追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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最終章 幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

四話 原田、正体を現す

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 案内された部屋の中央奥に、王様気分でふんぞり返り肘をついてアカツキ達を見下ろす原田は、下卑た笑みを浮かべていた。

「ぐふ、ぐふふ。久しぶりだなぁ、田代、それに工藤まで」

 アカツキは名前を呼ばれても返答すらせずに、ある一点を見つめていた。流星はてっきりアカツキがまた原田の顔を覚えていないのではと問いかける。

「おい、アカツキ。少し太りすぎだが、あいつは間違いなく原田だぞ」
「ええ、それはわかっています……それより、彼の隣にいるのは人でしょうか?」
「えっ!?」

 アカツキ達の位置からは、黒っぽい髪の毛くらいしか見えなかったが、鎖に繋がれている物がそこにはあった。人が鎖に繋がれている、しかもぐったり横たわりピクリともしない、そんなことを想像出来るはずもなく、流星は目を疑う。

「お、おい! 原田!! その横に居るのって……」
「ぐふふ。そうだな、お前達も知らない奴じゃないからな。おい!! 顔を見せてやれ……ほら、顔を上げろ!!」

 原田の言葉にも反応なく、すぐに苛立ち出した原田によって鎖を引っ張られ、顔を無理矢理持ち上げられる。

 虚ろな目、その瞳に光はなく生気を感じられない。素っ裸であるが痩せ細りあばらは浮き出ていた。アカツキ達は、悲痛な表情を浮かべるが、徐々に顔を青ざめる。

「そ、そいつ……まさか、つ、月ヶ岡なのか?」

 流星の言葉にほんの少し、その女性はピクリと反応を示す。久しぶりに名前を呼ばれたからか、それとも偶然か。しかし、流星には人相の変わったその女性に微かながら月ヶ岡百合の面影が見て取れた。

「月ヶ岡ってことは……クラスメイトですか?」
「ああ、間違いねぇ」
「だったら不味いのじゃ。あのままだと、そう長くもたぬのじゃ」

 アカツキ達は、原田に対してふつふつと怒りが湧いてきたのか、拳を強く握りしめる。

「一つ聞きます。今回のローレライ各地で起こった襲撃の一連といい、その月ヶ岡さんの事といい、全てあなたの意志ですか?」
「ぐふふふふ。当たり前じゃないか。俺以外に誰が居るんだよ、馬鹿か! でも、勘違いするなよ。こいつは馬渕に実験台にされる所を俺が助けてやったんだよ。面白いぜぇ? 初めは絶望から俺という希望に助けられて感謝しているところから、最悪の絶望に叩き落とすのはよう」
「ふん。馬渕は、アカツキの事を偽善だと言っておったが、こやつの方がよっぽど、たちが悪いのじゃ」
「ぐふふ。違いねぇ、お前の言うとおりだぜ、ルスカ・シャウザード」

 原田に名前を呼ばれるとルスカは寒気が走り体を震わせる。恐怖などではなく、ただ単に鳥肌だ立つほど気持ち悪かった為に。

「話し合いに来たのですが……無理そうですね」
「いいや、そんなことないぜ。田代よぉ。円満解決の手ならあるぜぇ……」

 原田は含みのある薄汚い笑みを浮かべると真っ赤な舌で舌なめずりをして見せる。

「三田村をよぉ、俺に寄越せば円満解決だぁ! ここの連中も説得してやるし、月ヶ岡も解放してやるぜ、ほぉら、円満だろぉ!! 三田村は、泣くかもしれないがなぁ……その顔見ながら抱くのも一興だろ? なぁ、田代!!」

 プツンと何かが切れる音がする。一つではない、全部で三つ。

「ふざけないでくださぁぁい!!」
「てめぇ! いい加減にしやがれ!!」
「絶対そんなことさせぬのじゃ!!」

 アカツキが形相を変え先行して飛び出す。背中からエイルの蔦を伸ばし原田に迫っていく。厄介なのは月ヶ岡百合を人質に捕られることだとアカツキは考え、一本は原田と百合の間を狙い、もう一本は原田を百合から引き離すように仕向ける。

「流星! 後方はお願いします!」
「おう! 任せろ!! ……って、ルスカちゃんも!?」

 流星は、スキル“擬態”を使用してガロンの姿へと変わり、他の人が部屋に入って来ないように立ち塞がる。ルスカは、入り口を塞いだことにより、後ろは安全と見なしてアカツキの後を追いかけていた。

 エイルの蔦が原田に迫ると、意外なことに百合には目もくれずに椅子から離れて行く。そしてそのまま壁にかかったカーテンの向こう側へと逃げていった。

「大丈夫ですか!?」

 百合はアカツキの声に反応すらせずに、天井を見上げていた。アカツキはアイテムボックスから回復薬を取り出し、それを後から駆けつけたルスカに渡すと、百合の事を頼み、自らは原田の後を追った。

「ルスカ、お願いしましたよ!」

 ルスカは頷くと回復薬を開け百合へ飲まそうとする。少しずつ少しずつ染み入るように、飲ませていくのであった。

 流星はというと、やはり騒ぎになり始め、どこから聞き付けたのか街からワラワラと人が向かって来ているのが見えた。モタモタしている暇はないと、ルスカのところまでジリジリと下がる。

「月ヶ岡を俺の背中に! ルスカちゃんも早く!!」

 体格の小さいルスカは、それでも百合の腕を自分の肩へ回して流星の側まで引きずるようにやってくる。流星はしゃがみこみ百合の腕を甘噛みで持ち上げ背中へ乗せた。

「あっ! どこ行くんだよ!!」
「アカツキの所じゃ!! 流星は、ナックとアイシャと合流するのじゃ!!」

 そう言い残しルスカは、原田の消えたカーテンを捲ると、そこには開きっぱなしの扉が隠されていた。隣の部屋へと移ったルスカは、わざとアカツキがそうしたのか、開いたままの扉をくぐって行く。

 最後の扉をくぐった先は屋敷の裏庭であった。そこに呆然と立っているアカツキと、地面に横たわりピクリとしない原田がいた。

「あ、アカツキ?」
「ルスカ!? 違いますからね。私が着いた時には既に倒れていたのですから」
「わかっておるのじゃ! それより、奴から目を離しちゃ駄目なのじゃ!」

 その時であった。アカツキが全身の鳥肌という鳥肌が立つほどの、ドス黒い威圧感を感じたのは。明らかに先ほどまでいた原田からは感じなかった重苦しい空気に、冷たい汗を流す。

 むくりと体を起こした原田がギロリと睨んでくるその目は、血走ったというレベルではないほど、赤黒く輝いていた。

「既に復活用の体を手に入れていた訳じゃな……ルメール」
「くくく……壊れかけの入れ物風情がワタシに話しかけるな」

 ルメール。それはローレライを治めていた元神で“食らうもの”をドラクマに呼び込み、ある意味ルスカを生み出すきっかけとなった者。それが今、原田の体を食い破るように這い出てきた。

 アカツキの倍はある背丈に、人のなりをした姿の背中には四枚の羽を生やし、全身は黒い鱗のような物で身を包み爬虫類のような手には鋭い爪が伸びていた。

 赤黒く輝く瞳で此方を睨み続けるルメール。その足元には原田であった物が、そこかしこに散らばっていた。
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