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第四章ー王都ー
最強グレン
「グレン様から、先触れは来ていますか?」
朝食が済み暫くすると、予定通りにカルザイン様が来たので訊いてみた。
「グレン様からの先触れ?いや…私は何も聞いていないが…。」
ーやっぱりか…グレン様、相当キレてるのかもしれないー
「今朝グレン様から魔術での手紙が来まして…。こっちに向かってるみたいです。」
「は?」
ーはい。男前のキョトン顔、またいただきましたー
「昨夜からの今朝ですよ?あまりの速さで、ちょっと怖いくらいなんですけどね。いや、恐らく、相当キレてると思います。ギデルには勿論の事…王族に対しても…。」
「何故?と訊いても?」
「…グレン様、ルディの事を本当の娘の様に可愛がってるんですよね…。シルヴィア様も…。あー、多分ゼンさんも…ですけど。」
「……」
この3人の名前を言えば、相当ヤバいと分かったのだろう。顔が引き攣っている。
「ルディの所に行く前に、知らせて来ますか?」
「…いや、いい。こちらの落ち度が無かったとは…言えないだろう?穢れが無くなって緩んでるところもあるから、丁度良いのかもしれない。」
ー成る程?なのか?ー
とにかく…王族と騎士達…御愁傷様です。
そして、そのままルディの居る部屋までやって来た。
「カルザイン様、ティモス様、おはようございます。お待ちしておりました。」
昨日の女の医師が、俺達が来るのを待っていた。
ハルの状態はと言うと、特に外傷は無いとの事。ただ、“魔力封じの首輪”による魔力の減少が酷くて、枯渇寸前だったそうだ。昨日居た魔導師が回復魔法を掛け、魔力を少し流してくれたらしい。昨日から一度も目を覚ましてはいないが、今は安定しているようで、後は、ハル自身が目覚めるのを待つだけのようだ。
「そうか…それなら…良かった。」
「「……」」
カルザイン様は…本当に良かったと目を細めて優しく笑った─顔を見て、俺と医師の2人で固まった。
ー無自覚って、恐ろしいなー
「あ、忘れてたけど、フェ…あの犬は、おとなしくしてましたか?」
「あー…はい。とてもお利口でしたよ。早朝に様子をみようとしたダルシニアン様には、威嚇してましたけど、アレは勝手に部屋に入ろうとしたダルシニアン様が悪いと思いますから、自業自得ですね。」
「確かに、それは自業自得ですね。」
「それでは、私は一度下がりますね。もし、何かありましたら、またすぐお呼び下さい。その、あの犬は今もルディさんの側に居ますから、ルディさんは大丈夫だと思います。では、失礼致します。」
「彼女は…魔力持ちだったんだな…」
「そう…ですね。水をよく扱ってましたね。ポーションを作る時に便利だって言ってました。」
「そうか…そんな事も知らなかった。私だけではなく…ランバルトもクレイルもね。」
そうなのか…王城に居る時には隠していたんだろうか?パルヴァンでは、元の世界に還れないと判った後、比較的すぐに魔法を使っていたような気がする。
「召喚されてすぐに行ったステータスの確認の時には、彼女は魔力無しだった。元の世界に還れなくなって、ここでの“時”が進み出してから発現したんだろうか?この世界に…馴染んでいると言う事だと良いが…。」
ー本当に…カルザイン様は、ハルの事を話す時は優しい顔をするよなー
「カルザイン様、これからどうしますか?レオン様は昼から登城すると知らせがありました。それまで、何かする事はありますか?」
「その事だが、今からクレイルとティモス殿と私の3人で、昨日の事について話を詰めようと思っている。」
「分かりました。」
「…彼女の名前は…薬師の“ルディ”…殿だったな?」
「はい。王城、王都に居る間は“ルディ”でお願いします。」
「…分かった…。」
どうしてだろう?名前を呼ぶ時だけは、辛そうな顔をする。そう言えば…カルザイン様の口からハルの名前を聞いた事がないな…??
そんな事を思っているうちにダルシニアン様がやって来て、この部屋で話を詰める事になった。
「うん。昨日の流れはこれで大丈夫だね。あ、どうして貴族ではない2人が王族主催の夜会に入れたのかは、第一騎士団の方で調べるみたいだよ。」
「あー…それ、死ぬ気で調べて下さいって、伝言お願いできますか?」
「え?何で?と言うか、騎士団も顔に泥を塗られたようなものだから、もとよりキッチリすると思うよ?」
「…グレン様とシルヴィア様と…ゼンさんがキレてるので…」
「……分かった…伝えておこう…必ず…」
ダルシニアン様は、顔を引き攣らせながら了承してくれたが…もう一つの爆弾を落とす。
「因みに、グレン様はこちらに向かってます。早ければ明日中に、もしくは明後日の早い時間に…到着すると思います…。」
「エディオル!何故それを朝イチに報告しなかった!?」
ダルシニアン様が顔を真っ青にして叫んだ。
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