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鋼のリス
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❋新作になります❋
俺─シリウス=マーレン─には、14歳年下の可愛い嫁のヴィー─ヴィオラ─が居る。
このヴィーは、シルバーブロンドの髪に水色の瞳で、母親譲りの“小動物よろしく!”な可愛らしい見た目に反し、剣技もそこそこの腕を持っている。
理由は言わずもがな─
“カルザイン”と“パルヴァン”は、ウォーランド王国に於いて、“武”を象徴している家名であり、他国にまでその名を轟かせている。
そして、ヴィーは、そのカルザインと、パルヴァン縁の親を持っているのだ。
父─エディオル=カルザイン
母─ハル
俺の義父でもあるエディオル=カルザイン様は、ウォーランド国王の近衛騎士を務めている。
“氷の騎士”と呼ばれているそうだが、ハルに対しては、いつも蕩けたような笑顔しか向けていない為、身内の間では、“氷の騎士とは何ぞや?”と笑っている程だ。
兎に角、義父母はとても仲が良い。そんな2人から愛情たっぷり育てられたヴィーは、素直で明るい性格で可愛らしい。そんなヴィーは、守ってあげたくなる見た目だが──まさかの魔法使い。剣も扱える魔法使いだった。
この国付きの魔法使い─リュウ殿から、魔法の指導を受けたそうで、「俺よりは劣るが、そこそこの魔法使いだ」と言っていた。
この国トップの魔法使いが言うのだから、ヴィーはやっぱり凄いんだろう。
「ハルは、桁違いだけどな」
と、遠い目をしていたリュウ殿。
ハルは、ヴィーよりも更に“小動物宜しく!”な人である。「ハル様は、パルヴァン唯一のリスですから」と言っていたのは、義母付きの侍女のルナとリディだった。「鋼のリスだけどね」と言ったのは、義兄のセオドア殿だった。
“鋼のリス”とは??
義母が魔法使いとして凄い事は知っているが、何が凄いのか……いまいちよく分からなかった。
******
「ヴィー、シリウス様、おかえりなさい。」
「お母様!」
今日は、久し振りに、ヴィーと一緒にパルヴァン辺境地へとやって来た。
『結婚してから、まともに休みもなかったし、パルヴァンへも帰ってないでしょう?』と、我が国の王太子妃であり、ヴィーと同じウォーランド王国から嫁いで来たサクラ様の計らいで、俺とヴィーは2週間の休みをもらい、結婚してから初めて、パルヴァンへとやって来たのだ。
そこで出迎えてくれたのは、義母───だけではなく、何故か、王城勤めの義父と義兄のセオドア殿も居た。何でも、ヴィーが帰って来ると言う事で、聖女ミヤ様が、義父達にも同じ様に休みをくれたそうだ。
ー義父に、訓練をつけてもらえるだろうか?ー
エディオル=カルザイン様は、俺にとっては騎士として尊敬する1人である。あの、静かに流れるようでいて、全く隙のない剣さばきは、いつも目を惹き付けられる。
ーまた、後でお願いしてみようー
そう思いながら、ヴィーと義母が抱き合って喜んでいるのを眺めていた。
2人が姉妹に見えるのは……気のせいではないだろう。
久し振りの帰省とあって、饗しが──半端なかった。現パルヴァン辺境伯夫妻を筆頭に、パルヴァンの騎士達も総出の夕食─宴会となった。しかも、そこにはお忍びと称して、国王陛下ランバルト様と、聖女ミヤ様と王太子リオン様も居たのだ。
何故お忍びで、王族3人が辺境地へと来れたのか─
「お母様がチートだからね」
と、ヴィーがクスクスと笑っていた。
そんな宴会は夜遅くまで続き、そろそろ日付が変わるか?と言う頃、気が付けば義父母の姿は無く、「私達も今が抜け時ね」と、ヴィーに手を引かれながらその場を抜け出し、「お風呂の用意はできています」とルナに言われ、俺とヴィーは寝泊まりする客室へと案内されたのだった。
「今日はお疲れ様でした。」
「ヴィーも、お疲れ様。」
入浴を済ませ、今はヴィーと2人でベッドに横になって話をしている。
勿論、小さいヴィーは、俺の腕の中にスッポリ収まっている。本当に可愛い。
「ここには1週間泊まる予定だけど、シリウスは何かしたい事とか、行きたい所はある?」
「んー……許可が下りればだが、パルヴァンの森に行きたいかな?ネロも一緒に。」
ヴィーと名を交わしたフェンリルの母親─ネージュが護って来たパルヴァンの森は、ネロにとって故郷のようなものだ。そこで、ネロと一緒に昼寝をするのが好きだったと言っていたヴィー。久し振りに、それをするのもアリだろう。可能であれば、その間に義父と手合わせでもできたらな─と。
「それじゃあ、明日、レオン様に訊いてみますね。」
ふふっ─と、嬉しそうに笑うヴィーは……やっぱり可愛い。ギュッと抱きしめている腕についつい力が入ってしまう。
「うー……シリウス?ちょっと…苦しいかな?」
「あー…すまない!」
素直に謝って力を緩めると、ふふっ─と嬉しそうに笑った後
「やっぱり、シリウスの腕の中は……安心するなぁ」
と言って、今度はヴィーが俺にギュッと抱きついてきた。そんなヴィーはやっぱり可愛いが……正直、勘弁して欲しい─のが本音だ。流石に、ここでは………ヴィーに手を出すのはマズい。喩え既に夫婦であっても、ここでだけは、手を出してはいけない─と、何とか理性を掻き集めて耐えていると、腕の中に収まっているヴィーが、寝息を立てだした。
ー助かったー
とホッとしつつも、これが1週間続くのか─と思うと
ー耐えれるのか?大丈夫か?大丈夫だ!ー
と、自問自答を繰り返した。
翌日、パルヴァンの森への許可はアッサリと下りた。
目立った穢れもなく、最強のフェンリルが居るとなれば、余程の事が無い限り、魔獣も現れないだろう─との事だった。
「ハルも居るからね…」と、レオン様が呟いた気もしたが、気のせいだろう。
『ネロも、ヴィーと一緒に行きたいの!』
と、ネロが嬉しそうに尻尾を振っている。
「じゃあ、シリウスとネロも一緒に行こう!」
と言う事で、3人で森へと向かった。
「あら、ヴィー、シリウス様、おはようございます」
「お母様、お父様、お兄様、おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう」
森には既に、義父母と義兄とネージュ殿が居て、挨拶を交わした後、5人で少し話をしてから、義母とヴィーは“もふもふタイム”をすると言って、ネージュ殿の大樹の元へと行き、俺は義父に手合わせをしてもらえる事になった。
やはり、義父の剣さばきは相変わらず綺麗で無駄が全く無かった。年齢を重ねる毎に、キレも増しているような気もする。
そうして暫くしてから、そろそろ邸に戻ろうか─と言う時、ヴィー達が居る近くにワームが現れた。
「ヴィー!義母上!」
と、焦り叫ぶ俺のは俺だけで、何故か、義父に至っては苦笑している。
喩え、ヴィーが剣を扱える魔法使いであっても、1人では対処できないだろう!そう思い、駆け出した時
「戒めの拘束!」と義母が呟くと、そこから薔薇の蔦の様なモノが伸び、ワームを一気に絡め取り拘束したかと思うと、そのワームの体が霧散した。
「─────え?」
何が起こったのか─全く分からなかった。
「流石はハルだな。」
「お母様は相変わらずね。」
「母上のソレ、また、レベルが上がってませんか?」
義父、ヴィー、義兄にとっては、どうやらいつも通りな事らしい。
ーえ?あの小動物宜しく!な義母が?ー
「シリウスは、初めてだったか?アレは、拘束したモノの魔力を一気に奪い取るモノなんだ。本人的には攻撃ではないらしいが……魔物や魔獣にとっては、最強の攻撃になってるんだ。」
「…………」
そりゃそうだ。魔力で生きているモノにとっては、これ以上無い攻撃だろう。
ソレを…あの義母が………
“鋼のリス”
俺は今日初めて、その意味を知ったのだった。
『ふむ。これは、主のあるあるだな』
『あるあるなの!』
と、ネージュは得意気に、ネロは嬉しそうに笑った。
❋やっぱり、オチはハルにしました(笑)❋
俺─シリウス=マーレン─には、14歳年下の可愛い嫁のヴィー─ヴィオラ─が居る。
このヴィーは、シルバーブロンドの髪に水色の瞳で、母親譲りの“小動物よろしく!”な可愛らしい見た目に反し、剣技もそこそこの腕を持っている。
理由は言わずもがな─
“カルザイン”と“パルヴァン”は、ウォーランド王国に於いて、“武”を象徴している家名であり、他国にまでその名を轟かせている。
そして、ヴィーは、そのカルザインと、パルヴァン縁の親を持っているのだ。
父─エディオル=カルザイン
母─ハル
俺の義父でもあるエディオル=カルザイン様は、ウォーランド国王の近衛騎士を務めている。
“氷の騎士”と呼ばれているそうだが、ハルに対しては、いつも蕩けたような笑顔しか向けていない為、身内の間では、“氷の騎士とは何ぞや?”と笑っている程だ。
兎に角、義父母はとても仲が良い。そんな2人から愛情たっぷり育てられたヴィーは、素直で明るい性格で可愛らしい。そんなヴィーは、守ってあげたくなる見た目だが──まさかの魔法使い。剣も扱える魔法使いだった。
この国付きの魔法使い─リュウ殿から、魔法の指導を受けたそうで、「俺よりは劣るが、そこそこの魔法使いだ」と言っていた。
この国トップの魔法使いが言うのだから、ヴィーはやっぱり凄いんだろう。
「ハルは、桁違いだけどな」
と、遠い目をしていたリュウ殿。
ハルは、ヴィーよりも更に“小動物宜しく!”な人である。「ハル様は、パルヴァン唯一のリスですから」と言っていたのは、義母付きの侍女のルナとリディだった。「鋼のリスだけどね」と言ったのは、義兄のセオドア殿だった。
“鋼のリス”とは??
義母が魔法使いとして凄い事は知っているが、何が凄いのか……いまいちよく分からなかった。
******
「ヴィー、シリウス様、おかえりなさい。」
「お母様!」
今日は、久し振りに、ヴィーと一緒にパルヴァン辺境地へとやって来た。
『結婚してから、まともに休みもなかったし、パルヴァンへも帰ってないでしょう?』と、我が国の王太子妃であり、ヴィーと同じウォーランド王国から嫁いで来たサクラ様の計らいで、俺とヴィーは2週間の休みをもらい、結婚してから初めて、パルヴァンへとやって来たのだ。
そこで出迎えてくれたのは、義母───だけではなく、何故か、王城勤めの義父と義兄のセオドア殿も居た。何でも、ヴィーが帰って来ると言う事で、聖女ミヤ様が、義父達にも同じ様に休みをくれたそうだ。
ー義父に、訓練をつけてもらえるだろうか?ー
エディオル=カルザイン様は、俺にとっては騎士として尊敬する1人である。あの、静かに流れるようでいて、全く隙のない剣さばきは、いつも目を惹き付けられる。
ーまた、後でお願いしてみようー
そう思いながら、ヴィーと義母が抱き合って喜んでいるのを眺めていた。
2人が姉妹に見えるのは……気のせいではないだろう。
久し振りの帰省とあって、饗しが──半端なかった。現パルヴァン辺境伯夫妻を筆頭に、パルヴァンの騎士達も総出の夕食─宴会となった。しかも、そこにはお忍びと称して、国王陛下ランバルト様と、聖女ミヤ様と王太子リオン様も居たのだ。
何故お忍びで、王族3人が辺境地へと来れたのか─
「お母様がチートだからね」
と、ヴィーがクスクスと笑っていた。
そんな宴会は夜遅くまで続き、そろそろ日付が変わるか?と言う頃、気が付けば義父母の姿は無く、「私達も今が抜け時ね」と、ヴィーに手を引かれながらその場を抜け出し、「お風呂の用意はできています」とルナに言われ、俺とヴィーは寝泊まりする客室へと案内されたのだった。
「今日はお疲れ様でした。」
「ヴィーも、お疲れ様。」
入浴を済ませ、今はヴィーと2人でベッドに横になって話をしている。
勿論、小さいヴィーは、俺の腕の中にスッポリ収まっている。本当に可愛い。
「ここには1週間泊まる予定だけど、シリウスは何かしたい事とか、行きたい所はある?」
「んー……許可が下りればだが、パルヴァンの森に行きたいかな?ネロも一緒に。」
ヴィーと名を交わしたフェンリルの母親─ネージュが護って来たパルヴァンの森は、ネロにとって故郷のようなものだ。そこで、ネロと一緒に昼寝をするのが好きだったと言っていたヴィー。久し振りに、それをするのもアリだろう。可能であれば、その間に義父と手合わせでもできたらな─と。
「それじゃあ、明日、レオン様に訊いてみますね。」
ふふっ─と、嬉しそうに笑うヴィーは……やっぱり可愛い。ギュッと抱きしめている腕についつい力が入ってしまう。
「うー……シリウス?ちょっと…苦しいかな?」
「あー…すまない!」
素直に謝って力を緩めると、ふふっ─と嬉しそうに笑った後
「やっぱり、シリウスの腕の中は……安心するなぁ」
と言って、今度はヴィーが俺にギュッと抱きついてきた。そんなヴィーはやっぱり可愛いが……正直、勘弁して欲しい─のが本音だ。流石に、ここでは………ヴィーに手を出すのはマズい。喩え既に夫婦であっても、ここでだけは、手を出してはいけない─と、何とか理性を掻き集めて耐えていると、腕の中に収まっているヴィーが、寝息を立てだした。
ー助かったー
とホッとしつつも、これが1週間続くのか─と思うと
ー耐えれるのか?大丈夫か?大丈夫だ!ー
と、自問自答を繰り返した。
翌日、パルヴァンの森への許可はアッサリと下りた。
目立った穢れもなく、最強のフェンリルが居るとなれば、余程の事が無い限り、魔獣も現れないだろう─との事だった。
「ハルも居るからね…」と、レオン様が呟いた気もしたが、気のせいだろう。
『ネロも、ヴィーと一緒に行きたいの!』
と、ネロが嬉しそうに尻尾を振っている。
「じゃあ、シリウスとネロも一緒に行こう!」
と言う事で、3人で森へと向かった。
「あら、ヴィー、シリウス様、おはようございます」
「お母様、お父様、お兄様、おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう」
森には既に、義父母と義兄とネージュ殿が居て、挨拶を交わした後、5人で少し話をしてから、義母とヴィーは“もふもふタイム”をすると言って、ネージュ殿の大樹の元へと行き、俺は義父に手合わせをしてもらえる事になった。
やはり、義父の剣さばきは相変わらず綺麗で無駄が全く無かった。年齢を重ねる毎に、キレも増しているような気もする。
そうして暫くしてから、そろそろ邸に戻ろうか─と言う時、ヴィー達が居る近くにワームが現れた。
「ヴィー!義母上!」
と、焦り叫ぶ俺のは俺だけで、何故か、義父に至っては苦笑している。
喩え、ヴィーが剣を扱える魔法使いであっても、1人では対処できないだろう!そう思い、駆け出した時
「戒めの拘束!」と義母が呟くと、そこから薔薇の蔦の様なモノが伸び、ワームを一気に絡め取り拘束したかと思うと、そのワームの体が霧散した。
「─────え?」
何が起こったのか─全く分からなかった。
「流石はハルだな。」
「お母様は相変わらずね。」
「母上のソレ、また、レベルが上がってませんか?」
義父、ヴィー、義兄にとっては、どうやらいつも通りな事らしい。
ーえ?あの小動物宜しく!な義母が?ー
「シリウスは、初めてだったか?アレは、拘束したモノの魔力を一気に奪い取るモノなんだ。本人的には攻撃ではないらしいが……魔物や魔獣にとっては、最強の攻撃になってるんだ。」
「…………」
そりゃそうだ。魔力で生きているモノにとっては、これ以上無い攻撃だろう。
ソレを…あの義母が………
“鋼のリス”
俺は今日初めて、その意味を知ったのだった。
『ふむ。これは、主のあるあるだな』
『あるあるなの!』
と、ネージュは得意気に、ネロは嬉しそうに笑った。
❋やっぱり、オチはハルにしました(笑)❋
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みんなの感想(4件)
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towaka様
ありがとうございます。
一応、このお話には“溺愛”タグは付けていないので、シリウスは我慢しました(笑)
(。 >艸<)
孫……そうですね。きっと、子リス集団─姉妹に見えそうですね(笑)
(,,>᎑<,,)♡
towaka様
ありがとうございます。
本日中に、もう1話投稿します。
そちらも読んでいただければ幸いです。
ꕤ.(⑉˙ᗜ˙⑉).ꕤ
みきざと瀬璃様
ありがとうございます。
子達世代の話と言いながら、ハルとエディオルもいっぱい出してしまってます(笑)
(*ノ>ᴗ<)テヘッ