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マクウェル=ルーラント
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*マクウェル視点*
私は、幼い頃のある時期の記憶が無い。
5歳の時に高熱を出したらしく、一晩寝込んで翌日目を覚ますと、1ヶ月位の記憶が抜けていたらしい。自分では、全く分からなかった。その時、自分に何かあったのか?と周りの者に訊いたりしたが、
「特に何もありませんでしたよ」
としか言われなかったし、抜けていても問題は無かったから、それ以降は特に気にする事も無く日々を過ごして行った。
『お初にお目に掛かります。シルフィー=キリクスと言います。本日は、私の誕生日のお祝いに来ていただき、ありがとうございます。』
シルフィーに初めて会った時、「あれ?」と思った。
確かに初めて会った筈なのに、何故だが懐かしいような感じがした。彼女は白に近い銀髪に青色の瞳。可愛いらしい顔をしているが、表情の変化があまりなく、冷たい印象を受ける。
そのシルフィーの双子の従妹弟達は、少しはにかみながらも笑っていた。エレーナはピンク、アーロンはピンクブロンドの髪色で、2人とも碧色の瞳。
ーシルフィーとエレーナ、この2人のどちらかが…私の婚約者になるのかー
どちらでも構わないけど、まだ笑ってくれるエレーナの方が良いのかもしれないな─と、第一印象はそんな感じだった。
『できる限り、シルフィー嬢とエレーナとの時間を作りなさい。』
とお祖父様に言われていた為、それからも何度もキリクス邸へと足を運んだ。そうしているうちに、何となくシルフィーの微々たる表情の変化にも気付くようになった。
よくよく意識して見ていると、目で感情を表していた。
嫌な思いをすると目が少し細くなる。
嬉しいと目が少し大きくなって、何となくキラキラしているように見える。
困った時は、少し眉間に皺が寄る。
会話をする時は、私の目をしっかり見るけど、何か恥ずかしい事があると軽く視線を伏せる。
常に落ち着いていて、何を話しても嫌がる事もなく話しを聞いてくれる。
ー一緒に居ると、落ち着くなー
2人で過ごす時間が大切なモノになるのは、早かった。
だけど─
ある日を堺に、その2人の時間に、エレーナとアーロンが加わるようになった。エレーナも私の婚約者候補の1人だから、無碍にする事はできない。アーロンも私を兄のように慕ってくれているようで、それはそれで嬉しかった。
ただ、4人で居ると、殆どエレーナがお喋りをして、私とアーロンが相手をして─と、気付けばシルフィーはそこにただ座って聞いているだけ。若しくは、途中で部屋に下がってしまっている事もあった。
そんな時に耳にした
『そろそろ、本気であの事を考えなくちゃね。』
部屋を出て行ったシルフィーを追って廊下に出ると、シルフィーがそう呟いたのを耳にして固まる。
ー何を…考える?ー
その時のシルフィーの顔は、私にとって不安を掻き立てるような顔だった。それから数日後、その不安が現実となる。
「シルフィーを…候補から外す?」
「外すのではなく、エレーナに決めるか?と言ったんだ。」
「何故…エレーナに?」
「お前達4人の様子を、キリクスの使用人達に聞いたら、お前とエレーナがよく話をして仲が良さそうだと。それに、シルフィー嬢はあまり乗り気ではなさそうだと。」
お祖父様が、少し困ったように笑っている。
ルーラント公爵家にとっては、キリクスでもハイネルでも、どちらでも良いのだろう。私だって、最初はシルフィーでもエレーナでも─と思っていたけど…
「お祖父様。もう少しだけ…決めるのは待ってもらえませんか?成人する前迄には…決めますから。」
「……分かった。ならば、15歳から17歳の間は学園に通う事になる。シルフィー嬢もエレーナも通う為に王都に来るだろうから、その間に決めなさい。卒業迄に決まらない場合は…私の甥─現ルーラント公爵が決める事になる。」
「はい、それで構いません。ありがとうございます。」
学園生活が始まってからは、シルフィーがアルダートン嬢の侍女になった事もあり、学園では殆ど会う事はなかった。それでも何とか時間を作り、月に1、2回、シルフィーとお茶をした。やはり、その時間はとても温かく幸せな時間となった。
ただ、シルフィーは以前よりも少し、表情の変化が分かり難くなっていた。侍女としてのシルフィーが、そうさせているのだろう。私と会っている時位は、素になって欲しいのに─
少しの寂しさを感じているうちに、入園前のエレーナとアーロンが王都のハイネル伯爵邸にやって来たと便りがあった。入園前に─と思いながらもなかなか日が合わず、今日、ようやくエレーナに会いにハイネル邸へとやって来た。
“その日なら、シルフィーも来れると言っていたので、久し振りに4人で会いましょう”
と、エレーナから手紙があった。シルフィーにも会えるのか─と、嬉しく思いながら、私はハイネル邸へと足を踏み入れた。
私は、幼い頃のある時期の記憶が無い。
5歳の時に高熱を出したらしく、一晩寝込んで翌日目を覚ますと、1ヶ月位の記憶が抜けていたらしい。自分では、全く分からなかった。その時、自分に何かあったのか?と周りの者に訊いたりしたが、
「特に何もありませんでしたよ」
としか言われなかったし、抜けていても問題は無かったから、それ以降は特に気にする事も無く日々を過ごして行った。
『お初にお目に掛かります。シルフィー=キリクスと言います。本日は、私の誕生日のお祝いに来ていただき、ありがとうございます。』
シルフィーに初めて会った時、「あれ?」と思った。
確かに初めて会った筈なのに、何故だが懐かしいような感じがした。彼女は白に近い銀髪に青色の瞳。可愛いらしい顔をしているが、表情の変化があまりなく、冷たい印象を受ける。
そのシルフィーの双子の従妹弟達は、少しはにかみながらも笑っていた。エレーナはピンク、アーロンはピンクブロンドの髪色で、2人とも碧色の瞳。
ーシルフィーとエレーナ、この2人のどちらかが…私の婚約者になるのかー
どちらでも構わないけど、まだ笑ってくれるエレーナの方が良いのかもしれないな─と、第一印象はそんな感じだった。
『できる限り、シルフィー嬢とエレーナとの時間を作りなさい。』
とお祖父様に言われていた為、それからも何度もキリクス邸へと足を運んだ。そうしているうちに、何となくシルフィーの微々たる表情の変化にも気付くようになった。
よくよく意識して見ていると、目で感情を表していた。
嫌な思いをすると目が少し細くなる。
嬉しいと目が少し大きくなって、何となくキラキラしているように見える。
困った時は、少し眉間に皺が寄る。
会話をする時は、私の目をしっかり見るけど、何か恥ずかしい事があると軽く視線を伏せる。
常に落ち着いていて、何を話しても嫌がる事もなく話しを聞いてくれる。
ー一緒に居ると、落ち着くなー
2人で過ごす時間が大切なモノになるのは、早かった。
だけど─
ある日を堺に、その2人の時間に、エレーナとアーロンが加わるようになった。エレーナも私の婚約者候補の1人だから、無碍にする事はできない。アーロンも私を兄のように慕ってくれているようで、それはそれで嬉しかった。
ただ、4人で居ると、殆どエレーナがお喋りをして、私とアーロンが相手をして─と、気付けばシルフィーはそこにただ座って聞いているだけ。若しくは、途中で部屋に下がってしまっている事もあった。
そんな時に耳にした
『そろそろ、本気であの事を考えなくちゃね。』
部屋を出て行ったシルフィーを追って廊下に出ると、シルフィーがそう呟いたのを耳にして固まる。
ー何を…考える?ー
その時のシルフィーの顔は、私にとって不安を掻き立てるような顔だった。それから数日後、その不安が現実となる。
「シルフィーを…候補から外す?」
「外すのではなく、エレーナに決めるか?と言ったんだ。」
「何故…エレーナに?」
「お前達4人の様子を、キリクスの使用人達に聞いたら、お前とエレーナがよく話をして仲が良さそうだと。それに、シルフィー嬢はあまり乗り気ではなさそうだと。」
お祖父様が、少し困ったように笑っている。
ルーラント公爵家にとっては、キリクスでもハイネルでも、どちらでも良いのだろう。私だって、最初はシルフィーでもエレーナでも─と思っていたけど…
「お祖父様。もう少しだけ…決めるのは待ってもらえませんか?成人する前迄には…決めますから。」
「……分かった。ならば、15歳から17歳の間は学園に通う事になる。シルフィー嬢もエレーナも通う為に王都に来るだろうから、その間に決めなさい。卒業迄に決まらない場合は…私の甥─現ルーラント公爵が決める事になる。」
「はい、それで構いません。ありがとうございます。」
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ただ、シルフィーは以前よりも少し、表情の変化が分かり難くなっていた。侍女としてのシルフィーが、そうさせているのだろう。私と会っている時位は、素になって欲しいのに─
少しの寂しさを感じているうちに、入園前のエレーナとアーロンが王都のハイネル伯爵邸にやって来たと便りがあった。入園前に─と思いながらもなかなか日が合わず、今日、ようやくエレーナに会いにハイネル邸へとやって来た。
“その日なら、シルフィーも来れると言っていたので、久し振りに4人で会いましょう”
と、エレーナから手紙があった。シルフィーにも会えるのか─と、嬉しく思いながら、私はハイネル邸へと足を踏み入れた。
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