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みん

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第三章ー学園生活ー

スペイシー侯爵家

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「これは、極秘ではありませんが…ここだけの話でお願いします。」

と、前置きしてからアデル様から聞かされた事は─

聖女が絡んでいた事と、王家が後手に回った事で起こった事と言う事で、アドリーヌは完璧な被害者。婚約解消を受け入れてもらえず精神的に病み、貴族令嬢としても生きてはいけない─と言う本人の望みを叶える為に当時の国王とスペイシー侯爵が“除籍した”ように見せ掛けたそうだ。

ーお父様……ー

知らなかった。私は、本当に除籍されて平民になったとばかり思っていた。

「その、アドリーヌ様の婚約者だった人は…自殺した後は……」

「分かりません。その元婚約者の父親─侯爵だったそうですが、爵位を返上したそうです。その後の事や名前などは一切記録に残っていないので、私達も全く分からないのです。」

私も、彼の記憶だけがスッポリと抜けていて、名前すら思い出せない。唯一覚えているのが、最期に見た時の彼の冷たい瞳だけ。でも、その瞳の色もモノクロで、彼の本当の瞳の色すら思い出せないのだ。思い出す必要もないだろうし、思い出したくもないけど。

貴族名鑑を見ても何も反応しなかったのは、そう言う事だったのか。


「今のルードモント子爵も、“聖女の生家”とありますが、100年前の聖女と婿入りした第二王子の子は子爵を引き継がず遠縁の者が引き継いだそうなので、実際のところは、100年前の聖女とも、王族とも関わりが無いと言うのが事実です。」

聖女の生家で王族の血が入ったと言うのに子爵のままなのが不思議だったけど…なるほど。まぁ、その子供も、第二王子の子ではなかったのだから、仕方無い事だろう。

「我がスペイシー家も、嫡子であったアドリーヌ様が亡くなってしまったので、遠縁の方が後を継ぎました。」

アドリーヌわたしが…嫡子のままだったとは。
最後に両親に会った時、私はそれなりに元気になっていたから、“いずれはスペイシー家に戻って来れるだろう”と、思っていたのかもしれない。

100年経った今、アドリーヌわたしは本当に愛されていたんだと、至るところで思い知らされる。本当に…素晴らしい親だったんだ。

「それで……今の聖女様─シェイラ様は、また、動きそうなんでしょうか?」

「それは分からないけど、動かない事はないんじゃないかと思ってます。昨日と今日は特に何もなかったけど…どうも、彼女は苛立ってるようなところがあったからね。自分が掛けて、掛かっていた筈の魔法が解けている事が分かっているようだし…。多分、何もしない事はないと思ってます。」

だから、常に彼女には意識を向けています─と、ダレルさんの言う通り、私もシェイラがこのままおとなしくなるとは思っていない。

「そうですか…。なら、私達も、もしもの時の為に、色々と準備をしておきます。魔具に関して何かあれば、何でも言って下さい。兄─スペイシー侯爵当主からも、こちらの事を第一優先で動くようにと言われていますから。」

「ありがとうございます。」

ー本当に心強い限りだー

ダレルさんやモンテルアーノ様が居て……スペイシー家も居るのだ。同じ事を繰り返させたりは、絶対にさせない。その為には───





色々と話を詰めた後、3人揃って地下フロアから出て、図書館から出ると、こちらに向かって歩いてくる────モンテルアーノ様が視界に入って来た。

「今日は行けなくてすまなかった。今から帰るのか?」

「モンテルアーノ様、お疲れ様です。丁度、今、帰るところです。」

モンテルアーノ様とダレルさんが話しているのを、2、3歩離れた所からアデル様と並んで見ている。

「ナディアさんは、ルシエント邸で過ごされているんですよね?」

「あ、はい。王都に知り合いなんて居ませんから、ルシエント様の助手をしている間は、ルシエント邸でお世話になる事になってるんです。」

ールシエント様本人は、殆ど帰って来ないけどー

「スペイシーに帰る途中にあるから、一緒に─と思っていたのだけど…モンテルアーノ様がいらっしゃったのなら、必要ないかしら?」

「え?モンテルアーノ様と…何か関係ありますか?」

「え?あの…モンテルアーノ様とナディアさんは、恋人同士なんですよね?」

「なっ!?」

キョトン─とした顔で私を見つめるアデル様。何だろう…アドリーヌ昔の自分に見つめられているようで、何とも不思議な気持ちになってしまう。

「恋人では…ありません。そもそも、私はただの平民ですよ?」

「100年前に、アドリーヌ様の代わりに後を継いだ方ですが…男爵家の三男の方だったんです。その当時の当主が、“爵位は関係なく、能力があれば良い”と。そしてその方は、今ナディアさん達が身に着けている魔具の基礎を創り上げた方なんです。」

男爵の三男が……侯爵家に──

「その彼を迎え入れた時は、一族内からも批判を受けたようですが……“爵位が良ければ有能、善人とは限らない”と、全て突っぱねたそうです。そして、その彼もまた、期待に応え、当主を引き継ぐ頃には、誰にも反対される事はなかったそうです。」 

そう言うと、アデル様は一呼吸置いてから私に微笑んだ。

「爵位なんてものは、アクセサリーのようなモノと…私は思っています。平民だから─と、自分の価値を下げてはいけません。それに……身分差と言うものは、恋愛においては……良いスパイスにしかなりませんわ。」

今度はニッコリ微笑むアデル様。

ーあ、コレ、“恋人じゃない事を信じてません。隠さなくても良いんですよ?”的な笑顔だー

本当に、噂を通り越して……真実になってしまっているようだ。





勘弁して欲しい────










❋エールを頂き、ありがとうございます❋
٩(。˃ ᵕ ˂ )و♪

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