追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第三章 ローレライの負の遺産編

十四話 原田、登場!

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 ルスカとタツロウ、そして侍女のキャシーは、タツロウの用意した馬車で一路レイン自治領に向かう準備を整えていた。
最優先事項は、ルスカの世話の準備だ。

 ルスカの希望通り甘いお菓子は勿論のこと、着替えの服もルスカ好み、そしてキャシーには充分に世話役として昼寝の添い寝や嫌いな野菜などを教えこむ。
馬車は当然白馬二頭立て。昼寝の邪魔にならないように屋根付き豪華なカーゴも。

 満足気に腰に手を当てて笑顔のルスカをイミル女王もどこか誇らしい。
それも、その筈。以前魔王アドメラルク討伐として出立したロック率いる勇者一行が、ルスカに対してザンバラ砂漠のど真ん中で捨てるという暴挙のリベンジでもあったからだ。

「よし、出発するのじゃ!」

 タツロウが御者として前に乗り込み、キャシーに手を引かれてルスカは後ろのカーゴの中へと入っていった。

 パーティーとしては正直、戦力は皆無である。転移者であるタツロウのスキルは、もの作りに特化しており、キャシーは只の侍女に過ぎない。
何より、本来最強であるルスカも、今は殆んど魔法が使えない状態なほど体調が悪い。
その事実は、アカツキ以外知るものはいない……。

 一見、金持ちが乗るような馬車などに乗れば盗賊紛いのものが襲ってきてもおかしくはない。むしろ、鴨ネギである。
だが、今から通るグランツ王国内では、人手不足というのもあり、盗賊など危険を冒す者など、ゼロに近かった。
つまり、それでも狙う者がいるとしたら、金目的ではないということである……。

 アカツキを見たいという好奇心だけで同行するキャシーにとっては、ある意味危険な旅となるとは本人も気づいていない。

 馬車はイミル女王を始め、多くの人間に見送られ整備された石畳の道を進むのであった。


◇◇◇


 首都グランツリーを出て、何処までも広がる平原を舗装された道を通っていくルスカを乗せた馬車。
周囲に木々はなく、燦々と日の光に照らされて草花が輝く。

「タツロウ、良いな? 木々など身を潜める所は要注意じゃ。偶然やも知れんがアルステル領も森エルフも魔石のあると思われる場所が狙われておる。今のワシの手元にはないが、直接ワシを狙うかもしれん」
「えっ、ルスカ様狙われてるだか?」

 タツロウよりもキャシーが驚く。揺れる馬車の中でも一滴も溢すことなく、お茶の準備をしているキャシーは流石だが、好奇心だけでついてきたことに早くも後悔し始めていた。

「転移の……これは魔法での話じゃが、どこでも好き勝手行ける訳ではないのじゃ。必ず目的地に一度印を付けておかねばならぬ」
「へー、そうなんや。なるほどな。それで、こんな一見目立つ道を選んだんやな。隠れる木々もなく、たとえ地面に印していても、こちらからは出てくるところが丸見えっちゅうわけやな。しかし、スキルなんかもしれんのやろ?」

 タツロウの理解が早くて助かるも、魔法とスキルの違いという疑問を投げ掛けられたがルスカは、首を横に振る。

「恐らくスキルでも理論的には同じのはずじゃ。今いる場所から、目的地まで転移するということは、距離をゼロにするということじゃ。つまりは時間を飛ばすということ。転移の魔法は、移動するというかは時間を限りなくゼロにすると言った方が近いのじゃ。だから、しっかり自分の今いる位置と目的地の位置を把握しておかねばならぬ。まぁ、タツロウやアカツキをこの世界に転移させた魔法も理論的には同じじゃ……かなり大雑把じゃがの」

 キャシーが淹れてくれたお茶をすすりながらルスカは少し馬車の中から外の景色を眺める。
大元を辿れば、アカツキ達を転移させた魔法は、昔ルスカが帝国時代だったレインの皇帝に教えたもの。
自分で言っていても、ルスカの表情が曇るのも無理はなかった。

「あのぉ……でもレイン自治領に行くには森を開拓した道を進むだ。大丈夫なんだか?」
「シャウザードの森じゃろ? 確かに道の両横は森じゃが、彼処にはワシの魔法がかけられておる。森の中に出たら、たちまち迷子じゃ。却って安心して良いのじゃ」

 正式な手順を踏まないと森をさ迷う事となるシャウザードの森。迷わず進めるのはルスカかヨミーくらいなものの為に、他の場所より安全と言っても良かった。
森を抜ければレイン自治領まで、すぐそこである。
つまりは、この道程で奇襲される可能性は少なく、キャシーも胸を撫で下ろす。
しかし、ルスカはキョロキョロと外の景色を見て落ち着かない様子であった。

「何かあるだか?」
「いや、気のせいのようなのじゃ……」

 安心させるためキャシーにはそう言ったものの、ルスカは先ほどから誰かの視線を感じていたのであった。


◇◇◇


「ぐふふっ……なるほど、このチビが、あの馬渕を……か」

 まるで宮殿の一室のような大きな広間の中央にドンッと置かれた大きなテーブル。
その上には、肉や魚、果物など様々な料理が成人男性が十人ほどでやっと食べきれる量が載せられていた。
しかし、この料理に手をつける人物は、たった一人。
十人以上は椅子を置けるほどのテーブルにも椅子はその人物のだけ。

 下卑げひた笑みを浮かべ、ぽっちゃりを通り過ぎ不摂生の塊のような太く肥えた体と人間の醜いものを集めて一つにしたような男がそこにはいた。
骨付き肉を噛ると、クチャクチャと音を立てながら誰かに遠慮などすることなどない態度と、厚顔無恥を絵に描いたよう。

 この男こそ、馬渕と手を組んだ唯一の転移者、現在の原田勇蔵であった。
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