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白と黒

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❋新作になります❋



今日はいいお天気なので、庭で白狼ルーナになって日向ぼっこを堪能しています。
白狼ルーナになると、どうしても本能が優先されてしまうようで、眠たくなると、それに逆らう事なく──ガッツリ寝てしまいます。






ーん?ー

何となく…背中が…くすぐったい??

レインさんや使用人達が、寝ているルーナわたしを撫でてくる事がよくあるけど、その感覚とは……違う。『何だろう?』と、目を開けると

『あ、起きたか?』
『──っ!?』

私の目の前に、真っ黒な毛並みの綺麗な狼が居た。見た目は毛の長い犬だけど、私も一応狼だからか、同じ狼だろう─と言う事が何となく分かる。

『狼?何で…こんな所に?』

コテン─と首を傾げる。

『仲間の匂いがすると思って来てみたら、お前がここに寝ていたんだ。お前…ここに捕まっているのか?』

『捕まってる訳じゃないです。えっと………飼われてる?みたいな?』

公爵家ここの嫡男の嫁だけどねー

なんて事は言えない。

『飼われてる?お前みたいに、相当な魔力を持った狼が…人間に?』

目の前の黒狼が、驚いたように目を大きくした。
何とも可愛らしいもふもふである。





この黒狼“アーテル”は、狼の群のリーダーなんだそうだ。普段は山の奥で過ごしているそうだけど、子狼が迷子になった─とかで、その子狼を探しにやって来たが、その子狼とは違う狼の匂いに気付き、ここにやって来たそうだ。

『意思に反して捕らわれていないのなら、大丈夫だと思うが…』

『はい、それは大丈夫です。私は、ここで…ここに居て幸せですから。取り敢えず…気に掛けてもらって、ありがとうございます。』

そこは素直にお礼を言っておく。きっと、無理矢理捕らわれていたりしていないか─と、心配してくれたんだろう。“飼われ狼”なんて、滅多に居ないだろうしね。 

『もし、辛くなったりしたら、あの山奥に居るから、いつでも訪ねて来ると良い。』

『はい。ありがとうございます!』

『それじゃあ、俺は子狼を探しに行くから。』

と言うアーテルに、『あ、私も一緒に探しますよ』と言って、私も一緒に探す為に立ち上がった。









軽い気持ちで手伝った“子狼探し”は……大変だった。
何でも、白狼も珍しいが、黒狼も珍しいらしく、その白黒がペアで歩いている─と言う事で………

「待ちやがれ!」

『『はい!待ちます!って、誰が待つかー!!』』

と、アーテルとハモるようにして叫びながら、逃げまくっている。“何から?”と言うと“密猟者”から。

私だけなら、加護があるから逃げなくても何とかなるかもしれないけど、アーテルは違う。アーテルは捕まったら最後。良くて“飼われる”。最悪は──“毛皮”だ。
私と居た事で、アーテルがそんな事になったとしたら……私は私を赦せない。かと言って、白狼のくせに大それた攻撃ができる筈もなく──ひたすら逃げるだけしかできないのだ。

ーどうする?どうしたら良い??ー

しかも、段々体が重くなってきた。

『はっはっ────』

ー駄目だ……走り続けて…息苦しくなって来たー

流石野生のアーテル。彼は全く息は乱れていない。その逆で、私は純粋たる温室ぬくぬく育ちの狼だ。そんな体力がある訳がない。

『──っアーテル!わた─しのこと……良いからっ…1人で……逃げて!』

『何を言ってる!?ルーナ!!』

『キャンッ────』
「捕まえた!!」

私なら大丈夫─と言おうとしたところで、私は首根っこを掴み上げられた。

「『ルーナ!!!』」
『え!?』

掴み上げられ、どうする!?と焦る間もなく、掴み上げられた手が離れ、今度は背中側から落下する。

『えっ!!??』

背中に受けるであろう衝撃を覚悟していると、フワリ─と、誰かに受け止められた。

「ルーナ、大丈夫か!?」
『……レインさん??』

私を受け止めてくれたのは、レインさんだった。

「ルーナ、大丈夫?」
『アシーナさん!』

そして、そこには何故か、東の森の魔女─アシーナさんも居て、私達を追っていた密猟者達を魔法で縛り上げ──拘束しているところだった。







“密猟者がこの国に入り込んでいる”

と言う情報あり、東の森と南の森で被害があり、東の魔女アシーナさん南の魔女シュゼリアさんが密猟者を捜索中に、王都の外れで白黒の獣が逃げ回っていると情報が入り、そこでたまたまルーナを探していたリュークレインと遭遇し、今に至る──と。

そして、今、私はレインさんに抱きかかえられたまま背中を撫でられている。

ー気持ち良いし、安心するなぁー

と、鼻先をレインさんの頬にスリスリと擦り付ける。

『ははっ。ルーナは、本当に幸せなんだな。』
『あ!アーテル!大丈夫だった?』
『あぁ、俺は大丈夫だ。ルーナも大丈夫か?』
『うん!私も大丈夫!』

「えっと…ルーナは、その黒狼とお話ができるの?」

どうやら、アシーナさんとレインさんには、アーテルが話している事は分からないようだ。その為、何故黒狼のアーテルがここに居るのか説明すると、「なら、私が魔法で子狼を探してあげるわ」と、アシーナさんは密猟者を治安部隊に引き渡した後、アーテルと共に子狼を探しに行く事になった。


『それじゃあ、ルーナ、元気でな。何かなくても、いつでも遊びに来てくれ。』
『ありがとう。アーテルも元気でね』

チュッ

ーえ?ー

アーテルは、自身の鼻で私の鼻にキス?をしてから、アシーナさんの転移魔法で転移した。










ーその日の夜の事ですか?訊きたいですか?ー

いや─訊かなくても分かりますよね?想像できますよね?ええ!はい!その通りですとも!!


一つ、誰にも何も告げず黙って邸を抜け出した事。

二つ、自ら危険に首を突っ込み、密猟者に捕まった事。

三つ、アーテルオスにキスをされた事。


笑顔で指折り罪状を言い渡され、拒否権も黙秘権も無く、杏子として一緒にお風呂に入らされ、これでもか!と言う程にに体を洗われて、グッタリした杏子わたしを、嬉々として寝室へと抱き運び──更に私を攻め立てたのだった。



ーもう、二度と黙って外出なんてしない!ー

薄れゆく意識の中で、私は呟いた。








*リュークレイン視点*


仕事から帰って来ると、「キョウコ様が何処にも居ないんです!」と、キョウコ付きの侍女が半泣き状態でやって来た。白狼姿で、昼寝をしていた筈が、気が付けば居なくなっていた─と。丁度、この国に密猟者が入り込んだと言う情報を耳にしたばかりだった。

「キョウコ!」

と、俺はそのまま駆け出した。



“白黒の獣が追い掛け回されている”

その情報はすぐに耳に入った。“黒”は分からないが、“白”は白狼ルーナである可能性が高いと思い、その獣が走り去って行ったと言う方へと更に駆けて行くと、アシーナ叔母上と遭遇し、そのまま一緒に行動する事にした。


すると、やっぱり、追われていた獣は白狼ルーナだった。ルーナを掴み上げていた密猟者の腕を叩きつけて、落下していくルーナを抱き留めた。





叔母上達と別れた後、ルーナと共にアリスタ邸へと帰り、夕食を済ませた後、ゆっくりじっくりと───キョウコを攻め立てた。
喩え狼の姿で、が狼同士の挨拶に過ぎないモノだったとしても、目の前でキスをされたのだ。その感覚、感触をキョウコから消し去らなければ気が済まない。



「キョウコ」

と呼べば

「──レイン」

と、トロン─とした黒色の瞳が俺を見つめている。
俺だけが知っている瞳だ。その瞳を見て安心する気持ちと共に、もっと─と求めてしまう気持ちが湧き上がり、俺はその欲のままに、更にキョウコを追い立てた。






『リュークレイン、少しは手加減なさい。』
「───すみません。」
『まぁ……キョウコ自身が本気で嫌がってる訳じゃないから大丈夫よ。』

キョウコが気を失うようにして眠ってしまった後、キョウコの体とベッドを魔法で整え、抱きしめて寝よう─としたところへ、ウンディーネ様とシルフィード様が現れた。

どうして現れたのか─は、愚問だろう。

『キョウコに、怪我はないわね?』

「ありません。寧ろ、仲間?友達?ができたみたいだ─と、喜んでましたよ。」

『そう。なら良いわ。』

と、ウンディーネ様はニッコリ微笑む。

『でもねぇ……私達精霊の遣いを追いかけ回しておいて……何も無しでは……気が済まないのよね。しかも、今回の事は、珍しく地の精霊ノームも怒ってるのよ。』

ふふっ─と柔らかく笑っているウンディーネ様だが、目は全く笑っていない。

“地の精霊─ノーム様”

滅多に姿を現したり人間ひととは接触しないらしいが、白狼ルーナはノーム様の大のお気に入りなんだそうだ。

「───も取り調べをしなければいけないので……1週間…3日程、日にちをいただけますか?」

『ふふっ。話が早くて助かるわ。3日なら……サラマンダーもしてくれると思うわ。』

ー火の精霊サラマンダー様も怒ってると言う事か?ー

『それじゃあ、3日後、あの馬鹿達をに行くわね。』

と、ウンディーネ様とシルフィード様は、寝ているキョウコの頭を優しく撫でた後、そこから姿を消した。


4大精霊を怒らせた密猟者達に未来は無いだろう。

「俺の嫁が……凄過ぎやしないか?」

ベッドに入り、改めてキョウコの寝顔を見つめる。

「はぁ…やっぱり可愛い。可愛いしかないのに…凄過ぎるとか…………」

キョウコを見ても白狼ルーナを見ても“可愛い”しか出て来ない俺は、それ以上の事は考えないようにして、キョウコをそっと抱き寄せて眠りに就いた。






それから3日後。地下牢から忽然と姿を消した密猟者達だったが、彼らを探す者は誰1人も居らず、彼らがどうなったのか──誰も知る事はなかった。






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みんなの感想(107件)

penpen
2023.04.15 penpen

( ⊙ω⊙)

(つω⊂)ゴシゴシツカゴシ

(; ⊙ω⊙) ……

(つω⊂)ゴシゴシツカゴシ

(;⊙ω⊙)えぇ…!?
更新来た〜*॰ॱ‹‹\(*´ω`* )/››‹‹\(  *)/››‹‹\( *´ω`*)/››*.+゜

みん
2023.04.16 みん

penpen様

ありがとうございます。

今、“置き場”に投稿した話を本編に移動したりと整理してまして、その時に新作も投稿させてもらっています。他作品も、移動した際に、新作を投稿する予定です。
( *´꒳`*)੭⁾⁾

解除
芹香
2023.03.26 芹香
ネタバレ含む
みん
2023.03.26 みん

芹香様

ありがとうございます。

モブシリーズの本編は、閑話が多いので、余計に長くなってしまってます。すみません!
(。 >﹏<。)

読み飛ばし可能な話はお知らせしてるので、そこは読み飛ばしてもらっても大丈夫です(笑)!


陽真は、他者からは空気のような存在扱いです。会話をしたりもするけど、特に誰も陽真を気にしていない、居ても居なくても分からない。そんな感じなので、恋人どころか、友人もできない人生─と言う感じです。
....〆(・ω・。)

誤字報告、ありがとうございます!
(。>ㅅ<。)💦

解除
penpen
2022.10.31 penpen
ネタバレ含む
みん
2022.10.31 みん

penpen様

ありがとうございます。

私の作品の、ヒーローのあるあるですね(笑)。
(。*>艸<)笑♡*

解除
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