追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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最終章

三話 青年、参戦する

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 倒れ動けなくなったナックの目の前で、リュミエール達の避難している丘に向かい魔法を放ったアスモデス。
なすすべ無く見守るしかなかったナックは、無念の涙を流す。

 飛んでいった魔法は、リュミエールやセリーのいる丘を飛び越えて何もない森を吹き飛ばす。

「すまねぇ……すまねぇ、アカツキ。そして……ありがとう……」

 涙を流したまま動かない体を震わすナックの目に映ったのは、アスモデスが上体を反らしている姿。
そのせいで魔法の軌道が大きくズレたのだった。
暗く篝火程度の明るさしかなかったが、アスモデスの首と腕から細長い物が伸びており、その先には人影が一つ。

「アカツキ……アカツキぃ~」

 ナックには、そのシルエットだけで誰かかすぐに理解できた。その姿と幾度となく、鍛練で戦っていたのは自分なのだから。

「ぐっ……! お、思っていたより、重いですね」

 両腕と首に巻かれた緑の蔦。アカツキは自分の背中から伸びた蔦を引っ張りアスモデスを倒そうとする。
三本の蔦を使用し、残り一本を地面に突き刺して耐える。

「くっ……だ、誰か! アカツキに手を貸してやれ!」

 振り絞った声でナックが呼び掛けると、マンを先頭に残った兵士が全員アカツキの元に集まると、それぞれが三本の蔦を掴み一斉に引く。

「せーの!」

 アカツキの号令で、タイミングを合わせて力一杯引くと、アスモデスが一歩後退する。
アスモデスは、先ほど落ちたばかりの落とし穴に足を踏み外しその巨体を背中から地面に打ち付けた。

「ふぅー、やっと追い付いたわ。ナックやったっけか、ほら、これ飲み」

 ナックの側に現れた馬車からタツロウとアイシャが降りてくると、動けないナックの前に液体の入った一本の小瓶を差し出す。
道中、タツロウが作っていたモノだ。
アイシャは、そのままアカツキのフォローに回る。

「な、なんだこれは……?」
「回復薬や。よう効くで、ほら飲ましたるさかい」

 そう言うとタツロウは小瓶の蓋を開けると、ナックの口元へと持っていく。
一瞬怪訝な表情を見せたナックだが、今は一刻を争う。躊躇う暇はなかった。

「ルスカサマの知識にある回復薬なんやけどな。本来手間と材料がかかるところ、材料はタシロが出せるし、手間はワイのスキル“精製”で短縮出来る。
タシロの呪いを解く薬の練習として作ったもんやけど、時間はかかるけど、ほんまよう効くから安心しい」

 タツロウは、ナックに肩を貸して馬車に積み込むとアスモデスから距離を取る。

「おい……ルスカ様は、来てないのか……」
「安心しい。来とるよ、今はへ向かってるはずや」


◇◇◇


 今からおよそ一時間前──ザンバラ砂漠を渡りきりグルメール王国の領内へと入ったアカツキ達は、その直前まで話し合っていた作戦の確認をすると、アカツキは蔦でルスカを上空まで持ち上げる。

 森よりずっと高くから、夜目を利かして辺りを見渡す。

「あそこがいいのじゃ。アカツキ! 降ろして欲しいのじゃ‼️」

 ルスカの声が聞こえるとアカツキは蔦を手繰り寄せてルスカをキャッチする。

「アカツキ、あっちの方向に見晴らしのいい丘があるのじゃ! 作戦通り、アスモデスをその丘まで誘導して欲しいのじゃ、あとはワシがケリをつける!」
「わかりました。それでは私は先に。タツロウさんは、アイシャさんと一緒に馬車をお願いします」
「おう! 任しとき」

 アカツキはタツロウに一礼すると、蔦を伸ばしては木や岩にくくりつけて、木々の間を飛ぶように進んでいく。
「まるで、猿やな」とタツロウは、馬車で通れる道を模索しながら進んでいった。

 残されたルスカ、弥生、流星は、見晴らしのいい丘を目指す為に虎型の魔物に“擬態”した流星の背中に乗る。

「飛ばすぞ、振り落とされるなよ」

 流星は、その四肢をまるでバネのように地面を跳ねながら進むのであった。


◇◇◇


「アイシャさん、いきますよ!」
「はい!」

 すぐに立ち上がったアスモデスが、その視界にアカツキを捉えると、敵と見なしたのか、踏み潰すべく脚を大きく上げてきた。

 アイシャを蔦で掴むとアスモデスの鼻先を狙い放り投げる。ロケットのようにアスモデスの目の前に飛んでいくアイシャは、ポケットから手袋を取り出すと、アスモデスの視界に入るなり手袋をはめた。

 改造魔族は魔法を反射させるために、魔法が効くのは二通りしか方法は無かった。一つは、ルスカのように高威力で力ずく。そして、もう一つは、アイシャの持つ幻影魔法。
特に視覚で嵌めるアイシャの幻影魔法は、ほぼ相手を倒すことしか考えない改造魔族に有効だと考えられた。
しかも、アイシャの武器は徒手空拳という物理攻撃。
倒すまでには至らないかもしれないが、それでも有効打ではある。

「いきますよー! “セルフウェイト!”」

 アスモデスの鼻先を掠めるように通り抜けていくアイシャは、自分自身の体を重くする。

「ハァァァァーーッ‼️」

 アスモデスの真上から脳天を目指して急降下で降りていくアイシャは、ドンピシャのタイミングで脳天に拳を叩きつけると、その衝撃は、アスモデス本体の重さも相まってアスモデスの足下の地面を凹ませる。

「ぐうっ……!」と、歯を食い縛り顔を歪ませるアイシャの耳にビキッと何かが割れる音が聞こえた気がした。

 “セルフウェイト”は、体を重くするだけで、頑丈になるわけではない。生身の拳を普段の何倍もの加速度に乗せて叩きつけたのだ、決して無事で済むはずはない。

 前のめりに倒れていくアスモデスの下に入り込んだアカツキは、四本の蔦全てを使い、一本は首に、一本は倒れそうになり受け身を取ろうとする右腕に、残り二本の蔦でアスモデスの胴体を支えると、そのまま一気に胴体を跳ね上げた。
アスモデスは、重心を崩されて前のめりになる勢いのまま、空を舞うと背中から地面へと叩きつけられる。

 いわゆる、一本背負いである。

 アカツキは落ちてくるアイシャを蔦で受け止めると、アイテムボックスから小瓶を取り出し渡すと、アスモデスの方へと走り去っていく。

「グゥゥ……グワァアアアッ‼️」

 魔法の咆哮ではなく、地面へと寝転がるアスモデスは、ただ叫ぶ。それは、雄叫びなどでもなく、まるで悔しくて吠えたみたいであった。
巨体な自分が、空を舞い投げられるなど屈辱だと思ったのかもしれない。
アスモデスの横を通り抜けていくアカツキを見て、目付きが鋭くなり睨むような表情に変わった。

 アスモデスは両手を地面について上体を起こすなり、咆哮すると黄色の光が輝く。狙いは完全にアカツキ一人。ところが、上体を起こしたアスモデスの両手が、突然払われてしまい、態勢を崩して再び倒れていく。

「ハァァァァ……ハッ‼️」

 後ろに倒れていくアスモデスの頸椎けいついに、衝撃が襲う。今度は倒れてくるアスモデスの体重を利用するように、アイシャの拳が突き上げたのだ。
再び嫌な音がする。先ほどに比べて大きな嫌な音が。
倒れていくアスモデスの頭の下敷きになりそうなアイシャを、アカツキが蔦で救い出す。

 首が折れたアスモデスの顔が、アカツキ達のいる方向に向いている。絶好の魔法の的。ところが、アスモデスは目を丸くしており魔法を使うことを忘れているようであった。
先ほど、自分の前に向かっていたアカツキが、いつの間にか自分の背後の位置にいたのだ。驚くのも無理はなかった。

 既にアスモデスは、アイシャの幻影魔法に囚われていた。アカツキはずっとアスモデスの背後におり、アスモデスの両手を払ったのもアカツキの仕業であった。
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