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杏子のお願い
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謁見室に、予めお願いして国王陛下以外に─
王妃陛下、カミリア王女、宰相、第一と第二の騎士団長、魔導士団長、神官長、3人の魔女が同席していた。
昨日の召喚の儀に関わった主立った者達だ。
召喚されたハルマが「もう一人居るはずだ」と、あの場で訴えた事で、キョウコの存在を隠すことが難しいと判断した為、その主立った者達にも話す事にした。勿論、キョウコに関しては、ここだけの話に留まらせる事が第一条件になる。
バックに水の精霊が居るから───
「─────と、言う事です。」
「……あの……白狼が………」
アシーナが一通りの説明をした後、国王陛下がポツリと呟いた。心なしか、顔色が悪いのは─気のせいではないだろう。水の精霊のルーナへの過保護ぶりを実際に目で見て、肌で色々と感じたのだ。これからどうなるのか?と、恐ろしくなってしまうのは──仕方が無いだろう。
「そこで、ルーナ──キョウコに、これからどうするのか…と、本人の意思確認をすると、キョウコにあるお願いをされました。」
「願い?」
「はい。それは───」
召喚の儀が行われてから一週間後。召喚された4人の鑑定が行われた。結果──
ハルマ─剣士(Lv.30)。魔力無し。加護無し。
イツキ─魔導士(Lv.30)。火属性。加護無し。
サヤカ─聖女(Lv.30)。光属性。加護無し。
ミオ─魔導士(Lv.30)。風属性。加護無し。
聖女はサヤカだけだったが、レベル30は、国内の聖女達よりも遥かに上のレベルだった。どのタイプにおいても、30を超えると大したモノで、50となるとほぼ無敵状態と言っても良い程である。
訓練もせずに、世界を跨いでやって来ただけでレベルが30もあると言う事は、訓練をすれば……何故、繰り返し召喚の儀が行われるのか──理由は明らかである。
一週間が経てば、4人も少しずつ落ち着いて来た。“死に直面していた”とは言え、本人達が死を感じる前に召喚される為、その真実を告げたところで受け入れられず、更に混乱するのでは?と思われていたが、イツキが、高さのある壁が崩れて来て危ない─と目にしていた事もあり、それは事実なんだろうと、辛い事には変わらないが、なんとかそれを事実として受け入れた様子だった。
それから、この国の今の状況や、これからの事の話をした。
そして、一通りの説明が終わると
「「「「ラノベ定番!」」」」
と、4人の言葉がハモった。
聖女─サヤカの訓練を行うのは東西南北の魔女達。
訓練初日、「女の子ばっかりなんだね。」と呟いていたけど、アシーナは軽くスルーした。
剣士─ハルマの訓練を行うのは第一騎士団の副団長。
「やるからには頑張ります。」と、好印象で初日はスタートした。
魔導士─イツキとミオの訓練は、勿論魔導士達が行う。
「「宜しくお願いします。」」こちらも、好印象でスタートした。
「ねぇ……何故、あんな子が聖女なの?」
「俺に聞かないで下さい。」
聖女達の訓練を見にやって来たカミリア王女が眉を顰める。それに答えたのは、近衛として付き添っているリュークレインと─
『昔からあんな感じで……変わってませんね。』
リュークレインの足元でお座りをしている白狼だった。
4人が召喚されてから1ヶ月。この日、ルーナは初めてその4人を見に来たのだ。杏子である事は隠して。
杏子が願い出たのは、杏子と言う事を隠して、先ずはルーナとして会って4人の様子を窺ってから、これからの対応を考えたい─と言う事だった。
あの4人が、この世界に来てから変わったのなら良いけど、変わらずなら、杏子として会う必要は無いと思ったからだ。
ーどちらにしても、4人と一緒に歩んで行く事は無いけどー
ルーナは、ジッと聖女達の訓練を見つめていて、時折耳をピクピクとさせている。
「………あの耳!可愛いっ!もふりたいっ!」
「……殿下…………」
そんなルーナを見たカミリアが、傍から見ると表情は一切崩れてはいないが、近くに居るリュークレインにだけ聞こえるような声で呟き、それをリュークレインが窘める。
「レ…リュークレインは良いわよね。もふり放題なんでしょう?それに、魔力の相性が良いなんて……ふふっ。キョウコは可愛らしいんでしょうね?」
「そうですね。可愛らしいですね。どちらの姿でも。」
「惚気られたわ!!リナに聞かせてあげたいわ!!」
「……殿下………。」
と、ルーナの後ろで繰り広げられているやり取りの声は、ルーナの耳には入ってはいない。ルーナは、遠くに居る聖女達の声を拾うのに必死だったのだ。
耳に入って来る会話からして、やっぱり、サヤカの聖女としてのレベルは高いらしく、他の聖女達よりも群を抜いていた。魔女が褒めるとサヤカはにこやかに微笑むが、他の聖女達に向ける眼差しは───杏子に向けるソレと、同じだった。
ー大森彩香は、何一つ…変わってないんだー
と、ルーナはため息を吐いた。
王妃陛下、カミリア王女、宰相、第一と第二の騎士団長、魔導士団長、神官長、3人の魔女が同席していた。
昨日の召喚の儀に関わった主立った者達だ。
召喚されたハルマが「もう一人居るはずだ」と、あの場で訴えた事で、キョウコの存在を隠すことが難しいと判断した為、その主立った者達にも話す事にした。勿論、キョウコに関しては、ここだけの話に留まらせる事が第一条件になる。
バックに水の精霊が居るから───
「─────と、言う事です。」
「……あの……白狼が………」
アシーナが一通りの説明をした後、国王陛下がポツリと呟いた。心なしか、顔色が悪いのは─気のせいではないだろう。水の精霊のルーナへの過保護ぶりを実際に目で見て、肌で色々と感じたのだ。これからどうなるのか?と、恐ろしくなってしまうのは──仕方が無いだろう。
「そこで、ルーナ──キョウコに、これからどうするのか…と、本人の意思確認をすると、キョウコにあるお願いをされました。」
「願い?」
「はい。それは───」
召喚の儀が行われてから一週間後。召喚された4人の鑑定が行われた。結果──
ハルマ─剣士(Lv.30)。魔力無し。加護無し。
イツキ─魔導士(Lv.30)。火属性。加護無し。
サヤカ─聖女(Lv.30)。光属性。加護無し。
ミオ─魔導士(Lv.30)。風属性。加護無し。
聖女はサヤカだけだったが、レベル30は、国内の聖女達よりも遥かに上のレベルだった。どのタイプにおいても、30を超えると大したモノで、50となるとほぼ無敵状態と言っても良い程である。
訓練もせずに、世界を跨いでやって来ただけでレベルが30もあると言う事は、訓練をすれば……何故、繰り返し召喚の儀が行われるのか──理由は明らかである。
一週間が経てば、4人も少しずつ落ち着いて来た。“死に直面していた”とは言え、本人達が死を感じる前に召喚される為、その真実を告げたところで受け入れられず、更に混乱するのでは?と思われていたが、イツキが、高さのある壁が崩れて来て危ない─と目にしていた事もあり、それは事実なんだろうと、辛い事には変わらないが、なんとかそれを事実として受け入れた様子だった。
それから、この国の今の状況や、これからの事の話をした。
そして、一通りの説明が終わると
「「「「ラノベ定番!」」」」
と、4人の言葉がハモった。
聖女─サヤカの訓練を行うのは東西南北の魔女達。
訓練初日、「女の子ばっかりなんだね。」と呟いていたけど、アシーナは軽くスルーした。
剣士─ハルマの訓練を行うのは第一騎士団の副団長。
「やるからには頑張ります。」と、好印象で初日はスタートした。
魔導士─イツキとミオの訓練は、勿論魔導士達が行う。
「「宜しくお願いします。」」こちらも、好印象でスタートした。
「ねぇ……何故、あんな子が聖女なの?」
「俺に聞かないで下さい。」
聖女達の訓練を見にやって来たカミリア王女が眉を顰める。それに答えたのは、近衛として付き添っているリュークレインと─
『昔からあんな感じで……変わってませんね。』
リュークレインの足元でお座りをしている白狼だった。
4人が召喚されてから1ヶ月。この日、ルーナは初めてその4人を見に来たのだ。杏子である事は隠して。
杏子が願い出たのは、杏子と言う事を隠して、先ずはルーナとして会って4人の様子を窺ってから、これからの対応を考えたい─と言う事だった。
あの4人が、この世界に来てから変わったのなら良いけど、変わらずなら、杏子として会う必要は無いと思ったからだ。
ーどちらにしても、4人と一緒に歩んで行く事は無いけどー
ルーナは、ジッと聖女達の訓練を見つめていて、時折耳をピクピクとさせている。
「………あの耳!可愛いっ!もふりたいっ!」
「……殿下…………」
そんなルーナを見たカミリアが、傍から見ると表情は一切崩れてはいないが、近くに居るリュークレインにだけ聞こえるような声で呟き、それをリュークレインが窘める。
「レ…リュークレインは良いわよね。もふり放題なんでしょう?それに、魔力の相性が良いなんて……ふふっ。キョウコは可愛らしいんでしょうね?」
「そうですね。可愛らしいですね。どちらの姿でも。」
「惚気られたわ!!リナに聞かせてあげたいわ!!」
「……殿下………。」
と、ルーナの後ろで繰り広げられているやり取りの声は、ルーナの耳には入ってはいない。ルーナは、遠くに居る聖女達の声を拾うのに必死だったのだ。
耳に入って来る会話からして、やっぱり、サヤカの聖女としてのレベルは高いらしく、他の聖女達よりも群を抜いていた。魔女が褒めるとサヤカはにこやかに微笑むが、他の聖女達に向ける眼差しは───杏子に向けるソレと、同じだった。
ー大森彩香は、何一つ…変わってないんだー
と、ルーナはため息を吐いた。
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