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第六章ー帰還ー
サエラさんの独り言?
「サエラさん、あの時、名乗りもしなかった私に、かすみ草を切り取ってくれて、ありがとうございました。それで、その時の組み紐と、お礼に私が作った組み紐をもらってくれますか?」
と言いながら、サエラさんの組み紐と一緒に、私が作った組み紐3本をサエラさんの前に差し出す。
「ハル様。こちらこそ、あのかすみ草を元気にしていただいて、ありがとうございました。それに…その…ハル様を娘の様になどと─すみませんでした。」
『そうですか。そのかすみ草は…図々しくも、私が勝手に自分の娘のように思っていた方と、一緒に植えた思い出のかすみ草なんです。なので、元気になって本当に良かった。』
「そんな!謝らないで下さい!私、サエラさんにそんな風に思ってもらえて嬉しいんです!それに、サエラさんは…いつも私の心を救ってくれて─そんな大好きなサエラさんに“娘の様に思ってた”って言われて、本当に嬉しかったんです。」
「ハル様─。」
サエラさんは優しく微笑むと、組み紐を受け取ってくれた。
「ハル様、その組み紐、ハル様が作ったんですの?」
「はい。組み紐は高校生─私が学生の時に作るのにはまって、よく作っていたので。今回もいっぱい作ってしまって─。ベラトリス様とルナさんも、もらってもらえますか?」
「勿論ですわ!」
「勿論です!!」
ー皆には内緒だけど、この組み紐にも防御の魔法を掛けていますー
「…ハル…ドヤ顔になってるわよ?ふふっ…」
「う゛っ──」
ミヤさんにはバレバレだったようで、耳元でコッソリと突っ込まれた。
時間も忘れて、5人で夕方迄たくさん話をした。
「それじゃあ…そろそろ帰ろうか?」
と、ミヤさんが切り出し、帰りの準備を始めようと席を立つと
「ハル様、少し…よろしいですか?」
と、サエラさんに声を掛けられた。
「はい、何でしょうか?」
「私の勝手な独り言だと思って、聞いていただきたいのですが─。」
「?」
「私も、聖女様やベラトリス様が仰る通り、今回の事に関しては腹を立てております。ですので、まだまだ彼らを安心させたりしなくても良い─と、思っております。」
ーおぅ…サエラさんも怒ってるんですねー
「ですが─エディオル=カルザイン様は…あの時、限られた範囲で、その時に出来る事をされていた─と、私は思っております。そのカルザイン様は今、隣国で“穢れ”と“魔物”や“魔獣”と戦っているのでしょう。私は、心配なのです。ハル様がこの世界に居ないと思っているカルザイン様が、ご自身の命を軽くみていないか─と。」
ーえ?ー
「私は、夫と子供を病気で喪った時、“もう、私もいつ死んでも良い─どうなっても良い─”と思っておりました。そんな時に、王妃陛下から、ベラトリス様付きになって欲しいと…お願いをされました。それから、王妃陛下やベラトリス様の優しさに触れ気持ちを持ち直しました。そして─ハル様に出会い、ハル様を…娘の様に思うようになり、ずっと見守って行きたいと─。“死んでも良い”や“どうなっても良い”と言う思いは、一切なくなったのです。」
「サエラさん…」
「今のカルザイン様は…どの様な心境かは分かりませんが…ようやく想いを遂げられそうになったハル様を喪った─と思っているカルザイン様の事が、私は心配なのです。」
そうだ─。私だって、お父さんとお母さん、おばあちゃんが死んでしまって…あの時、どう思った?
“置いて行かないで─“
“独りは嫌だ─”
「ハル様も、一度元の世界に還られた程に辛い思いをされたと思うので、今すぐにカルザイン様の元に行くのも難しいかもしれませんが、心の整理ができたのならば…ハル様が後悔しないように行動なさいませ。私の独り言は…これで終わりです。」
あれからすぐに、私とミヤさんは、転移魔法でパルヴァン迄帰って来た。そして、ミヤさんにも
「サエラさんの言っていた事…確かに、その可能性はあるなって思った。ハル、ごめん!私、やらかしたエディオルさんしか知らなかったから、そこまで考えが至らなかった。だから、ハルの心の整理がついたら─隣国に行こう?私も─聖女として一緒に行くから。絶対、ハル1人で行っては駄目よ?」
最後にエディオル様を見たのは、1枚の絵のようなシーンだった。
聖女─宮下香─と寄り添うように座り、その足元にレフコースが丸まって寝ていた。
目にした物が全てだとは限らない。噂だってあてにならない。届かなかったけど、エディオル様は、ずっと私に手紙を飛ばしてくれていた。
『ようやく想いを遂げられそうになったハル様を喪った─と思っているカルザイン様の事が、私は心配なのです。』
サエラさんが言った“ようやく”とは…少し意味が分からないけど─。エディオル様がまだ、私に想いを残してくれているなら─違う。私から離れていたとしても、会うべきなんだ─。
私は─
隣国に行く─!
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