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第三章 ローレライの負の遺産編
三話 弥生、王妃候補と対立する
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ワズ大公とナックに、つい先ほどここであった騒ぎの理由を伝えると、ワズ大公は大きなため息を吐いた。
「何をしているのだ、あやつの娘は! 全く教育が行き届いておらぬではないか! 大体、国王自らが自室に招く客など国賓と同じ扱いなのだぞ。全く……」
憤るワズ大公をパクと弥生が宥めるが、カホは先程のマヤの態度に今一つ納得しておらず、ワズ大公にマヤが何者なのかを尋ねてみた。
「あの娘はな、ワシの妹……つまり前国王の妹の孫娘にあたる血筋での。ワシが兄を立て、妹が城を出ることで権力争いに巻き込まないようにしていたのだが、流石に前国王の件もあり、貴族から王妃として迎える訳にはいかず、王族として返り咲きさせようと思っていたのだが、ああも傲慢というか、不遜というか」
城を出ることで一般人になったものの、それなりの地位にはいたが、王族の血筋というプライドみたいなものは代々受け継がれてきたのだろうと、頭を抱えたワズ大公は付け加えた。
「失敗だったかのぉ……」
腫れ上がった顔でワズ大公は、大きく項垂れてしまった。やはり、血を分けた妹、その孫娘なのだから、今の今まで気にはしていたのだろう。
カホも、強くワズ大公へ非難を出来なくなってしまった。
マヤをこのままにしておけば、後々セリーに対して下手をすれば命の危険すらも感じていた弥生は、一度マヤと話をしたいと言い出した。
口がそれほど上手くない自分が、果たしてどこまでやれるのかと不安を抱えながらも、アカツキやルスカがいたらそうするだろうと考えたからである。
ワズ大公やエルヴィス国王の許可を得てアイシャに案内されてマヤの元へ。
後ろからはカホはもちろんだが、ワズ大公も心配でついていく。
ワズ大公は、主に説得の成否ではなく、フウカに危害がないか、そして、あとからルスカの怒りを買わないかが心配で。
アイシャの案内された部屋には、猿ぐつわをされて、ロープです巻きにされた哀れなマヤの姿が。
アイシャを見るなり睨み付ける気の強さだ。
猿ぐつわを外す前に椅子に座らせ、ロープで固定する。そのあと猿ぐつわを外すや否や、堰を切ったように喋り出す。
「いきなり何するのよ、無礼な! 大体わたくしを誰か知っての狼藉? こんなことをすれば、グルメール王国全土があなた達の敵に回りますわよ!」
弥生がワズ大公へ対して「そうなの?」と目で訴えるが、エルヴィス国王とワズ大公は、あり得ないと首を横に振る。
ルスカに対して敵対など、絶対無事では済まないし、今やアカツキもほぼ同等の扱いだ。
むしろワズ大公なら、フウカの為にと国すら裏切りかねない。
「この国のトップ二人は、否定しているけど?」
「お、お祖母さまが、お祖母さまが許さないわ!」
元王族とはいえ、今や一般市民であるワズ大公の妹にそれほどの権力など皆無である。マヤは、それすらもわからないほど、プライドだけは高く、知識は疎いのだと弥生、そして他の者も理解した。
「あなた、ルスカ・シャウザードか、アカツキ・タシロって名前を知ってる?」
「は? それが一体……」
「いいから、答えて!!」
「ルスカ・シャウザードは知っているわ。大公が書いた絵本に出てくる英雄でしょ?」
グルメールの騒乱、ラーズの反乱、リンドウの街の攻防と最近立て続けに起こった出来事の全てに関わっていたアカツキとルスカ。
表立って公表はしていないが、それでも多くの人が知っている二人。
ワズ大公は、呆れるを通り越して嘆かわしくなってきた。
「マヤよ。お主には、ちゃんと話をしたはずだ。ここ最近の出来事を。ここにいる者達は、グルメール王国の危機を何度となく救ってくれた者達だ。それをお主は……」
しかし、マヤにはワズ大公の想いは届いておらず、睨み付けることで精一杯の抵抗を示す。
「マヤさん。貴女、王妃候補を辞退しなさい。ワズ大公……私は、新たに王妃候補としてセリーちゃんを推すわ。アカツキくんもルスカちゃんも、きっとそう言うと思う。二人が戻ってきた時、状況次第だけど、反対する可能性が高いわ」
「何を勝手に!」と、弥生を怒鳴るマヤだが正論ではある。弥生にそんな権限は無い。
だからといって弥生にも引けない理由があった。
グルメールの騒乱時にアチコチにばら蒔かれた麻薬。そして現在も後遺症で苦しむ者達は、あとを絶たない。
城内の施設は、今も満杯の状態である。
「わたしはアカツキくんがいたから、心の支えになってもらえた。だけど、わたしと違い今も施設に残っている人たちは、心の支えがなく苦しんでいる。わたしは新しい王妃様に、その者達の支えになってもらいたい。あなたにそれが出来るの?」
「で、出来ますわ! それくらい!」
甚だ疑問だが、マヤにも意地があるのだろう。弥生の挑発に乗ってしまった。
「そう……それじゃ、あなた、そしてセリーちゃんの二人に施設で働いてもらおっかな」
「実戦……というわけですね。わかりました、国王の名において命じます。マヤ、セリーの二人は、本日から一週間、更正施設での勤務をしてください。いいですね?」
まさか自分の名前が出るとは思わず、セリーは「はい!」と普段通り元気よく返事をしてしまう。
マヤもセリーのやる気に苦々しく思うも、一度言った言葉は取り消すことが出来ず「はい……わかりましたわ」と、元気なく返答した。
エルヴィス国王の命令で、マヤの縄を解かれ二人は城内にある更正施設へと向かう。
(一週間って……私たち、もう首都離れる予定なんだけど……)
見届けたい気持ちはあるものの、弥生達も先を急ぐ旅の途中。
一週間も足止めされる訳にはいかない。
果たして自分の意図がエルヴィス国王に伝わっているのか確かめなければならなかった。
「何をしているのだ、あやつの娘は! 全く教育が行き届いておらぬではないか! 大体、国王自らが自室に招く客など国賓と同じ扱いなのだぞ。全く……」
憤るワズ大公をパクと弥生が宥めるが、カホは先程のマヤの態度に今一つ納得しておらず、ワズ大公にマヤが何者なのかを尋ねてみた。
「あの娘はな、ワシの妹……つまり前国王の妹の孫娘にあたる血筋での。ワシが兄を立て、妹が城を出ることで権力争いに巻き込まないようにしていたのだが、流石に前国王の件もあり、貴族から王妃として迎える訳にはいかず、王族として返り咲きさせようと思っていたのだが、ああも傲慢というか、不遜というか」
城を出ることで一般人になったものの、それなりの地位にはいたが、王族の血筋というプライドみたいなものは代々受け継がれてきたのだろうと、頭を抱えたワズ大公は付け加えた。
「失敗だったかのぉ……」
腫れ上がった顔でワズ大公は、大きく項垂れてしまった。やはり、血を分けた妹、その孫娘なのだから、今の今まで気にはしていたのだろう。
カホも、強くワズ大公へ非難を出来なくなってしまった。
マヤをこのままにしておけば、後々セリーに対して下手をすれば命の危険すらも感じていた弥生は、一度マヤと話をしたいと言い出した。
口がそれほど上手くない自分が、果たしてどこまでやれるのかと不安を抱えながらも、アカツキやルスカがいたらそうするだろうと考えたからである。
ワズ大公やエルヴィス国王の許可を得てアイシャに案内されてマヤの元へ。
後ろからはカホはもちろんだが、ワズ大公も心配でついていく。
ワズ大公は、主に説得の成否ではなく、フウカに危害がないか、そして、あとからルスカの怒りを買わないかが心配で。
アイシャの案内された部屋には、猿ぐつわをされて、ロープです巻きにされた哀れなマヤの姿が。
アイシャを見るなり睨み付ける気の強さだ。
猿ぐつわを外す前に椅子に座らせ、ロープで固定する。そのあと猿ぐつわを外すや否や、堰を切ったように喋り出す。
「いきなり何するのよ、無礼な! 大体わたくしを誰か知っての狼藉? こんなことをすれば、グルメール王国全土があなた達の敵に回りますわよ!」
弥生がワズ大公へ対して「そうなの?」と目で訴えるが、エルヴィス国王とワズ大公は、あり得ないと首を横に振る。
ルスカに対して敵対など、絶対無事では済まないし、今やアカツキもほぼ同等の扱いだ。
むしろワズ大公なら、フウカの為にと国すら裏切りかねない。
「この国のトップ二人は、否定しているけど?」
「お、お祖母さまが、お祖母さまが許さないわ!」
元王族とはいえ、今や一般市民であるワズ大公の妹にそれほどの権力など皆無である。マヤは、それすらもわからないほど、プライドだけは高く、知識は疎いのだと弥生、そして他の者も理解した。
「あなた、ルスカ・シャウザードか、アカツキ・タシロって名前を知ってる?」
「は? それが一体……」
「いいから、答えて!!」
「ルスカ・シャウザードは知っているわ。大公が書いた絵本に出てくる英雄でしょ?」
グルメールの騒乱、ラーズの反乱、リンドウの街の攻防と最近立て続けに起こった出来事の全てに関わっていたアカツキとルスカ。
表立って公表はしていないが、それでも多くの人が知っている二人。
ワズ大公は、呆れるを通り越して嘆かわしくなってきた。
「マヤよ。お主には、ちゃんと話をしたはずだ。ここ最近の出来事を。ここにいる者達は、グルメール王国の危機を何度となく救ってくれた者達だ。それをお主は……」
しかし、マヤにはワズ大公の想いは届いておらず、睨み付けることで精一杯の抵抗を示す。
「マヤさん。貴女、王妃候補を辞退しなさい。ワズ大公……私は、新たに王妃候補としてセリーちゃんを推すわ。アカツキくんもルスカちゃんも、きっとそう言うと思う。二人が戻ってきた時、状況次第だけど、反対する可能性が高いわ」
「何を勝手に!」と、弥生を怒鳴るマヤだが正論ではある。弥生にそんな権限は無い。
だからといって弥生にも引けない理由があった。
グルメールの騒乱時にアチコチにばら蒔かれた麻薬。そして現在も後遺症で苦しむ者達は、あとを絶たない。
城内の施設は、今も満杯の状態である。
「わたしはアカツキくんがいたから、心の支えになってもらえた。だけど、わたしと違い今も施設に残っている人たちは、心の支えがなく苦しんでいる。わたしは新しい王妃様に、その者達の支えになってもらいたい。あなたにそれが出来るの?」
「で、出来ますわ! それくらい!」
甚だ疑問だが、マヤにも意地があるのだろう。弥生の挑発に乗ってしまった。
「そう……それじゃ、あなた、そしてセリーちゃんの二人に施設で働いてもらおっかな」
「実戦……というわけですね。わかりました、国王の名において命じます。マヤ、セリーの二人は、本日から一週間、更正施設での勤務をしてください。いいですね?」
まさか自分の名前が出るとは思わず、セリーは「はい!」と普段通り元気よく返事をしてしまう。
マヤもセリーのやる気に苦々しく思うも、一度言った言葉は取り消すことが出来ず「はい……わかりましたわ」と、元気なく返答した。
エルヴィス国王の命令で、マヤの縄を解かれ二人は城内にある更正施設へと向かう。
(一週間って……私たち、もう首都離れる予定なんだけど……)
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