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二度目の召喚

チャンス到来?

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「完璧じゃない!?」

1人静かに喜びの声を上げる。

キルソリアン邸にやって来てから半年。
この3ヶ月、色々な仕事を沢山私に先輩使用人2人のお陰で、更に色んな事を知る事ができた。

『書庫の掃除をしといてね』と言われた時、魔法に関しての本を探してこっそり持ち出して読みあさった。

『買い物して来て』と言われた時は、王都に憧れている田舎娘を装って、王都まで行くにはどうすれば良いのか─など色々訊きまくった。

『外を掃除しなさい』と言われた時は、掃除をしながら魔力のトレーニングをした。

言われた時間迄にできなかった時は、相変わらずご飯抜きになるけど、そんな時はブランが夜食分を私にくれるし、ケイティさんも時々「余ったから」とクッキーをくれたりした。

売られて買われて…どうなる事かと不安でいっぱいだったけと……悪い事ばかりではない。


私の首に嵌められているのは、魔物や魔獣、魔力持ちの罪人が嵌められる枷だった。この枷のせいで、私の魔力の流れが止まってしまっているらしい。

ダメ元で、その枷を中心にして体内に魔力流すイメージをしてみると、微かに流れを感じる事ができたのが2ヶ月前。
それからも必死にトレーニングを続けて2ヶ月。自分で意識すれば魔力の流れを作る事ができるようになった。ただ、これは“無理矢理穴をこじ開けて流す”と言う感じだから、結構な量の魔力を消費してしまうようで、すぐに疲れてしまうのが難点だ。
その上、その魔力が流れている間に枷を外せるようにしなければいけない。

「この枷が、どうやったら外れるか─だよね?」
「魔力を流せば良いのよ。」
「ひぃ──っ!!ケっケイティさん!?」

ここは2階北側の一番奥にある、私に充てがわれた部屋である。誰も居ないと思っていたら、ケイティさんが居たのだ。いつ来たのか……全く気付かなかった。

「あの…その……」
「隠さなくて良いわよ。私だって……こんな枷、外せるものなら外して………」

と、ケイティさんの琥珀色の瞳に、一瞬金の色が差したように見えた。

「こんな遅い時間にごめんなさい。少し…ノワールと話がしたくて来たんだけど…。先に、枷の話をしましょうか?」


枷は、その枷を嵌めた者か、管理者となった者の魔力を流す事で外せるそうだ。と言う事は──

「喩え私が魔力を使えるようになったとしても……意味が無い?」

ーえ─それはかなりショックだー

「もしくは、その管理者達より強い魔力を流して、管理者をするかよ。」

「管理者を……変更?」

「そう。この枷には今、キルソリアン子爵の魔力でロックが掛かっている状態なの。その上から、更に強い魔力を流すと、そのロックが上書きされるって事ね。ただ、それにはではなく、魔力でなければ変更はできないから、滅多にできる事ではないけど……。」

私は、自分は普通だと思っていたけど…結構な魔力持ちだと言われていた。だったら──

「そこで提案なんだけど……ノワールの魔力を、私に流してくれない?」

「流す?」

ケイティさん曰く、ケイティさんもかなりの魔力持ちらしい。それでも、枷に掛けられた魔力と相性が悪いらしく、無理矢理にでも魔力の流れを作ろうとすると、拒絶反応を起こして気を失ってしまう程なのだそうだ。何度も外そうと試みてはみたけど、どうしても駄目だったそうだ。

だから、私の魔力をケイティさんの体内に流して、強制的に流れを作り出し、そこでケイティさんが自分の枷に魔力を流してロックを書き換え─ではなくて

するのよ──ふふっ」
「………」

ーえ?ひょっとして…獣人じゃなくて…魔物だったりする?ー

笑ってるのに目は全く笑っていない。そんな目も一瞬で、またいつもの目に戻ったケイティさんが、今度は私を真っ直ぐ見つめてくる。

「もし、この枷を外せて自由を手にしたら、ノワールはどうしたい??」

「──え?」

“それは、どう言う意味?”─と訊く前に、部屋の扉をドンドンッと叩く音がして「ノワール、今すぐ本邸の旦那様の執務室に行きなさい!」と言われた。

部屋から私とケイティさんが出て来ると、呼びに来た侍女長は少し驚いてはいたが、「ケイティ、アンタもお呼びだよ」と言われ、私はケイティさんと一緒に本邸の旦那様の執務室に向かった。





「明日、アマリソナ領に視察が入るそうだ。」

そう言って顔を顰める旦那様。どうやら、抜き打ちの視察らしい。

「それで──だ。分かっていると思うが、ケイティとブランとノワールは、使用人棟の地下室でおとなしくしておく事。視察が終わる迄は出て来る
な。」

「「………」」

ブランは既に寝ていて、その間に地下室へと運ばれているそうだ。

ーこれは…チャンスではないだろうかー

ケイティさんもそう思ったようで、一瞬だけ私と目を合わせて、旦那様に気付かれないようにそっと微笑んだ。






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