贄の令嬢はループする

みん

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❋新しい未来へ❋

78 最後の別れ

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「ルチア=トワイアルでございます。この度は、先代の国王、王妃、王女が起こした事、誠に申し訳ございませんでした」

「謝罪を受け取ります。顔を上げてください」
「ありがとうございます」

下げていた頭を上げると、肩程までの長さの金髪がサラサラと動き、ローズピンク色の瞳と目が合った。
姪であったジュリエンヌ様よりも少し濃いピンク色だけど、穏やかそうな雰囲気を持っている。

ルチア=トワイアル

トワイアル王国の新たな国王で、その斜め後ろには、王配であるサミュエル様が控えて居る。その反対側にはトルトニア王太子のメレディス様が居る。
そんな王族の3人を……私─エヴェリーナは……壇上の椅子に座ったまま……見下ろす形になっている。

ーい……胃が……痛いー

背中には嫌な汗が流れている。気を緩めれば、手も震えるかもしれない。
ニノンさんもフィルも、非公式な場と言っていなかっただろうか?非公式なら、同じテーブルを囲んでの挨拶とばかり思っていたのに…。

普通に“謁見室”とか言われる部屋に連れて来られ、3段上にある黒色の革張りのご立派な椅子に座らされた。勿論、私の隣のご立派な椅子には黒龍であるフィルが………鎮座している。

「トワイアル王女も、以前より元気に見えるが、体調は大丈夫か?」
「はい。お陰様で、スッカリ元気になりました。本当に、ありがとうございます」

保護された時の姿を見てはいないけど、1人で立つ事すらできなかったと言っていた。でも今は、1人で立って普通に歩いている。多少細いかな?と言う体型ではあるが、顔色は良いし元気そうにも見える。

「大聖女イロハ様の治癒のお陰でございます。イロハ様、ありがとうございました」
「それが私の務めですから。お礼はもう十分頂きましたから、後は……これからも元気で居ていただければ…」

大聖女であるイロハは、3段下のサイドに立っていて、その後ろに護衛としてアラスターさんが立っている。今日のイロハは、非公式の場と言う事で聖女としての正装ではなく、薄緑色のシンプルなドレスを着ている。心なし、アラスターさんが笑顔に見えるのは、気のせいではない。

ーイロハは…気付いてない…よね?頑張れ、アラスターさん……ー



兎に角、非公式とは言え、黒龍の番としての初めてのお仕事は緊張はしたけど、円滑に進められた。


挨拶を終えた後、トワイアル女王とサミュエル様は、別室で待機しているカデライル侯爵夫妻と会うそうで、謁見室を後にした。


「イヴ、お疲れ様」
「疲れたと言うか……緊張した……私、大丈夫でした?」
「あぁ、何の問題も無かった。大丈夫だった」

そう言いながら、私の頭をポンポンと軽く叩きながら微笑むフィルを見て、ようやく緊張が解れた。


「竜王陛下、エヴェリーナ様、今日は、ありがとうございます」

私達に声を掛けて来たのは、トルトニア王太子のメレディス様。トルトニアの国王両陛下とトワイアル国王両陛下は既に挨拶を交わし終えている為、本来であれば未だ王太子でしかないメレディス様の同席義務は無い。ただ、メレディス様は既にフィルの姿と番である私を知っている上、ハロルド様の事があった為、この場に同席したのだ。

「これから直ぐに向かうか?」
「はい。面倒な事はさっさと済ませたいので…」
「だな。イヴ、俺も一緒に行って来るから、イヴはイロハとアラスターと一緒に俺の執務室で待っていてくれ」
「分かりました。行ってらっゃい」

と、私はフィルとメレディス様を見送った。





******


「兄上!」
「ハロルド………“”か…まだ、理解していなかったんだな…」

ーどうして…ハリーはここまで…愚か者になってしまったんだ?ー

「兄上、ここから出して下さい。早く…リーナを連れて帰らないと、また黒龍アイツに噛み殺されてしまう!」

ー“アイツ”?“噛み殺される”?ー

「はぁ……ハロルド、まずは…その煩い口を閉じて私の話を聞くんだ」
「え?兄上?」
「お前はもう、王族籍から抹消されているから王子ではないし、私の弟でもない」
「え?は?」

それから俺は、一つ一つ丁寧に、阿呆でも分かるようにハリーに説明していった。




「───と言う事で、エヴェリーナ様は竜王陛下の番であるから、お前と結ばれる事は万に一つも無い。未来永劫有り得ない。よく分からないが、黒龍の番である以上、エヴェリーナ様が噛み殺されると言う事は無いと思う。寧ろ、お前の様な気持ちわ──独り善がりな思考の持ち主と一緒に居る事の方が危険極まりないと思う」

ここでようやく、ハリーの顔色が悪くなった─と言う事は…理解したのか?

「でもっ…私は……ジュリーに騙されて……」
「お前は、まだ他人ひとのせいにするんだな。確かに、トワイアルの王女が言い出した事かもしれないが……それを信じ行動に移したのはお前自身だ。あの女の言い分だけを信じたお前の咎だ。他人ひとのせいにして逃げるのは止めるんだ」
「でも…………」
「お前は、メザリンド嬢の人生を狂わせて、竜王陛下の番に禁忌とされている媚薬を飲ませて我がモノにしようとした──それだけが…事実だ。それと、お前と会うのは、これで最後だ。本当に…………残念だ…………」
「あ…に…うえ……」


ハリーに背を向けて歩き出す。

かつては、王となった俺を支えると明るく笑っていたハリー。兄としてはこんな愚弟でも助けてやりたいし、守ってやりたいとも思う。ただ、俺はトルトニア王国の王太子だ。罪を犯した上、護るべき存在である黒龍とその番に手を出した者を助ける事はできない─してはいけないのだ。



ーどうか、ハリーが罪を認め反省しますようにー







❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(*˘︶˘*).。.:*♡


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