見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん

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目が覚めると、二つの光は見えなくなっていた。

チリン─とベルを鳴らすと、ようやく侍女の一人がやって来た。

「何かご用でしょうか?」
「けほっ…お水…と、何か食べられる物を……けほっ…」
「承知しました」

パタン─とすぐに扉が閉じられた。
一体、自分がどれだけ寝込んでいたのか全く分からない。ただ喉が渇いていてお腹が空いているのだけは分かる。“食べられる物を”とお願いはしたけど、侍女が私に“何が食べられるのか?”と訊く事はなかった。

ー今回は、何を作ってくるんだろう?ー

寝込んだ後は、固形の物を食べる事が難しい。柔らかい物が良いと伝えても、思い通りの食事が用意される事はあまりない。だけど、お腹は空いているから、時間が掛かっても食べるようにしている。そんな私に直接文句を言う侍女は居ないけど、私に向ける視線や態度は決して良いものではない。


『少し寝込んだぐらいで食べにくいとか…』
『片付けに時間がかかるから、後の予定に響いていい迷惑だわ』


なんて言われている事も知っている。

ーなら、柔らかい食事を出して欲しいー

「あ、“スープが欲しい”って言えば良かったのかなぁ?」
「カミリア、目が覚めたのね?」
「お母様!」

そこにやって来たのは、母であり王妃であるカティエ。カティエは持っていた箱をテーブルに置いてから、ベッドに座っているカミリアの側に近寄り軽く抱きしめた。

「誕生会の日は残念だったわね…もう、熱は下がったのかしら?」
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫です」
「なら良かったわ。それで、遅くなったけど、誕生日のお祝いを持って来たから、食事が終わった後にでも開けてみてちょうだい」
「ありがとう!お母様!」

それから、食事の準備ができる迄2人きりで話をした後「これから公務があるから」と言って、お母様は部屋から出て行ってしまった。

「寂しい」「行かないで」「もう少し一緒にいて欲しい」なんて事は言えない。王妃としての公務があって忙しい中、少しの時間だけでも会いに来てくれたのだから。それだけで十分だ。

ただ、目の前に並んだ料理を見ると、どうしても気持ちが沈んでしまう。パンとチキンのソテーだ。

「……いただきます…………」

まだ比較的柔らかいチキンで良かった─と思う事にする。少し硬めのパンも、スープに浸して食べれば大丈夫。そう自分に言い聞かせながら、今日も私は時間を掛けてゆっくりと久し振りの食事を食べ切った。



それから、まだ本調子ではないから、ソファーに座って本を読んでいると、部屋のドアの向こう側がザワザワし始め、軽くノックがあった後、私が返事をする前に扉が開かれた。

「今回は、2日間寝込んでいたそうね」
「お姉様……」

やって来たのは、私の姉である第一王女ヘレンティナだった。

「魔力が無いと、体も弱いのね」
「ごめんなさい……」
「謝らなくて良いわよ。取り敢えず…貴方も10歳になったのだから、貰ったプレゼントを分けようかと思って」
「え?」
「驚く事は無いでしょう?生まれた時間差で私達が兄と姉になったけど、同じ日に生まれたのだから。兎に角、いくつか持って来ているから、後で見てみると良いわ。それじゃあね」

ヘレンティナは椅子に座る事もなく、言いたい事だけ言うとすぐに部屋から出て行った。

「流石はヘレンティナ様。妹思いな方ですね」
「…そうね………」

誰が見ても、“妹を思いやる姉”として映るだろう。
その姉のヘレンティナが持って来た箱は三つ。それを一つずつ開けて中身を確認する。

一つ目は香水──10歳の子に香水は無い。
二つ目は綺麗なガラスのコップ──10歳の誕生祝には、“割れ物”はタブーとされている。
三つ目は魔道具──魔力を流すと、映像を保存できる高価な物だけど、魔力を持たない私にとっては、ただの置き物にしかならない物だ。

いつもそうだ。ヘレンティナは、私に優しいふりをして私を貶めて来るのだ。それでも、受け取る以外の選択肢はない。受け取らなければ「“汚点”のクセに生意気だ」と言われるから。受け取っても「使えないクセに」と嘲笑われるけど。

ー本当に優しいのは……お母様だけだー

その優しい母が私にくれたのは、赤色の宝石のピアス。大好きな母の髪の色と同じ綺麗な赤色だ。それだけで嬉しくなる。

「でも……やっぱり今年も会えなかったなぁ……」

母とは1週間で1~2回、ヘレンティナとは何か行事などがある時に会うけど、兄であるオーウェンと父である国王とは年に数回会うかどうか。誕生日に会った記憶は無い。正直、2人の顔もハッキリと思い出せないぐらいだ。特に、国王である父は歴代初の魔力無しの汚点となった私の事を嫌っているから、わざわざ私に会いに来る事は無い。

ー存在している事すら忘れているかもしれないけどー

ある意味、今年の誕生日も何事も無く終わった事にホッとしたのは確かだ。




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