巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

文字の大きさ
26 / 203
第二章ー浄化の旅と帰還ー

浄化終了

*本日、2話目の投稿です*










フェンリルを拘束した日は、邸内はフェンリルの扱いや事後処理等で、騎士様達が慌ただしく行き来していた。
私も、あれから何とか持ち直し、今はパルヴァン様の様子を診に来ている。

「薬師殿、今入っても大丈夫かな?」

ドアの外から、シルヴィア様が声を掛けてきた。

「シルヴィア様、どうぞ入って下さい。」



シルヴィア様は部屋に入って来ると、ベッドで寝ているパルヴァン様の頬を軽く撫でた後私を振り返った。

「薬師殿、グレンの事…本当にありがとう。もう…覚悟もしていたし、駄目だと思ったけど…やっぱり、生きていてくれるのは…嬉しい。本当に、ありがとう。」

「いえ…を持っていただけで、後は、パルヴァン様本人の生きたいと言う意思のお陰だったと思いますよ?」

シルヴィア様は暫くの間、私を見据えた後

「ふっ…そう言う事に…しておこう。取り敢えず…ありがとう。」

シルヴィア様は、花が綻ぶ様に笑った。









「ハル!大丈夫だった!?」

その日、お姉さん達が穢れを浄化し終え帰って来たのは日が暮れてからだった。私もパルヴァン様の治療があったので、邸に居る人達が寝静まった頃、こっそりとお姉さん達の部屋へとやって来たのだ。

「はい。流石にフェンリルと対面した時は、もう駄目かもと思ったけど…カルザイン様とダルシニアン様に助けてもらいました。」

「ダルシニアン様から話は聞いてたけど…本当に、あの2人が間に合って良かった!」

そう言って、フジさんにギュウギュウと抱き締められました。

「お姉さん達も…無事で良かった…です…」

私も、泣きそうになるのを誤魔化すように、ギュウッとフジさんにしがみついた。







「ハルがくれた、このブレスレットのお陰なのよ」

なんでも、フェンリルが現れた瞬間氷魔法の攻撃を受けたそうだが、ブレスレットに掛けていた“護り”の魔法が発動してお姉さん達は無事だったらしい。その後も、フェンリルと対峙している間は、ずっと“守り”の魔法が展開されたままだったそうだ。

そう言えば…

『あぁ…聖女様達は…大丈夫ですよ。何故か…で護られているみたいですから…。じゃあ、これで。』

と、ダルシニアン様が言ってたなぁ…。と言う事には気付いて無いと思うけど…

「ひょっとして、ダルシニアン様は何か…気付いている感じ…なんですか?」

「どうかな…ハルがとは思ってないと思うけど、あの護りの魔力の強さには驚いていたと思う。」

「まぁ…気付いてるか気付いていないかは分からないけど、フェンリルの事でバタバタしてるから、今すぐ何かあるって事はないと思う。兎に角、あの森の浄化も後少しで終るから、このまま乗り切るしかないわ。早く終わらせて…帰ろう。」

「そうね。ハルも、あまりダルシニアン様には近付かないようにね。あの人…結構鋭いし…魔導師としての腕は…師団長である父親以上かもしれないわ。」

確かに、あのフェンリルに掛けた魔法陣は凄かった。感覚でしか分からないけど、あんな大きな魔法を展開させたのに、息一つ乱していなかった。

「…お姫様抱っこ…」

されたけど…

「お姫様抱っこ!?」

思わず口から出た言葉に、フジさんが食い付いてきた。

「あの…お姫様抱っこって、乙女ゲームのあるあるなんですか?」

「何ソレ!?」

「はい、ソレ詳しく話そうか!?」

ミヤさんとショウさんが更に食い付いて来て、質の良いポーションを飲みなが私の話しに耳を傾けた。








フェンリルを拘束してから二週間。
パルヴァン辺境地に来てから1ヶ月。

完璧ハイスペ聖女3人組はやりました。やりきりました。




「まさか、この森を1ヶ月で浄化し終えるとは…。」

ダルシニアン様の顔が、心なしかひきつっているのは…気のせい…と言う事にしておきましょう。
パルヴァン様も、ようやくベッドの住人から抜け出し、数日もすれば軽い運動を始める事ができそうだ。


そして、今日は、浄化終了と言う事で、パルヴァン邸で宴会をする事になった。





「ハル殿、隣、良いか?」

と言いながら、宴会の途中でパルヴァン様が私の横の椅子に座った。

「パルヴァン様、体調は大丈夫ですか?まだ本調子ではないと思うので、お酒は控え目にお願いしますね。」

「あぁ…分かった。」

ニカッと豪快に笑った後、スッと表情を引き締めて

「本当に、今回の事は礼を言っても言い尽くせないし、返せる恩すら無い。ハル殿達は…元の世界に還るんだろう?もし、還らないなら、どんな事をしてでも恩を返すところなんだが…。」

「ふふっ。そんな、返してもらわなくても良いですよ。私は…パルヴァン様が元気になって、シルヴィア様が笑ってくれるだけで、充分ですから。」

「そうか…ありがとう。」

それから少し、パルヴァン様と話した後、パルヴァン様は騎士様達の所へと戻って行った。
隅っこに陣取っている私は、大勢の人達が楽しそうに飲み食いしているのを眺める。

お姉さん達は、騎士様達に囲まれていた。

ーうん。この構図だけを見れば、乙女ゲームに見えない事も…ないかなぁ?ー

「ふふっ…」

やっとだ。これで、やっと日本に還れるんだ。

フワフワとした気持ちで、私は1人、手にしていたジュースを飲み干した。

感想 152

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成