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再び
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*時は遡って、29話の続きのルーナ視点になります。同じような話が続くので、本日も2話投稿します*
********
アシーナさんと街へ行った時にリュークレインさんと遇ってから、杏子としての時間が増えた。
「白狼だと、デザートが食べられない」と言った私に、リュークレインさんがお土産を買って来てくれるようになったからだ。
『部屋に誰も入って来れないように、中からの声も漏れないように結界を張ってるから、キョウコの姿に戻って食べれば良いよ』
と言って、パンケーキを買って来てくれたのが始まりだった。
勿論、最初は買ってもらう事が申し訳ないと遠慮もしたし、部屋に2人きりで迷惑ではないんだろうか?と悩んだりもしたけど、その度にリュークレインさんが『キョウコだけにじゃなくて、リナにもあげてるから気にしなくて良い』『周りは、俺と白狼だと思っているから大丈夫』と言われるから、それじゃあ…大丈夫かな?と思って、今では有難く、美味しく頂いている。
リュークレインさんが買って来てくれるモノは、いつもどれも美味しかったし、リュークレインさんとゆっくり話せる時間はとても楽しかった。
「貰ってばかりだから、何かお礼がしたいなぁ…」
一応だけど、アシーナさんが作るポーションのお手伝いをしていて、そのお手伝いに対してアシーナさんが手当をくれているから、少しの手持ちはある。大した物は買えないけど、何かできないかな?と思ってアシーナさんに相談すると─
「それなら、この世界では、お礼に刺繍を施したハンカチを贈る事があるわ」
「ハンカチ…刺繍!」
ーハンカチならそんなに高くないだろうし、刺繍なら得意だー
「今度、ハンカチを買って、刺繍して渡します!アシーナさん、教えてくれてありがとう」
それから、アシーナさんの時間のある時にハンカチと刺繍糸を買いに行き「どんな刺繍が良い?」と悩んでいると─
「レインのイニシャルと………そうね……月属性の月って、守護の意味もあるから、騎士であるレインにはお守りにもなって丁度いいのかもしれないわね」
と、アシーナさんからのアドバイスももらい、私は早速白銀色の三日月と紫色でリュークレインさんのイニシャルを刺繍した。
その時のアシーナさんの顔をよく見ていたら……アシーナさんの企みに気付いていたかもしれないし、気付けていたら、あんな恥ずかしい思いを後々する事にはならなかっただろう─なんて、この時の私は思いもしなかった。
******
それから月日は流れ、アデルバート王子が学園を卒業すると同時に廃太子となり、そのまま一代限りの領地無し公爵となりロゼリアさんと結婚。カミリア王女の立太子が発表された。
それから、アシーナさんもリュークレインさんも更に忙しくなったようで、2人とも邸にも帰って来れない日が増えた。リナティアさんはリナティアさんで、新学年になると生徒会役員になったらしく、毎日勉強と生徒会での仕事で忙しそうにしている。
ちょっぴり寂しくもあるけど、これまた忙しいクラリス様が時々私の相手をしてくれたり、使用人さん達が相変わらず私を撫で回してくれるから、それなりに楽しく過ごせている。
『キョウコ、美味しい?今日は、何かあった?』
アリスタ邸の庭の噴水を覗き込み、前足でチャプチャプと水面を揺らしていると、ふとその声が頭の中で響いた。
それは、リュークレインさんが、杏子になった私によく掛けてくれる言葉だ。自分が買って来た物が美味しいか?と。そして、その日何かあったのか?と、いつも優しい顔で聞いてくれるのだ。そして、私の話を聞いてくれた後は、リュークレインさんの事や、この国の事を色々話してくれる。そんな毎日を、当たり前のように過ごしていたけど……。
『当たり前の事なんて…ないんだよね…』
日本で当たり前の毎日を過ごしていた。でも、あの日から当たり前ではない毎日になった。そんな事すら、スッカリ忘れていたのだ。
『………元気に…してるかな?』
チャプン──と、前足を噴水に突っ込む。
『リュークレインに会いたいの?』
以前耳にした時よりも、少し愉しげな声。
『え?』
『ルーナがそれを望むなら…簡単な事よ?ふふっ。』
噴水の水面から、パァッと光が溢れた。
******
今日は、カミリア王女が王都内にある孤児院の視察に来ていて、リュークレインさんが、そのカミリア王女の護衛として付き添っていると言う事だった。
私は今、その孤児院に来ている。白狼の姿のままで、アシーナさんからもらった認識阻害の魔術を展開させて。
ー何だか覗き見…悪い事をしてるみたいでドキドキするー
あの噴水から光が溢れだした後に現れたのは、やっぱり水の精霊であるウンディーネ様だった。
『ルーナには私の─水の精霊の加護があるから、水がある所なら、水を介して行きたい場所に転移できるのよ』
と、ウンディーネ様はニッコリ笑った後
『リュークレインが居る、あの孤児院にも噴水はあるから行けるわよ?』
と更に愉しげに私を見ながらそう告げたのだった。
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アシーナさんと街へ行った時にリュークレインさんと遇ってから、杏子としての時間が増えた。
「白狼だと、デザートが食べられない」と言った私に、リュークレインさんがお土産を買って来てくれるようになったからだ。
『部屋に誰も入って来れないように、中からの声も漏れないように結界を張ってるから、キョウコの姿に戻って食べれば良いよ』
と言って、パンケーキを買って来てくれたのが始まりだった。
勿論、最初は買ってもらう事が申し訳ないと遠慮もしたし、部屋に2人きりで迷惑ではないんだろうか?と悩んだりもしたけど、その度にリュークレインさんが『キョウコだけにじゃなくて、リナにもあげてるから気にしなくて良い』『周りは、俺と白狼だと思っているから大丈夫』と言われるから、それじゃあ…大丈夫かな?と思って、今では有難く、美味しく頂いている。
リュークレインさんが買って来てくれるモノは、いつもどれも美味しかったし、リュークレインさんとゆっくり話せる時間はとても楽しかった。
「貰ってばかりだから、何かお礼がしたいなぁ…」
一応だけど、アシーナさんが作るポーションのお手伝いをしていて、そのお手伝いに対してアシーナさんが手当をくれているから、少しの手持ちはある。大した物は買えないけど、何かできないかな?と思ってアシーナさんに相談すると─
「それなら、この世界では、お礼に刺繍を施したハンカチを贈る事があるわ」
「ハンカチ…刺繍!」
ーハンカチならそんなに高くないだろうし、刺繍なら得意だー
「今度、ハンカチを買って、刺繍して渡します!アシーナさん、教えてくれてありがとう」
それから、アシーナさんの時間のある時にハンカチと刺繍糸を買いに行き「どんな刺繍が良い?」と悩んでいると─
「レインのイニシャルと………そうね……月属性の月って、守護の意味もあるから、騎士であるレインにはお守りにもなって丁度いいのかもしれないわね」
と、アシーナさんからのアドバイスももらい、私は早速白銀色の三日月と紫色でリュークレインさんのイニシャルを刺繍した。
その時のアシーナさんの顔をよく見ていたら……アシーナさんの企みに気付いていたかもしれないし、気付けていたら、あんな恥ずかしい思いを後々する事にはならなかっただろう─なんて、この時の私は思いもしなかった。
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それから月日は流れ、アデルバート王子が学園を卒業すると同時に廃太子となり、そのまま一代限りの領地無し公爵となりロゼリアさんと結婚。カミリア王女の立太子が発表された。
それから、アシーナさんもリュークレインさんも更に忙しくなったようで、2人とも邸にも帰って来れない日が増えた。リナティアさんはリナティアさんで、新学年になると生徒会役員になったらしく、毎日勉強と生徒会での仕事で忙しそうにしている。
ちょっぴり寂しくもあるけど、これまた忙しいクラリス様が時々私の相手をしてくれたり、使用人さん達が相変わらず私を撫で回してくれるから、それなりに楽しく過ごせている。
『キョウコ、美味しい?今日は、何かあった?』
アリスタ邸の庭の噴水を覗き込み、前足でチャプチャプと水面を揺らしていると、ふとその声が頭の中で響いた。
それは、リュークレインさんが、杏子になった私によく掛けてくれる言葉だ。自分が買って来た物が美味しいか?と。そして、その日何かあったのか?と、いつも優しい顔で聞いてくれるのだ。そして、私の話を聞いてくれた後は、リュークレインさんの事や、この国の事を色々話してくれる。そんな毎日を、当たり前のように過ごしていたけど……。
『当たり前の事なんて…ないんだよね…』
日本で当たり前の毎日を過ごしていた。でも、あの日から当たり前ではない毎日になった。そんな事すら、スッカリ忘れていたのだ。
『………元気に…してるかな?』
チャプン──と、前足を噴水に突っ込む。
『リュークレインに会いたいの?』
以前耳にした時よりも、少し愉しげな声。
『え?』
『ルーナがそれを望むなら…簡単な事よ?ふふっ。』
噴水の水面から、パァッと光が溢れた。
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今日は、カミリア王女が王都内にある孤児院の視察に来ていて、リュークレインさんが、そのカミリア王女の護衛として付き添っていると言う事だった。
私は今、その孤児院に来ている。白狼の姿のままで、アシーナさんからもらった認識阻害の魔術を展開させて。
ー何だか覗き見…悪い事をしてるみたいでドキドキするー
あの噴水から光が溢れだした後に現れたのは、やっぱり水の精霊であるウンディーネ様だった。
『ルーナには私の─水の精霊の加護があるから、水がある所なら、水を介して行きたい場所に転移できるのよ』
と、ウンディーネ様はニッコリ笑った後
『リュークレインが居る、あの孤児院にも噴水はあるから行けるわよ?』
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