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二度目の帰還
菊花と深影と
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❋“置き場”から移動してきた話になります❋
*深影視点*
『ねぇ……いつまでお前と一緒に居ないといけないの?もう嫌なんだけど……』
げんなりした顔の菊花が、相変わらず俺に悪態を吐く。
『それは、千代様に訊いてもらわないと分からないけど……菊花も分かってるのか?お前の弱点である犬を克服しないといけないって事。』
『分かってるわよ!と言うか、もう慣れて来たわよ!』
ふんっ─と、そっぽを向く菊花。
『へぇ…“慣れて来た”ねぇ……本当か?』
『本当よ。嘘なんてついてどうするのよ!?』
『じゃあ、本当に慣れたか…試してみるか?』
『は?試す?そんな事必要な──』
『なるほど?本当は慣れてなくて、犬が弱点のままなのに嘘をついて、俺から逃げ──』
『そんな訳ないでしょう!やってやろうじゃない!その“試し”とやらを!』
ニヤリ─と、口が緩みそうになるのを我慢する。
ー本当に、チョロくて可愛い菊花だよなー
『菊花』
『何─────』
菊花の顎に手をあてて上を向かせて、抵抗される前に口を塞ぐようにキスをする。
『─っ!!?』
驚いて口を開けようとしたところで、更に深いキスをする。
『──っ!!』
すると、菊花の体から力が抜けて倒れ込みそうになったところで口を離し、菊花の体を抱き留めた。
『──なっ……なっ………』
『ほらな?たったコレだけの事で、お前は犬にやられてんだよ。』
『なっ!?』
『お前、さっきから“なっ”しか言えてないからな?くくっ─』
ーいい年して、キスの一つや二つで真っ赤にして……慣れていたら、それはそれで腹が立つだろうけどー
菊花は、抵抗する事無く─できないまま、俺に抱き留められたままで俺を睨み付けている。
『何?もう一回する?したいの?しても良いけど、今度はしっかり立っておけよ?』
『なっ!!』
バシュッ───
『っ!おっと!』
菊花は狐火を俺に放って、俺との距離を取ると、ヨロヨロと立ったまま俺を睨み付けている。
『ちょ……調子にのるんじゃ…ないわよ……』
『乗ってない。俺は、真面目に、お前の弱点をなんとか……克服してやりたいと思っているだけだ。』
如何にも真面目に考えている─と言う顔で菊花を見つめ返していると、手に溜めていた狐火を消してから、深く溜め息を吐いた。
『今のキスと、克服が……どう関係するって言うの!?この……変態!』
ー可愛い口撃だなぁー
『ハッキリ言うけど、慣れるしかないなら、触れ合った方が早いだろう?』
『…………』
『早く慣れれば、それだけ早く俺と離れられるし、お前の弱点は無くなって無敵になるんなら……悪くなくないか?』
『…………』
ーそこで悩むとか……チョロいな…もう一押しかー
『俺に勝ちたいんだろ?それとも、アレぐらいの事で、怯えて──』
『やってやろうじゃない!キスの一つや二つ、どうって事ないわよ!』
ーはい、チェックメイトー
『一つや二つ…ね……二言は無いか?』
『はんっ!無いわよ!』
『──じゃあ……』
空いていた距離を一気に詰めて、菊花の腰に手を回してもう一度俺の方へと引き寄せる。
『もう一回、いっとこうか?』
と、また抵抗される前に菊花の口を塞いだ。
*菊花視点*
ーどうしてこうなった!?ー
『菊花、おはよう』
『菊花、今日の予定は?』
『菊花───』
あの日以降、深影との物理的距離が近い。近過ぎる。しかも、ことある毎に抱き寄せられてキスをされる。相手が犬だからか、キスをされると体から力が抜けてしまうのだ。
そんなフラフラな状態の私を、まるで───眩しいモノを見るような目で見て来る深影が───
『解せない!!』
『何が?』
『何でも無いわよ!!』
ふんっ─と無下にあしらっても、深影は嬉しそうに笑うだけだった。
*****
『あ、狐の菊花じゃん』
千代様のお使いで、久し振りに妖の路を歩いていると、私の進行方向から犬妖怪がやって来た。
ー嫌な奴に会ったわねー
この犬妖怪は、特に強い妖怪ではなく、普通の犬の妖怪。そのくせに、私が狐だからといつも私に突っ掛かって来る嫌な奴だ。
『どうも。それじゃあね。』
と、歩みを止める事なくすれ違おうとすると、グイッと腕を取られた。
『何!?』
『つれないなぁ…なぁ、俺と遊ばない?可愛い可愛いキツネちゃん?』
ゾワッ──と体中が不快感に襲われ、体から力が抜けそうになる。
ーこんな奴に!!ー
ギリッと歯を食いしばり妖力を放とうとした時
『お前、俺の菊花に……何してくれてんの?』
『あ?───あ゙ぁぁっ!?』
その声と同時に、私の腕を掴んでいた犬妖怪の手が……ボトリッと落ちた。そうして、そのまま私はまた深影の腕の中に捕らわれた。
『お前みたいな駄犬如きが、菊花に触れて良いと思ってるのか?菊花に触れたいなら、俺を倒してからにしてくれるかなぁ?』
『ひぃぃぃっ!すみません!深影様、もう二度、キツネ──菊花には触れませんから!』
『なら、今すぐ、その見苦しい腕を持って、視界から消えてくれる?』
『勿論です!』
と、その犬妖怪は、切り落とされた自分の右腕を抱えて猛ダッシュで去って行った。
その背中に冷たい視線を向けて、去って行くのを確認した後、私に向けたその視線は、優しいモノだった。
『大丈夫か?』
『……だい…じょうぶよ………ありが…とう。』
ドクドク─と、心臓が騒いでいるのは……驚いたから─よね?
『菊花──』
『………』
そっと触れるだけのキスをされて
『菊花が無事で……良かった』
と、ギュッと抱きしめられた。
キュンッ──
どうやら、トキメイてしまうと、本当に“キュンッ”と鳴るようだ。
深影は犬なのに
唯一の弱点で天敵の犬なのに
この深影の腕の中だけは……ホッと安心してドキドキするのは
もう、気のせいではないだろう────
キュッ─と、私からも深影に抱き付くと、深影はビクッと体を震わせた後
ニヤッ──と笑って、私を更に抱き締めた。
『またあんな事があっても嫌だろう?なら、手っ取り早く、犬を克服しようか』
と、ニッコリ微笑む深影に素直に頷くと───
何故か組み敷かれて…啼かされて……気が付けば──
番にされていた
『解せない!』
『“手っ取り早く”と言っただろう?なら、犬の俺と交わって番になれば、弱点ではなくなるんだよ』
シレッと言う深影──に、腹が立たない自分に腹が立つ!
『菊花、もう素直に…俺に甘えとけ』
と、ニッコリ笑って、私を抱き締めた。
『志乃と言い、菊花と言い……まぁ…幸せなら良いのかしらね?ふふっ』
と、千代は嬉しそうに呟いた。
*深影視点*
『ねぇ……いつまでお前と一緒に居ないといけないの?もう嫌なんだけど……』
げんなりした顔の菊花が、相変わらず俺に悪態を吐く。
『それは、千代様に訊いてもらわないと分からないけど……菊花も分かってるのか?お前の弱点である犬を克服しないといけないって事。』
『分かってるわよ!と言うか、もう慣れて来たわよ!』
ふんっ─と、そっぽを向く菊花。
『へぇ…“慣れて来た”ねぇ……本当か?』
『本当よ。嘘なんてついてどうするのよ!?』
『じゃあ、本当に慣れたか…試してみるか?』
『は?試す?そんな事必要な──』
『なるほど?本当は慣れてなくて、犬が弱点のままなのに嘘をついて、俺から逃げ──』
『そんな訳ないでしょう!やってやろうじゃない!その“試し”とやらを!』
ニヤリ─と、口が緩みそうになるのを我慢する。
ー本当に、チョロくて可愛い菊花だよなー
『菊花』
『何─────』
菊花の顎に手をあてて上を向かせて、抵抗される前に口を塞ぐようにキスをする。
『─っ!!?』
驚いて口を開けようとしたところで、更に深いキスをする。
『──っ!!』
すると、菊花の体から力が抜けて倒れ込みそうになったところで口を離し、菊花の体を抱き留めた。
『──なっ……なっ………』
『ほらな?たったコレだけの事で、お前は犬にやられてんだよ。』
『なっ!?』
『お前、さっきから“なっ”しか言えてないからな?くくっ─』
ーいい年して、キスの一つや二つで真っ赤にして……慣れていたら、それはそれで腹が立つだろうけどー
菊花は、抵抗する事無く─できないまま、俺に抱き留められたままで俺を睨み付けている。
『何?もう一回する?したいの?しても良いけど、今度はしっかり立っておけよ?』
『なっ!!』
バシュッ───
『っ!おっと!』
菊花は狐火を俺に放って、俺との距離を取ると、ヨロヨロと立ったまま俺を睨み付けている。
『ちょ……調子にのるんじゃ…ないわよ……』
『乗ってない。俺は、真面目に、お前の弱点をなんとか……克服してやりたいと思っているだけだ。』
如何にも真面目に考えている─と言う顔で菊花を見つめ返していると、手に溜めていた狐火を消してから、深く溜め息を吐いた。
『今のキスと、克服が……どう関係するって言うの!?この……変態!』
ー可愛い口撃だなぁー
『ハッキリ言うけど、慣れるしかないなら、触れ合った方が早いだろう?』
『…………』
『早く慣れれば、それだけ早く俺と離れられるし、お前の弱点は無くなって無敵になるんなら……悪くなくないか?』
『…………』
ーそこで悩むとか……チョロいな…もう一押しかー
『俺に勝ちたいんだろ?それとも、アレぐらいの事で、怯えて──』
『やってやろうじゃない!キスの一つや二つ、どうって事ないわよ!』
ーはい、チェックメイトー
『一つや二つ…ね……二言は無いか?』
『はんっ!無いわよ!』
『──じゃあ……』
空いていた距離を一気に詰めて、菊花の腰に手を回してもう一度俺の方へと引き寄せる。
『もう一回、いっとこうか?』
と、また抵抗される前に菊花の口を塞いだ。
*菊花視点*
ーどうしてこうなった!?ー
『菊花、おはよう』
『菊花、今日の予定は?』
『菊花───』
あの日以降、深影との物理的距離が近い。近過ぎる。しかも、ことある毎に抱き寄せられてキスをされる。相手が犬だからか、キスをされると体から力が抜けてしまうのだ。
そんなフラフラな状態の私を、まるで───眩しいモノを見るような目で見て来る深影が───
『解せない!!』
『何が?』
『何でも無いわよ!!』
ふんっ─と無下にあしらっても、深影は嬉しそうに笑うだけだった。
*****
『あ、狐の菊花じゃん』
千代様のお使いで、久し振りに妖の路を歩いていると、私の進行方向から犬妖怪がやって来た。
ー嫌な奴に会ったわねー
この犬妖怪は、特に強い妖怪ではなく、普通の犬の妖怪。そのくせに、私が狐だからといつも私に突っ掛かって来る嫌な奴だ。
『どうも。それじゃあね。』
と、歩みを止める事なくすれ違おうとすると、グイッと腕を取られた。
『何!?』
『つれないなぁ…なぁ、俺と遊ばない?可愛い可愛いキツネちゃん?』
ゾワッ──と体中が不快感に襲われ、体から力が抜けそうになる。
ーこんな奴に!!ー
ギリッと歯を食いしばり妖力を放とうとした時
『お前、俺の菊花に……何してくれてんの?』
『あ?───あ゙ぁぁっ!?』
その声と同時に、私の腕を掴んでいた犬妖怪の手が……ボトリッと落ちた。そうして、そのまま私はまた深影の腕の中に捕らわれた。
『お前みたいな駄犬如きが、菊花に触れて良いと思ってるのか?菊花に触れたいなら、俺を倒してからにしてくれるかなぁ?』
『ひぃぃぃっ!すみません!深影様、もう二度、キツネ──菊花には触れませんから!』
『なら、今すぐ、その見苦しい腕を持って、視界から消えてくれる?』
『勿論です!』
と、その犬妖怪は、切り落とされた自分の右腕を抱えて猛ダッシュで去って行った。
その背中に冷たい視線を向けて、去って行くのを確認した後、私に向けたその視線は、優しいモノだった。
『大丈夫か?』
『……だい…じょうぶよ………ありが…とう。』
ドクドク─と、心臓が騒いでいるのは……驚いたから─よね?
『菊花──』
『………』
そっと触れるだけのキスをされて
『菊花が無事で……良かった』
と、ギュッと抱きしめられた。
キュンッ──
どうやら、トキメイてしまうと、本当に“キュンッ”と鳴るようだ。
深影は犬なのに
唯一の弱点で天敵の犬なのに
この深影の腕の中だけは……ホッと安心してドキドキするのは
もう、気のせいではないだろう────
キュッ─と、私からも深影に抱き付くと、深影はビクッと体を震わせた後
ニヤッ──と笑って、私を更に抱き締めた。
『またあんな事があっても嫌だろう?なら、手っ取り早く、犬を克服しようか』
と、ニッコリ微笑む深影に素直に頷くと───
何故か組み敷かれて…啼かされて……気が付けば──
番にされていた
『解せない!』
『“手っ取り早く”と言っただろう?なら、犬の俺と交わって番になれば、弱点ではなくなるんだよ』
シレッと言う深影──に、腹が立たない自分に腹が立つ!
『菊花、もう素直に…俺に甘えとけ』
と、ニッコリ笑って、私を抱き締めた。
『志乃と言い、菊花と言い……まぁ…幸せなら良いのかしらね?ふふっ』
と、千代は嬉しそうに呟いた。
応援ありがとうございます!
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