだけではなかった。
リンドウの街周辺の領主となったナックも、此方に向かってくると予測した。

 砂漠を渡れないと予想したアカツキとは違い、長年傭兵として培ってきた直感に近いものであった。
傭兵には、護衛の仕事も多々あり、何時如何なる所から襲って来ても対応出来なくてはならない。
それは、逆に何処から狙えば効率が良いのかを、瞬時に判断しなくてはならないのだ。

 改造魔族に関しても、ナックが一番良く分かっているのもあった。
本来人の足では、リンドウとドゥワフ国を分ける山脈を渡るのは険しいが、唯一二度、改造魔族に相対しているナックには、容易なことだと判断出来た。

 裏で操る馬渕の存在にもアスモデスが山脈を越えてくると自信持って言える要因があった。
傭兵であったナックにとって、人を見るということにけている。
ナックから見た馬渕の印象は、残忍で無情、自分が楽しむためには手間を惜しまないが、非効率なやり方は好かないと判断していた。

 ならば、ドゥワフ国より最短で此方に向かってくるだろうと。

 グルメールには援軍の要請は既に送った。今リンドウにいる手勢は、馬渕捜索に必要なドラクマへと送る予定であった兵士二百人ほどと、元々滞在している兵士が五十人ほど。
本来はアカツキの為に用意された兵士達だが、ナックはアカツキならば自分の事より優先するだろうと勝手に判断して、グランツリーへ送らずにリンドウで滞在させていた。

 それでも人手が足りない。リンドウの住民の避難もある。指揮を執れる人間が居ない。
ナックがリンドウの住民に呼び掛けたところ、手を挙げてくれたのは、ゴッツォとマンの二人であった。

「困った時はお互い様だしな。それにドゥワフ国が攻められているんだろ?」

 ドワーフであるゴッツォにとって、ドゥワフ国は生まれ故郷でもあった。
国を出てセリーが産まれた為に、リンドウの街に住み着いたが、それでも生まれ故郷には違いない。
知人も沢山いるだろう。ゴッツォにとってとても許容出来ることではなかった。

「こないだ、ロックから手紙が届いたのだ。あいつは、変わった……。俺に出来る事があったら言ってくれ。ここで逃げ出せばロックに合わせる顔がない」

 マンは、まだ知らない。ロックとは二度と顔を合わせる事が出来なくなっていることを。それでもマンは名乗り出たであろう。チェスターも含め元勇者パーティーは、大きく心が入れ替わっていたのだ。

「すまねぇな、二人とも。リュミエール、お前はセリーを始め女子供を避難させろ。グルメールへはダメだ。離れ過ぎていると改造魔族の動きが察知しにくい。そうだな……街の外れの丘へ避難するんだ。あそこからならリンドウの街が一望出来るし、改造魔族の動きに合わせて逃げられる」
「わかりました」

 リュミエールは早速と邸宅を飛び出して街中へと向かう。

「ゴッツォの親父さんは、街の男どもを集めてくれ。その際に、戦闘には参加するわけではないから安心するようにと伝えてな」
「任せろ。ガッハッハ!」

 ゴッツォも邸宅を出て街中へと向かって行く。

「マンだっけか。お前は戦闘に参加してもらいたいがいけるか? 正直命の保証は出来ないが」
「大丈夫だ……覚悟は出来ている」

 ナックはマンを副将として任命すると、罠をしかける準備に取りかかった。

 ゴッツォが集めた男手と兵士全員で、ドゥワフ国のある山脈からリンドウの街にかけて穴を掘っていく。
それは、落とし穴。深くなくても良い、見破られやすくても良い、ただ数を作れとナックは命令する。

 明らかにバレバレの罠。誰も引っ掛からないだろう。しかし、ナックは一番改造魔族を見てきて思ったのは、理性がないということだった。
ただ、そこに居る者に対する破壊衝動。それが改造魔族の最優先事項なのだろうと踏んでいた。

 罠が出来上がりを見せるとゴッツォを含む男手は避難させ、ナックとマンは二手に別れリンドウの街の外側で兵士と共に待機する。

 日は落ち始めて赤く染まる空の下に広がる山脈からナックのいる場所にまで、咆哮が聞こえてくる。流石にまだ遠過ぎて姿は確認出来ないが、近づいてきているのが分かるとナックは伝令を出す。

「夜とか最悪だな……。いいか、罠のあるところに篝火かがりびを焚かせろ」
「それでは罠がバレないですか?」
「問題ない。きっと罠などお構い無しに進んでくるさ」

 罠が見破られるよりも、味方が罠にかからないようにするため、一部の兵士に罠付近に篝火を焚かせに行かせたのだった。

 日はすっかりと沈み、夜のとばりが降ろされる。雲の隙間から覗く月明かりに照らされて、闇夜に動く巨大な影がリンドウへと迫ろうとしていた。
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