贄の令嬢はループする

みん

文字の大きさ
58 / 84
❋新しい未来へ❋

58 仕返し?

*フィリベール視点*


「悪いのは、イーリャの実を使用したジュリエンヌ様であって、フィルじゃないから、謝らないで下さい。それに……こうやって抱きしめてくれたら、すごく安心します」
「それなら、いつだって…いくらでも抱きしめるから」
「………ありがとう」



暫くすると、イヴは俺の腕の中で寝てしまった。

四度も噛み殺したのは俺なのに、俺を責めるどころか安心する─と言うイヴ。
イヴが安心すると言うなら、いつだっていくらだって抱きしめる。抱きしめて、閉じ込めて───は、我慢だ。人間は、囲われて閉じ込められるのは嫌がるそうだ。

『囲う?閉じ込める?やだ、何?監禁!?』

竜の番への愛情は重い─と言う話になった時、その場に居た唯一の人間のイロハに……ドンびかれた…。

『言い方は悪いかもしれないけど…独りで頑張り続けながら四度も噛み殺されて、ようやく自由を得てデッドエンドから逃れたリーナを、今度は……番と言う名の鎖でリーナの自由を奪うの?』

『自分を四度も噛み殺した相手を受け入れて番になったんだよ?リーナがフィリベールを裏切る事はないと思う。なら、リーナを自由にさせてあげるのが……本当の愛情じゃない?』

竜族や獣人族にとっての番が、どれほど大切な存在なのか…人間ひと族には、本当の意味で理解する事は無理だろう。だから、イロハは簡単にそんな事を言えるんだ──でも、イロハの言っている事もまた……間違ってはいない。


イヴは、過去の四度、成人する前に俺に噛み殺されている。それ迄も、ハロルド馬鹿王子のせいで自由がない生活を送っていた。
今世でようやく自由と未来を手に入れたイヴ。
自国民でも難しい、王立学園の薬学部に留学生としてやって来た。毎日大変そうだが、必死に頑張っているのを、いつも間近で見て知っている。

番になってからも、俺や周りに甘える事がない。もっと…甘えてくれたら─ドロドロに甘やかして、囲って閉じ込めて──それはきっと、イヴは望んでいない。

俺の腕の中で安心したように、スヤスヤと寝ているイヴ。イヴが俺に求めているのは──“安心”なんだろう。

少し力を入れるだけで“死んでしまうのでは?”と思う程小さくて可愛い存在。

ー過去4回、死んでしまったが……ー

五度目でようやく手にした温もり。俺も、この温もりを感じる事でようやく安心するのだ。この温もりを確認しなければ……最強の黒龍と言われているが、怖くて怖くて仕方無いのだ。自分の為だけに、イヴを閉じ込めて安心する事は簡単だ。でも、それだと、きっとイヴは…本当の意味での幸せには…ならないだろう。

俺は、笑っているイヴは勿論の事、困った顔のイヴも怒った顔のイヴも泣いている顔のイヴも好きだ。
自由に動き回るイヴが───好きだ。
だから、俺は、イヴを─と、縛り付ける事はしない。俺が、イヴと一緒に動けば良いだけなのだ。

だから、イヴ……お願いだから───

「俺の気持ちと同じぐらい、俺の事…好きになって……」












*エヴェリーナ視点*


「おかえりな───」
「ただいま!」
「ゔっ」

今日もまた、執務を終えて帰って来たフィルに、抱きしめられている─からの……「ひゃあっ!」お姫様抱っこだ。

「フィル!?」
「ちょっとイヴが足りないから、抱っこして移動する」
「はい?ちょっと意味が分からないから下ろし──」
「意味が分からなくても良いから、俺の精神安定の為におとなしく抱っこされてて欲しい」

ー久し振りのわんこ降臨かー

「わ…分かりました………」

フィルは詳しくは言わないけど、きっと、あの2人に関して何かあったんだろう。春休暇も後10日程で終わる。なら…そろそろ、あの2人が何かしてくるだろう─と予想はしていたけど。

「えっと…大丈夫?」
「イヴとくっついていると大丈夫だ。ちゃんと、イヴにも説明するから」
「分かった」

横抱きにされると、普段見上げなければならないフィルの顔が、同じ高さか、少し私が見下ろすぐらいの位置にある。

初めて“フィリベール=スコルッシュ”として会った時よりも長くなった黒髪は、後ろで緩く一つに括られている。見る角度によって濃藍色にも黒色にも見える瞳は、いつも綺麗だなと思う。

「…………」
「ん?どうかした?イ───」

いつもの仕返しに──と、フィルの頬に不意打ちにキスを─するつもりが、フィルが顔ごと私の方へと向けて来たせいで、頬ではなく……唇にキスをしてしまった。

「「………」」

ピタッ─と、歩みも止まってしまったフィル。

「えっと……あのね?いつもの仕返し?にね、頬にでもキスをして驚かそうかな?なんて思ってただけだったんだけどね?フィルが…こっちを向くから……唇に………だから……えっと……怒ってる??」

フィルが無表情で無反応だ。

「あの…ごめ───んっ!?」

横抱きされたまま、器用?に押さえ付けるように私の頭に手を回して、フィルからキスをされた。



ー今迄のキスは何だったんだろう?ー



とイマイチ働かない頭で思考する。

まともに息ができないようなキスになり、酸素を求めて口を開けば更に追い詰められて……口を離そうにも、頭をガッツリ押さえられていて離せず、そのまま更に追い詰められて……。

「………し……ぬ…………」

何とか言えた“死ぬ”で、ようやく止まったフィル。そのままグッタリとフィルにもたれかかり「バカフィル……フィルのバカ…」と訴えれば「──ゔっ…破壊力……くっそ………」とグッと眉間に皺を寄せて唸った後

「イヴが可愛いのが悪い」
「何でそうなるの!?」

何故か、私が怒られた。
仕返ししようとした私が馬鹿だったのかもしれない。

もう、仕返しなんて……しない───


そこで、私の意識が途切れた。








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*´ ³ `)人(*´˘`*)人(ˊᗜˋ*)



感想 76

あなたにおすすめの小説

竜人王の伴侶

朧霧
恋愛
竜の血を継ぐ国王の物語 国王アルフレッドが伴侶に出会い主人公男性目線で話が進みます 作者独自の世界観ですのでご都合主義です 過去に作成したものを誤字などをチェックして投稿いたしますので不定期更新となります(誤字、脱字はできるだけ注意いたしますがご容赦ください) 40話前後で完結予定です 拙い文章ですが、お好みでしたらよろしければご覧ください 4/4にて完結しました ご覧いただきありがとうございました

【完結】見えてますよ!

ユユ
恋愛
【 お知らせ 】 先日、近況ボードにも お知らせしました通り 2026年4月に 完結済みのお話の多数を 一旦closeいたします。 誤字脱字などを修正して 再掲載をするつもりですが 再掲載しない作品もあります。 再掲載の時期は決まっておりません。 表現の変更などもあり得ます。 他の作品も同様です。 ご了承いただけますようお願いいたします。 ユユ 【 お話の内容紹介 】 “何故” 私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。 美少女でもなければ醜くもなく。 優秀でもなければ出来損ないでもなく。 高貴でも無ければ下位貴族でもない。 富豪でなければ貧乏でもない。 中の中。 自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。 唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。 そしてあの言葉が聞こえてくる。 見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。 私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。 ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。 ★注意★ ・閑話にはR18要素を含みます。  読まなくても大丈夫です。 ・作り話です。 ・合わない方はご退出願います。 ・完結しています。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。 ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。 今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。 産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。 4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。 そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。 婚約も解消となってしまいます。 元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。 5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。 さて・・・どうなる? ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

イリス、今度はあなたの味方

さくたろう
恋愛
 20歳で死んでしまったとある彼女は、前世でどハマりした小説、「ローザリアの聖女」の登場人物に生まれ変わってしまっていた。それもなんと、偽の聖女として処刑される予定の不遇令嬢イリスとして。  今度こそ長生きしたいイリスは、ラスボス予定の血の繋がらない兄ディミトリオスと死ぬ運命の両親を守るため、偽の聖女となって処刑される未来を防ぐべく奮闘する。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。