巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

文字の大きさ
7 / 203
第一章ー最初の1年ー

嫌がらせ

召還されてから1ヶ月は、聖女としての訓練ではなく、こちらの世界についての勉強にあてられた。世界が変われば常識も変わる。この世界は貴族社会。爵位が上になるほど色んな権限が与えられ義務も生まれる。幸い、この世界には奴隷制度は無い。
日本…地球と違う事と言えば、科学ではなく魔法や魔術で発展しているところと、魔獣なる物が居る事…位だろうか?
縦社会が凄いとか、政略結婚だとかは、3年で還る私達にとっては、あまり関係の無い話だろう。勿論、私には日本にも彼氏なんて居ないけど、3人のお姉さん達には結婚を前提に付き合っている彼氏さんが居る。

ー私は…恋愛はまだ要らないー



身の回りで変わった事もある。
王宮内に、続き部屋で私達4人に一部屋ずつ自室を宛がわれ、各部屋にも侍女が付いた。私は聖女でもないから断ったのだが、王様や宰相様に

『巻き込まれだったとしても、こちらに非がある』

とか言われて、押し切られる形で付けられた。付けられたのだが…気に食わなかったのが、その侍女達の方だった。聖女付きになれると思ったのに、付いたのが聖女ではなく召還に巻き込まれただけのモブだったのだ。最初こそは、それなりに丁寧に対応されていたが、少しずつ嫌がらせをされるようになった。

それは、小さいものだった。朝、用意された服が破れてたり汚れていたり。
ー別に気にならないからそのまま着たー

昼過ぎに出されるお菓子が生焼けとか、無しとか。
ー別に食べなくても平気なので、特に問題無しー

3食の食事のどこかに、味が濃すぎる物、具が無い物、パンが硬いなど。
ー全部がそうじゃないから、まともな物だけ食べたー

これ位の嫌がらせなんて、可愛いものだよね…なんて、呑気に思ってました。





「あれ?最近お姉さん達に会ってないな…」

1ヶ月の間は一緒に勉強をしていたので、毎日4人で会って話もしていた。でも、その1ヶ月が終わると、お姉さん達は聖女の力の訓練が始まる為、毎日は無理かも知れないけど、必ず会いに行くからねと約束してくれた。

筈なんだけど…。
気が付けば、お姉さん達と一月程会っていなかった。勿論、その間にも嫌がらせは続いていた。最近では食事が1日、1食か2食で、お昼過ぎのお菓子は出なくなっていた。

ー毎日部屋に引きこもってるだけだから、お腹は空くけど…何となく堪えられるー

直接的な嫌がらせは無い。多分、私がこちらの言葉を理解していないと思っているのだろう。お姉さん達にもまだ言えてないけど、実は、魔法のお陰でこちらの言葉が理解できるようになったのだ。スマホの翻訳をイメージしてみたら…出来たのだ。全て日本語として聞こえるから、口の動きと言葉が合っていなかったりはするけど、そのお陰で周りが何を言っているのか解るようになった。ただ、私が急に理解したり、話し出したりすると驚かれたり不信がられたりすると思い、理解していない、喋れないフリをしている。
だから、余計に嫌がらせも酷くなっているのかもしれない。

そう言えば、最近外にも出てないなぁ…。
私の居室には、大きなテラスがあり、そこから庭に出る事ができる。

その庭でお姉さん達と、最後にお茶をしたのはいつだったかなぁ?

私に付いている筈の侍女3人は、殆どこの部屋には来ない。今も私は独りだ。

久し振りにテラスへ続く硝子扉を開け、外に出る。裸足のままだけど、気にせず庭まで足を伸ばした。

そこには、色々な花が植えてある。日本にあるのと同じ様で少しずつ違う花。たくさん植えてあるのは、薔薇に似た花だった。

ふと、花壇の端に目を向けると…

「かすみ草?」

大輪の薔薇の様な花の陰に隠れるように、かすみ草がひっそりと咲いていた。私の好きな花だ。大輪の花に隠れて目立たない小さな花。

「ふふっ。私みたい。」

自嘲めいた笑いが溢れる。

お姉さん達、ひょっとして…ゲームの流れに乗り出したとか…無いよね?こっちで誰かを好きになってるとか…無いよね?
不安が過る。この1ヶ月、何も考えないようにした。何故お姉さん達に会えないのか。考えるのが怖くて、魔法を使えるようにと色々と自分なりに頑張った。お陰で色んな魔法が使えるようになった。
お姉さん達にも…見てもらいたいのに…

かすみ草の一枝をそっと摘み取り、目の前で眺める。

「裸足で何をしている?」

ビクッと自分の肩が震える。

ー何故…私の部屋の庭こんな所に男の人が!?ー

急に後ろから声を掛けられて驚くが、更に、その声が男性のもので…更に驚く。怖くて振り向く事もできない。


「…侍女も付けずに…あの噂は本当なのか?」

その男の人は、ぼそぼそとなにかを呟いている。

ー噂?それは分からないけど、侍女も付けずにと言われても、ここ最近まともに会ってないしー

「聖女様達に言われて来てみたが…」

お姉さん達に?その言葉につられて、後ろを振り返る。

「っ!?」

そこに居たのは、以前、ミヤさんに教えてもらった攻略対象者の1人、王太子殿下の専属近衛騎士のエディオル=カルザイン様だった。
感想 152

あなたにおすすめの小説

【完結】ねぇ、それ、誰の話?

春風由実
恋愛
子爵家の三男であるアシェル・イーガンは幼い頃から美しい子どもとして有名だった。 その美貌により周囲の大人たちからは、誰からも愛されて育つ幸福な子どもとして見られてきたが、その実態は真逆。 美しいが故に父親に利用され。 美しいが故に母親から厭われて。 美しいが故に二人の兄から虐げられた。 誰も知らない苦悩を抱えるアシェルは、家族への期待をやめて、早く家を出たいと望んでいたが。 それが叶う日は、突然にやって来た。 ウォーラー侯爵とその令嬢ソフィアが、アシェルを迎えに現れたのだ。 それは家に居場所のないアシェルの、ちょっとした思い付きから始まった行いが結んだ縁だった。 こうして王都を離れ侯爵領でのびのびと健やかに成長していったアシェルは、自分が美しいことも忘れていたくらいだったから、自身の美貌の余韻が王都の社交界にて壮大な物語を創生していたことに気付けなかった。 仕方なく嫌々ながら戻ってきた王都にて、大事な人を傷付けられて。 アシェルは物語を終わらせるとともに、すっかり忘れ去っていた家族たちとも向き合うことにした。 そして王都に新しい物語が創生する。それは真実に則った愛の物語──。 ※2026.1.19 おかげさまで本編完結いたしました。ありがとうございます♡

いつも隣にいる

はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。