追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

文字の大きさ
213 / 249
第三章 ローレライの負の遺産編

十一話 弥生達、山エルフと出会う

しおりを挟む
 麓から険しい山道が続く。赤子を連れては苦労するのが目に見えていた。
預けてきて正解だと弥生は、足を進める。
それでも案内人のダットを先頭に進む一行の進む速度は、落ちていく。

「はぁはぁ……まだかよ、山エルフの住み処は……」
「はぁ……ナック、もうへばったの? 貴族になって不摂生ばかりしてるんじゃないの?」
「やよちゃん、これいいダイエットになるね」
「わたし、太ってないわよ!」
「私、ちょっと先を見てきます」

 さすが獣人というか体力には人一倍自信のあるアイシャは、軽快に先を登って行く。

「もう少しで、平坦な場所があります。ここで、一度休みましょう!」

 姿が米粒大になったアイシャの声に一行は、少し奮起するのであった。


◇◇◇


「ダットさん、山エルフの住み処ってまだ遠いの?」
「ハッキリとわかっている訳ではないが、そこの山道を過ぎたところだと言われている。ハイネルもあれから色々と調べてくれたのだ。この道順が最も山エルフに遭遇しやすいとな」
「そう……それなら少し警戒して進んだ方がいいかもね。……って何よ、ナック。変な顔をして」

 ニヤニヤとしながらナックは横目で、ずっと弥生を見てくる。思わず弥生は、腕で自分の胸を隠すように身構える。

「いや、ヤヨイー。似てきたなって思ってな、アイツに」
「うんうん。やっぱり夫婦って似るんだねぇ、やよちゃん」

 カホも賛同して首を何度も縦に振る。アカツキに似てきたと言われて弥生も満更ではない様子であった。

「私はいつ結婚出来るんだろ……」
「アイシャさんにはお世話になりっぱなしだし、この一件が終わったらアカツキくんにも相談してみるわ」

 それは、この一件が終わらない限り無理だと言われているようで、喜んでいいのか悲しんでいいのか、アイシャは複雑そうな表情をするのであった。


◇◇◇


 休憩を終えた一行は、ダットが示した山道を再び歩き始めた。段々と、登っていく度に肌寒くなっていく。
ナックとアイシャの二人はダットより一歩前を歩き始めた。

「見られてんな」
「見られてますね」

 二人は、先ほどから視線や物音らしきものが聞こえ警戒レベルを最大限に上げていた。
左手側は崖、右手側には木々が広がり襲うには絶好の場所である。


「ヤヨイー!!」
「はい! “障壁”!!」

 ナックの合図で間を取ることもなく周囲に光の壁を張る弥生。障壁には確かに何かぶつかる手応えを感じていたが、その正体が見えない。

「何!? 何が来てるの!?」

 正体不明の攻撃にカホは狼狽えるが弥生の方はいたって冷静であった。
本来、物理的な攻撃しか防げなかったスキル“障壁”。
しかし、ルスカとの修行を経てからは魔法も防げる事が可能になっていた。
相手がルスカということもあり、そんじょそこらの魔法の攻撃を防ぐ弥生にとっては、お手の物である。

 姿形は不明であるが、幾度となく風切り音がすることから、風の魔法による攻撃だと弥生にも理解出来てきた。
それにいち早く気づいたナックも流石としか言いようがない。

 そして、もう一人。

 弥生が障壁を気づいた瞬間、アイシャは弥生の陰に隠れた。身軽なアイシャは、直後、背後の崖から迂回して攻撃してきた場所へ回り込む。
英雄バーン・カッシュの曾孫としてアイシャは、その名に恥じない動きを見せた。

 木々の間を音をなるべく立てないように走り抜け、一気に襲いかかる。相手は虚をつかれ、その美形な顔立ちを歪ませる。
そして、ナックも動く。敵の視線がアイシャへ集中した瞬間を逃すことなく、一気に駆けていく。

 敵を視認したナック達。どれもが美形と呼べる男女で耳が特徴的に長い。

 ナックは、美形な男性を見て思う──苛立つ、その顔を変えてやる、と。
 アイシャは、美形な女性を見て思う──自分もそんな美形ならとっくに玉の輿に乗れたのに、と。

「お、お前ら、一体何者なのだ!?」

 戦場から少し離れた木の陰から現れた、深い皺が却って渋みを出す老齢な白髪の男性が叫ぶ。
しかし、アイシャもナックもそれを無視して、殺さないように手加減しながら鎮圧していく。
私情を挟みながら……。

「ナック、アイシャさん、終わった?」

 二人は弥生の声に応え、サムズアップする。

「それじゃ、お爺さん、この落とし前どうするの?」
「お、落とし前って一方的ではないか!? お前ら本当に何者だ」
「一方的に攻撃してきておいて、それはないんじゃないの?」

 弥生に正論をつかれ、白髪の老人は言葉を飲み込む。
それどころか、弥生の迫力にすら臆して一歩後退りを見せた。

「あなた達、山エルフですよね。少しお話したいのだけれども……住み処に案内してもらえないかしら?」
「こんなに多くの怪我人出しておいてぬけぬけと!!」
「こちらには特別な回復薬があるんだけど?」
「すぐにご案内します!!」

 九十度に腰を曲げ先ほどと態度を一変させた白髪の老人は、怪我の軽傷な者に倒れている山エルフを運ばせて、弥生達一行を案内しに先導するのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。 森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。 一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。 これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。

処理中です...