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アシーナとリュークレイン
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*アシーナ視点*
滞在4日目は、リナと2人で街へ出た。リナ達がここに来ている時は、必ず街で一緒に買い物をしている為、街の人達もリナの事はよく覚えてくれていて、リナもよく声を掛けられる。貴族にありがちな傲慢さはなく、気さくに街の人達と話しているリナは、とても良い子に育ったなと思う。
『何となくなんですけど、リナティアさんが、自分は王太子様によく思われてない─みたいに思ってる感じだったんです』
いつもと同じように笑っているように見えるリナ。
でも、見えているモノだけが全てとは限らない事は知っている。ただ、リナに直接訊いたところで、リナが正直に話してくれるとは思わない。
ーレインに訊くしかないわねー
と、取り敢えず、私は今はリナと買い物を楽しむ事にした。
「叔母様、今日は、ルーナと一緒に寝ても良い?」
と、リナが珍しく私にお願いをして来た。ルーナに視線を向けると、コクリと軽く頷いたような気がしたから「良いわよ」と答えると、リナは嬉しそうにルーナを連れて部屋へと戻って行った。ルーナの尻尾も揺れていたから、ルーナもリナの事が気に入ったのかもしれない。
「それに、丁度良かったわ。レインと…話をしなければね」
と、私はレインに声を掛けて執務室まで来てもらった。
「言えない事なら無理に言う必要はないから、言える範囲で答えて欲しいのだけど……殿下とリナはうまくいっているの?」
まどろっこしい言い方はせずに、単刀直入にレインに質問をする。
「うまく─とは、一体どう言う意味でですか?」
「言葉通りの意味よ」
と言うと、レインは少し思案した後
「──そう言えば、リナが1年生の時は、よくリナから殿下の話を聞いていたけど…2年生になってからは…あまり聞かなくなったような気が……」
貴族の子達は、基本15歳から17歳の3年間は学校に通い、18歳で社交会デビューをする。
王太子とリナの年の差は一つ。今は、王太子が3年生でリナが2年生になる。
「近衛騎士団の副団長には、何も報告は上がっていないのね?」
「そう…ですね。何も上がってませんね。王太子と言っても、学校内の事だから、俺達大人が介入するのも…あまり良くないので、同年代の者達で護衛をさせているんです。まぁ、国王陛下が影を数名付けてはいますけどね」
国王陛下の影は、あくまでも王太子の命に関わる事が起こった時に動く者であり、逆に言えば、命に関わる事が無い限りは動かないと言う者である。常にその目で見て、耳で聞いてはいるが、決して表には出て来ない。例え、王太子が命令しようとも、主である国王陛下以外の命には従わない。
故に、影が何かを知っていたとしても──
「影からは情報は得られないわよね」
「叔母上は……殿下とリナの間に、何かあると?」
「リナの笑顔がね…いつもと違う気がしたのよ」
ー気付いたのはルーナだけどねー
それも、気付いたルーナも、自分に似ているから気付いたのかもしれない。
「王都に戻ったら、少し調べてみます」
ーリナに関しては、今は何もできないわねー
私も探りは入れるつもりだけど、レインにも動いてもらった方が、更に情報は入りやすいだろう。
「話は変わりますが…叔母上。あの…ルーナは、犬ではないですよね?」
「あら、やっぱりレインには分かるのね」
我が甥であるリュークレインは、武術に長けていて第二騎士団の副団長を務めているが、魔力に関しても相当なモノを持っている。魔道士としてもやっていける程である。
「ルーナは、白狼なのよ」
「───は?」
ーレインのキョトン顔、初めて見たわねー
「ちょっと訳ありでね。国王陛下にも報告していないの」
「───は?」
そう。白狼とは、神や精霊の使い魔とされ、本来であれば保護した時は国に報告しなければいけないのだ。
ただ、白狼の存在自体がお伽噺で、誰もその姿を見た者が居ない上、ルーナは白狼でありながら白銀の毛色をしている為、見た目だけで白狼と判断する事ができないのだ。だから、誰もが皆、ルーナは犬だと思ってくれるのだ。
「月の加護があるのは気付いているわよね?」
「それは…はい」
「おまけに、水の精霊の加護もあるのよ」
「……………」
ーあら、ついにレインが黙ってしまったわねー
レインは暫く固まった後
「ルーナがどんな扱いを受けるか分からない。何かあれば、水の精霊がどう反応するか……分からないからですか?」
「ふふっ。流石はレインね。理解が早くて助かるわ」
ルーナ…キョウコは、東の森で過ごす事を喜んでいる。それを、国に報告した後、もし、悪気は無くとも、キョウコの嫌がる事をされたら──精霊は、自分が気に入った者にしか加護を与えない。そして、加護を与えた相手には無条件に過保護な程に護ろうとする。
特に、キョウコに関しては、色々な事情が絡んでいる。
ー実は、白狼ではなく、可愛らしい女の子なんだけどー
とは、レインにもまだ秘密だ。
滞在4日目は、リナと2人で街へ出た。リナ達がここに来ている時は、必ず街で一緒に買い物をしている為、街の人達もリナの事はよく覚えてくれていて、リナもよく声を掛けられる。貴族にありがちな傲慢さはなく、気さくに街の人達と話しているリナは、とても良い子に育ったなと思う。
『何となくなんですけど、リナティアさんが、自分は王太子様によく思われてない─みたいに思ってる感じだったんです』
いつもと同じように笑っているように見えるリナ。
でも、見えているモノだけが全てとは限らない事は知っている。ただ、リナに直接訊いたところで、リナが正直に話してくれるとは思わない。
ーレインに訊くしかないわねー
と、取り敢えず、私は今はリナと買い物を楽しむ事にした。
「叔母様、今日は、ルーナと一緒に寝ても良い?」
と、リナが珍しく私にお願いをして来た。ルーナに視線を向けると、コクリと軽く頷いたような気がしたから「良いわよ」と答えると、リナは嬉しそうにルーナを連れて部屋へと戻って行った。ルーナの尻尾も揺れていたから、ルーナもリナの事が気に入ったのかもしれない。
「それに、丁度良かったわ。レインと…話をしなければね」
と、私はレインに声を掛けて執務室まで来てもらった。
「言えない事なら無理に言う必要はないから、言える範囲で答えて欲しいのだけど……殿下とリナはうまくいっているの?」
まどろっこしい言い方はせずに、単刀直入にレインに質問をする。
「うまく─とは、一体どう言う意味でですか?」
「言葉通りの意味よ」
と言うと、レインは少し思案した後
「──そう言えば、リナが1年生の時は、よくリナから殿下の話を聞いていたけど…2年生になってからは…あまり聞かなくなったような気が……」
貴族の子達は、基本15歳から17歳の3年間は学校に通い、18歳で社交会デビューをする。
王太子とリナの年の差は一つ。今は、王太子が3年生でリナが2年生になる。
「近衛騎士団の副団長には、何も報告は上がっていないのね?」
「そう…ですね。何も上がってませんね。王太子と言っても、学校内の事だから、俺達大人が介入するのも…あまり良くないので、同年代の者達で護衛をさせているんです。まぁ、国王陛下が影を数名付けてはいますけどね」
国王陛下の影は、あくまでも王太子の命に関わる事が起こった時に動く者であり、逆に言えば、命に関わる事が無い限りは動かないと言う者である。常にその目で見て、耳で聞いてはいるが、決して表には出て来ない。例え、王太子が命令しようとも、主である国王陛下以外の命には従わない。
故に、影が何かを知っていたとしても──
「影からは情報は得られないわよね」
「叔母上は……殿下とリナの間に、何かあると?」
「リナの笑顔がね…いつもと違う気がしたのよ」
ー気付いたのはルーナだけどねー
それも、気付いたルーナも、自分に似ているから気付いたのかもしれない。
「王都に戻ったら、少し調べてみます」
ーリナに関しては、今は何もできないわねー
私も探りは入れるつもりだけど、レインにも動いてもらった方が、更に情報は入りやすいだろう。
「話は変わりますが…叔母上。あの…ルーナは、犬ではないですよね?」
「あら、やっぱりレインには分かるのね」
我が甥であるリュークレインは、武術に長けていて第二騎士団の副団長を務めているが、魔力に関しても相当なモノを持っている。魔道士としてもやっていける程である。
「ルーナは、白狼なのよ」
「───は?」
ーレインのキョトン顔、初めて見たわねー
「ちょっと訳ありでね。国王陛下にも報告していないの」
「───は?」
そう。白狼とは、神や精霊の使い魔とされ、本来であれば保護した時は国に報告しなければいけないのだ。
ただ、白狼の存在自体がお伽噺で、誰もその姿を見た者が居ない上、ルーナは白狼でありながら白銀の毛色をしている為、見た目だけで白狼と判断する事ができないのだ。だから、誰もが皆、ルーナは犬だと思ってくれるのだ。
「月の加護があるのは気付いているわよね?」
「それは…はい」
「おまけに、水の精霊の加護もあるのよ」
「……………」
ーあら、ついにレインが黙ってしまったわねー
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「ふふっ。流石はレインね。理解が早くて助かるわ」
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