初恋の還る路

みん

文字の大きさ
34 / 105
第一章

閑話ーエルライン視点ー

しおりを挟む
今日は、私の社交デビューの日。
この日をどれだけ待ちわびただろう?
デビュタントとして夜会に参加する事も嬉しいが、お義姉様と一緒に参加できると言う事が、とても楽しみだった。

私の母が、ライラ様の後妻としてレイナイト侯爵家に迎え入れられたのは、私が3歳の時だった。お義姉様に初めて会った時の事は、幼いながらもハッキリ覚えている。


「今日から、お前達の義母になるキャスリーンと、義妹になるエルラインだ。2人とも、挨拶をしなさい。」

父であるレイナイト侯爵が言うと、先ずは義兄であるコーライル様が挨拶をする。

「…初め…まして。コーライルです。」

お義兄様は、ショックを受けたような真っ青の顔をしながら挨拶をした。
その横で今にでも泣きそうに下を向いていたお義姉様だったが、次に顔を上げた時にはそんな事をおくびにも出さず

「ミシュエルリーナです。よろしくお願いしますわ。」

と、フワリと微笑みながら挨拶をしてくれた。

その微笑みに目を奪われた。自分と二つしか変わらないのに。貴族令嬢とはこういうものなのかと…。私もこんな令嬢になれるだろうか?いや、なりたい!
それからの私は、お義姉様のような令嬢になる事が目標になった。お義姉様に少しでも近付きたくて、マナーレッスンだって勉強だって頑張った。カリー曰く、お義姉様はマナーもダンスも勉強も完璧なんだとか。勿論、お義兄様も優秀らしい。
それでも、何故かお母様は勿論、お父様も、お義姉様やお義兄様を褒める事は一切無かった。幼い頃はそれが不思議だったが、ある日気が付いた。

ーそうか。お母様にとって、お義姉様とお義兄様は自分にとって邪魔者だったライラ様の子だから、疎んでいるのだ。お父様が2人に対して無関心なのは、何故かは分からないけどー

それでも、私にとってお義姉様は私の憧れの存在だった。

そんな憧れのお義姉の婚約者だった筈のルティウス様が、私の婚約者になったと言われた時は心臓が止まるかと思った。カーンハイル公爵様だけは、お義姉様の事を心配していたが、ルティウス様本人が私を望んでいると。お義姉様より私の方が公爵夫人に相応しいと言う。

ー皆、お義姉様の事をみてないの?ー

不満が口から出そうになった時、お義姉様自身が、私が公爵夫人になるに相応しいと言ってくれた。憧れだったお義姉様に褒められて嬉しくて、泣きそうになるのをグッと我慢した。

それから、お義姉様とお茶をしながらたくさんお話した。

『エルと呼んでも良いかしら?』

もう嬉しくて、私は今日死んでしまうのでは?と思う位だった。




夜会が始まり、お義姉様とお父様の後ろから、ルティウス様にエスコートされながら付いて行く。国王両陛下と王弟殿下に挨拶をし、ルティウス様とファーストダンスを踊った。ルティウス様とのダンスはとても楽しかった。

「喉が渇いてないかい?何か、飲み物を貰って来るから、エルラインはここに居て。」

ルティウス様はそう言って、私から離れて行った。ふと、お義姉様とお父様が居る方を見ると、王弟殿下がお義姉様と話しているのが目に入った。

ーあの…滅多に社交の場に出て来ない王弟殿下。浮いた噂も無い、魔導師長でもある王弟殿下が…お義姉様にー

お義姉様は自覚が全く無いと思うが、とても綺麗な人だ。お義姉様がこの会場に入った瞬間、この場に居た令息どころか令嬢さえ目を奪われていた。お父様が側にいなければ、今頃ダンスの申し込みで令息達が群がっていただろう。お義姉様目当てでこの夜会に参加した令息がたくさんいるーと噂を耳にしていた。お父様が壁になって、行動を起こせる令息は居なかったけど。

色々思い巡らせていると

「はい、エルライン。ジュースを貰って来たよ。」

ルティウス様が優しく微笑みながら、ジュースを手渡してくれる。

「ありがとうございます。」

ジュースを受け取り、ありがたく飲む。

「エルライン、ルティウス殿。少し落ち着いたら、私と一緒に挨拶回りに行こうか。」

ついさっきまでお義姉様と壁際に居た筈のお父様が、私達の側まで来てそう言った。

「レイナイト侯爵様…それは構いませんが、ミシュエルリーナ嬢は良いのですか?」

ルティウス様が少し眉間に皺を寄せてお父様に質問をする。

「あぁ。ミシュエルリーナは帰ったからいいよ。私達3人だけで充分だ。」

「…ミシュエルリーナ嬢は…侯爵家の令嬢だと…自覚が無いのですか?」

お父様の答えに、ルティウス様は更に不快感を表した。ルティウス様は、貴族としての矜持がある。貴族として何の役目も果たそうとしないお義姉様の事を、良くは思っていないのだ。

「…ルティウス様には…お義姉様がどの様に見えているのですか?」

無意識のうちに、私の口から出ていた。

ーしまった!ー

そう思い、急いで謝罪を口にする。

「す…すみません。不躾な事を言いました。」

そっとルティウス様とお父様の顔を伺ったが、ルティウス様は気を悪くしたような雰囲気はなく、思案するような顔をしていた。
お父様に至っては、無表情に無言だった。

3人ともが暫く黙り込む。そして、その沈黙を破ったのはお父様だった。

「まぁ良い…。今から挨拶に行くぞ。」

「「はい。」」

私は、ルティウス様にエスコートされながら、お父様の後に付き、挨拶回りを始めた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

あなたが残した世界で

天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。 八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。 ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。 そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。 「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。 冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。 皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。 小説家になろう、カクヨムでも連載中です。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

巻き込まれた異世界の聖女

みん
恋愛
【初恋の還る路】に出て来るミューの前世ー美幸ーの母のお話ですが、2話目は第三者視点で物語が進みます。 本編を読んでいなくても、この短編だけでも読めるようにはしています。 結婚して子供も生まれ、幸せいっぱいの棚橋美南。 ある日、家族3人で公園に遊びに来ていたら、美南だけがある女子高生の異世界召喚に巻き込まれてしまう。 何故美南が巻き込まれてしまったか、巻き込まれた後どうなったのか─。 タグにある通り悲恋です。美南的には、少し?だけ幸せが訪れます。 相変わらずの、ゆるふわ設定なので、優しい目で読んでもらえると幸いです。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅
恋愛
きみのことなんてしらないよ 関係ないし、興味もないな。 ただ一つ言えるのは 君と僕は一生一緒にいなくちゃならない事だけだ。

処理中です...