追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

文字の大きさ
205 / 249
第三章 ローレライの負の遺産編

三話 弥生、王妃候補と対立する

しおりを挟む
 ワズ大公とナックに、つい先ほどここであった騒ぎの理由を伝えると、ワズ大公は大きなため息を吐いた。

「何をしているのだ、あやつの娘は! 全く教育が行き届いておらぬではないか! 大体、国王自らが自室に招く客など国賓と同じ扱いなのだぞ。全く……」

 憤るワズ大公をパクと弥生が宥めるが、カホは先程のマヤの態度に今一つ納得しておらず、ワズ大公にマヤが何者なのかを尋ねてみた。

「あの娘はな、ワシの妹……つまり前国王の妹の孫娘にあたる血筋での。ワシが兄を立て、妹が城を出ることで権力争いに巻き込まないようにしていたのだが、流石に前国王の件もあり、貴族から王妃として迎える訳にはいかず、王族として返り咲きさせようと思っていたのだが、ああも傲慢というか、不遜というか」

 城を出ることで一般人になったものの、それなりの地位にはいたが、王族の血筋というプライドみたいなものは代々受け継がれてきたのだろうと、頭を抱えたワズ大公は付け加えた。

「失敗だったかのぉ……」

 腫れ上がった顔でワズ大公は、大きく項垂れてしまった。やはり、血を分けた妹、その孫娘なのだから、今の今まで気にはしていたのだろう。
カホも、強くワズ大公へ非難を出来なくなってしまった。

 マヤをこのままにしておけば、後々セリーに対して下手をすれば命の危険すらも感じていた弥生は、一度マヤと話をしたいと言い出した。
口がそれほど上手くない自分が、果たしてどこまでやれるのかと不安を抱えながらも、アカツキやルスカがいたらそうするだろうと考えたからである。

 ワズ大公やエルヴィス国王の許可を得てアイシャに案内されてマヤの元へ。
後ろからはカホはもちろんだが、ワズ大公も心配でついていく。
ワズ大公は、主に説得の成否ではなく、フウカに危害がないか、そして、あとからルスカの怒りを買わないかが心配で。

 アイシャの案内された部屋には、猿ぐつわをされて、ロープです巻きにされた哀れなマヤの姿が。
アイシャを見るなり睨み付ける気の強さだ。

 猿ぐつわを外す前に椅子に座らせ、ロープで固定する。そのあと猿ぐつわを外すや否や、堰を切ったように喋り出す。

「いきなり何するのよ、無礼な! 大体わたくしを誰か知っての狼藉? こんなことをすれば、グルメール王国全土があなた達の敵に回りますわよ!」

 弥生がワズ大公へ対して「そうなの?」と目で訴えるが、エルヴィス国王とワズ大公は、あり得ないと首を横に振る。
ルスカに対して敵対など、絶対無事では済まないし、今やアカツキもほぼ同等の扱いだ。
むしろワズ大公なら、フウカの為にと国すら裏切りかねない。

「この国のトップ二人は、否定しているけど?」
「お、お祖母さまが、お祖母さまが許さないわ!」

 元王族とはいえ、今や一般市民であるワズ大公の妹にそれほどの権力など皆無である。マヤは、それすらもわからないほど、プライドだけは高く、知識は疎いのだと弥生、そして他の者も理解した。

「あなた、ルスカ・シャウザードか、アカツキ・タシロって名前を知ってる?」
「は? それが一体……」
「いいから、答えて!!」
「ルスカ・シャウザードは知っているわ。大公が書いた絵本に出てくる英雄でしょ?」

 グルメールの騒乱、ラーズの反乱、リンドウの街の攻防と最近立て続けに起こった出来事の全てに関わっていたアカツキとルスカ。
表立って公表はしていないが、それでも多くの人が知っている二人。
ワズ大公は、呆れるを通り越して嘆かわしくなってきた。

「マヤよ。お主には、ちゃんと話をしたはずだ。ここ最近の出来事を。ここにいる者達は、グルメール王国の危機を何度となく救ってくれた者達だ。それをお主は……」

 しかし、マヤにはワズ大公の想いは届いておらず、睨み付けることで精一杯の抵抗を示す。

「マヤさん。貴女、王妃候補を辞退しなさい。ワズ大公……私は、新たに王妃候補としてセリーちゃんを推すわ。アカツキくんもルスカちゃんも、きっとそう言うと思う。二人が戻ってきた時、状況次第だけど、反対する可能性が高いわ」

「何を勝手に!」と、弥生を怒鳴るマヤだが正論ではある。弥生にそんな権限は無い。
だからといって弥生にも引けない理由があった。

 グルメールの騒乱時にアチコチにばら蒔かれた麻薬。そして現在も後遺症で苦しむ者達は、あとを絶たない。
城内の施設は、今も満杯の状態である。

「わたしはアカツキくんがいたから、心の支えになってもらえた。だけど、わたしと違い今も施設に残っている人たちは、心の支えがなく苦しんでいる。わたしは新しい王妃様に、その者達の支えになってもらいたい。あなたにそれが出来るの?」
「で、出来ますわ! それくらい!」

 甚だ疑問だが、マヤにも意地があるのだろう。弥生の挑発に乗ってしまった。

「そう……それじゃ、あなた、そしてセリーちゃんの二人に施設で働いてもらおっかな」
「実戦……というわけですね。わかりました、国王の名において命じます。マヤ、セリーの二人は、本日から一週間、更正施設での勤務をしてください。いいですね?」

 まさか自分の名前が出るとは思わず、セリーは「はい!」と普段通り元気よく返事をしてしまう。
マヤもセリーのやる気に苦々しく思うも、一度言った言葉は取り消すことが出来ず「はい……わかりましたわ」と、元気なく返答した。

 エルヴィス国王の命令で、マヤの縄を解かれ二人は城内にある更正施設へと向かう。

(一週間って……私たち、もう首都離れる予定なんだけど……)

 見届けたい気持ちはあるものの、弥生達も先を急ぐ旅の途中。
一週間も足止めされる訳にはいかない。
果たして自分の意図がエルヴィス国王に伝わっているのか確かめなければならなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。 森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。 一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。 これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。

処理中です...