追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第四章 レイン自治領の危機と聖霊王

十六話 新型パペット、ロールアウト

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 特にすることのないアカツキであったが、現場には常にいてルスカを見守っていた。
それは勿論、ルスカの体調を気遣っての話であった。

 改修が始まって完成予定より半ば、疲れの色が見え始めたルスカに朗報が飛び込んできた。

 それは、グルメールに戻ったカホから流星に宛てた知らせであった。

「なんじゃと!? ワズ大公が!?」

 カホによると重篤ではあったが、タツロウの運んできた回復薬が間に合い快方へと向かっているという。

 浮かべた涙を袖で拭ったルスカの表情はやる気に満ち満ちていた。

 そして、朗報ではないものがもう一つ。集中している今のルスカには、直ぐには伝えられなかったものが。

「死体どころか、何一つ残っていない!?」
「ああ、カホによるとグルメールを襲った連中。死人や怪我人も出ていたはずなのに誰一人居ないのだと。どうなっているんだ、アカツキ……」

 アカツキは規模は違えど、今回の発端を思い返していた。

 リンドウの街に現れたルメール教のメダルを持っていた空き巣と思われる者達。牢屋に入れられるも、歪みによりその姿は忽然と消えた。そしてグランツ王国でも同様に。

 アカツキは、一つの仮説に辿り着く。

「まさか……片道切符?」
「片道切符?」

 流星が聞き直すとアカツキは、コクリと頷く。そして、みるみる顔色が悪くなっていく。

 ルスカによると歪みは血の一つも残さず吸い込むと以前言っていた。

 それは正にブラックホールのようなもの。吸い込まれれば生きて戻れない。

 グルメールも、アルステル領も、レイン自治領にも襲撃してきた奴等は、忽然と現れ、忽然と消えた。死体すらも残さずに。

 アカツキの立てた仮説は、襲撃者達の移動方法──それは、歪みを使い現れて、歪みの中へと消えていったのではないかということ。

 襲撃が目的なため、確実に自分の意思を持って歪みに飛び込んだのだろう。そして、帰還するには再度歪みを利用する。ただし、それは死への一本道。死体も吸い込むことから、意思を持ってではなく、条件下における自動での発動。
 
 アカツキはゾッとする。襲撃者達は、それをわかっているのだろうかと。

 わかっていた場合は、完全に一致団結による特攻である。その決意は固く、とても話し合いで納得してくれるとは思えなかった。

 わかっていなかった場合。それは明らかに誰かの指示で動いているということ。そして、それはあまりにも冷酷で他人を容易に貶める人物ということになる。つまり、襲撃者達は、その人物に陶酔しきっている可能性がある。

「もしかしたら、私は考えが甘かったのかもしれません」

 話し合う事を前提にしていたため、いつものメンバーにプラス国の代表者を連れて行くつもりであったが、それは危険なのではないかと思えてきたのだった。


◇◇◇


 完成予定日まで一日を残して、新型の巨大パペットは完成を迎えた。あとは飛行実験のみである。

 この日、新型パペットの周りには実験を見に来た野次馬がわらわらと集まり始める。そして、パペットに被された布が外され御披露目となった。

 わぁっと声が多く上がり、パペットは姿を現した。

 全身、赤銅色に彩られ、背中には飛行機の翼のようなものがあり、その翼の先端に取り付けられたのは、これまた飛行機のようなジェットエンジンのようなものが。

「ルスカ、お疲れ様です」
「うむ、ヤヨイーからヒコウキとやらのシルエットを描いてもらったのを参考にしたのじゃ。最初アカツキに描いてもらったのは、酷かったからのぉ」
「絵は苦手なのです」

 そして、いよいよ飛行実験となる。乗るのはアカツキとルスカの二人のみ。乗りたい人は多くいたが、万一を考えまずはアカツキのみとなった。

 背中の羽まで登っていくと、そこには上を向いて座る椅子が五人分並んで設置されており、まるで打ち上げロケットのような座席であった。

「そこが操縦するところですか?」

 五人分の座席の前に一つだけ前に椅子が設置されており、ルスカはそこに座る。

「うむ。この二つの玉に少量の魔力を送ることで魔石が反応する。左右の供給量を変えることで、右に行ったり左に行ったり出来るのじゃ。それじゃ、早速やってみるのじゃ。アカツキは座席に」

 アカツキが座席に座ると、空が見える。シートベルトのようなものはなく、二本の棒で柵の役目をしていた。

「それじゃ、開始なのじゃ!」

 ルスカが目の前にある二つの玉に手を置くと、ジェットエンジンのような部分から赤く輝く光が、音もなく噴射される。その光が徐々に強くなっていくと、野次馬達の歓声が大きくなっていく。

「おお、浮きましたね」

 感覚ではわからないほど振動はなく、空が少し近づいたような気がしたことでやっと気づく。

「遅いですね」

 勢いよく噴射される赤い光と違い、着実に一段一段確かめながら階段を上がるように、ゆっくり、ゆっくりと巨大なパペットは浮いていく。

「ナルホさんよ、あれが限界なのか?」

 ロケットをイメージしていた流星は、高速エレベーターではない、只のエレベーターが上がる速度程度にガックリと肩を落とした。

 一定の高さまで上がったパペットはルスカの操作で真下に噴射していた赤い光を緩め、今度は横への噴射へと切り替えていくと、パペットは、徐々に体を倒していく。そして、空をぐるぐると旋回して見せた。

 空を飛ぶなど想像したことない魔族やローレライの人間は一層大きな歓声を上げるが、弥生と流星の二人だけ、小さな子供が乗れる遊園地のアトラクションの飛行機を思い浮かべていた。


◇◇◇


「成功なのじゃ!」

 降りてきたルスカは満足気に胸を張るが、イメージと大幅に違った転移者の三人は、こんなものかと心の中で妥協する。

「しかし、魔力ですか……私、操縦出来ませんね」

 魔法の使う資質のないアカツキは、少し残念がっていた。
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