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漆
「見付けた」
「え?あ──っ…」
あれから更に1週間。アンジーに避けられてアンジー不足になった俺は、クラウスが放課後に、アンジーをよく見掛けると言う場所を教えてもらい、その場所にやって来た。そこは、俺とアンジーが初めて会った場所だった。あの時、木に登って下りられなくなった猫を助ける為に、アンジー自身が木に登って猫を抱いていて──アンジーは、その時の木の側にあるベンチに座っていた。
「アンジー、久し振りだね?そこに座っても良い?」
「──えっと……はい……」
何故か、俺に視線を合わせる事もなく狼狽えている感じのアンジーに不安を覚える。
ー俺は、また何かをしてしまった?ー
少し不安になりながらも、俺はアンジーの横に腰を下ろした。
「「……………」」
2週間前は、会えば色んな話をして笑い合っていたのに、今は気不味い?雰囲気しかない。心なしか、アンジーが怯えているような気さえする………
ー怯える?ー
ふと、アンジーが手にしている本に視線がいくと、何故か、その本が濡れていた。
「………」
俺は静かに風の魔力を使い、その濡れた本を乾かした。
「あっ!ありがとうございます!フェリクス様!」
と、パッと笑顔になったのは一瞬で、その次の瞬間にはまた、視線を逸らされた。
ーそう言えば…アレが最近静かだったなー
アレ─エイダ=フロイアン。何かにつけて俺に近付いて来ていたが、あの図書館の一件からはあまり見掛けていない。諦めたか?と思っていたが…
ーどうやら、手を出してはいけないモノに手を出したようだなー
「アンジー、一つだけ訊きたい事がある。アンジーは……俺と一緒に居る事が…嫌になった?」
「─ちがっ────っ」
俯いていた顔をバッと上げて、そこでようやく視線が合った。そのアンジーの顔は……困ったような泣きそうな顔をしていた。
「うん。良かった。俺も…アンジーとはこれからもずっと…一緒に居たいと思ってるから。」
「え?」
キョトンとするアンジーは本当に可愛い。
「憂いは……きっちり晴らさないと………ね?」
俺は、アンジーの頬にソッと触れてニッコリと微笑んだ。
「たかが伯爵令嬢の分際で、生意気なのよ。」
「本当ですわ。ちょっとフェリクス様に気に掛けてもらえているからと、図々しく側に居るなんて。」
「それとも、もっと…痛い目に遭わないと……分からないのかしら?」
「………」
ある日の放課後。アンジーが中庭で、あの時の黒猫を抱いて椅子に座っていると、エイダ=フロイアンを筆頭に3人の令嬢に取り囲まれた。エイダは公爵令嬢で、他の2人は侯爵令嬢だった。そんな3人に、伯爵令嬢のアンジーは言い返せる筈もなく、ただただ黙ったままだった。
「“痛い目”って…どんな事をしようと思ってるんだ?」
「「フェリクス様!」」
俺の登場に驚いて声をあげたのは、アンジーとエイダ。勿論、アンジーはただ驚いているだけだが、エイダの方は一瞬にして顔色を悪くした。そんなエイダを無視して、俺はアンジーの側へと歩み寄った。
「アンジー、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。」
サッと目で確認して、何もされていない事を確認してから、俺はエイダの方へと視線を向けた。
「フロイアン嬢。ここでハッキリさせてもらう。私が、エイダ=フロイアン嬢と婚約を結ぶ事は無い。それに、私の父であるボルナット公爵から正式に断りを入れている筈だ。」
そう。俺は公爵家の次男ではあるが、父の弟が伯爵の婿入りをしているのだが、そこに子が居ない為、俺を養子にして伯爵を継がせよう─と言う話が出ていた。その為、俺は次男にも関わらず、毎日のように釣書が来ているのだ。その中の1人にエイダ=フロイアンも入っている。
「それは…知ってはいますが…それでも、フェリクス様にはまだ婚約者はいらっしゃいませんでしょう?隣国の王家の血を引く母の子である私と婚約すれば、メリットしかありませんのよ?そこの…かろうじて伯爵に収まっているような者より、私との方が………。」
「前にも言ったが、名前呼びは止めてくれ。許可はしていないし、フロイアン嬢に名前を呼ばれたくはない。」
「───なっ……!」
「それと、一つ大きな勘違いをしているようだが………私は叔父の伯爵家に養子に入る事はないし、継ぐ事もない。」
「───は?」
と、エイダは間抜けしたように口を開いたままポカンとしている。
「私は…伯爵にはならない。なれても騎士爵位止まりだろう。」
俺はもう、貴族なんてものは懲り懲りだ。だが、騎士としての自分には自信があるし、このまま努力すれば騎士爵位は手に入るだろうと思っている。それで十分だ。アンジーとうまくいけば、騎士爵位があれば苦労させる事もないだろう。例え、アンジーの記憶が戻ったとしても、貴族どっぷりではないから、貴族の柵からも逃れる事ができる。伯爵なんてものは、俺には必要ないのだ。
「え?あ──っ…」
あれから更に1週間。アンジーに避けられてアンジー不足になった俺は、クラウスが放課後に、アンジーをよく見掛けると言う場所を教えてもらい、その場所にやって来た。そこは、俺とアンジーが初めて会った場所だった。あの時、木に登って下りられなくなった猫を助ける為に、アンジー自身が木に登って猫を抱いていて──アンジーは、その時の木の側にあるベンチに座っていた。
「アンジー、久し振りだね?そこに座っても良い?」
「──えっと……はい……」
何故か、俺に視線を合わせる事もなく狼狽えている感じのアンジーに不安を覚える。
ー俺は、また何かをしてしまった?ー
少し不安になりながらも、俺はアンジーの横に腰を下ろした。
「「……………」」
2週間前は、会えば色んな話をして笑い合っていたのに、今は気不味い?雰囲気しかない。心なしか、アンジーが怯えているような気さえする………
ー怯える?ー
ふと、アンジーが手にしている本に視線がいくと、何故か、その本が濡れていた。
「………」
俺は静かに風の魔力を使い、その濡れた本を乾かした。
「あっ!ありがとうございます!フェリクス様!」
と、パッと笑顔になったのは一瞬で、その次の瞬間にはまた、視線を逸らされた。
ーそう言えば…アレが最近静かだったなー
アレ─エイダ=フロイアン。何かにつけて俺に近付いて来ていたが、あの図書館の一件からはあまり見掛けていない。諦めたか?と思っていたが…
ーどうやら、手を出してはいけないモノに手を出したようだなー
「アンジー、一つだけ訊きたい事がある。アンジーは……俺と一緒に居る事が…嫌になった?」
「─ちがっ────っ」
俯いていた顔をバッと上げて、そこでようやく視線が合った。そのアンジーの顔は……困ったような泣きそうな顔をしていた。
「うん。良かった。俺も…アンジーとはこれからもずっと…一緒に居たいと思ってるから。」
「え?」
キョトンとするアンジーは本当に可愛い。
「憂いは……きっちり晴らさないと………ね?」
俺は、アンジーの頬にソッと触れてニッコリと微笑んだ。
「たかが伯爵令嬢の分際で、生意気なのよ。」
「本当ですわ。ちょっとフェリクス様に気に掛けてもらえているからと、図々しく側に居るなんて。」
「それとも、もっと…痛い目に遭わないと……分からないのかしら?」
「………」
ある日の放課後。アンジーが中庭で、あの時の黒猫を抱いて椅子に座っていると、エイダ=フロイアンを筆頭に3人の令嬢に取り囲まれた。エイダは公爵令嬢で、他の2人は侯爵令嬢だった。そんな3人に、伯爵令嬢のアンジーは言い返せる筈もなく、ただただ黙ったままだった。
「“痛い目”って…どんな事をしようと思ってるんだ?」
「「フェリクス様!」」
俺の登場に驚いて声をあげたのは、アンジーとエイダ。勿論、アンジーはただ驚いているだけだが、エイダの方は一瞬にして顔色を悪くした。そんなエイダを無視して、俺はアンジーの側へと歩み寄った。
「アンジー、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。」
サッと目で確認して、何もされていない事を確認してから、俺はエイダの方へと視線を向けた。
「フロイアン嬢。ここでハッキリさせてもらう。私が、エイダ=フロイアン嬢と婚約を結ぶ事は無い。それに、私の父であるボルナット公爵から正式に断りを入れている筈だ。」
そう。俺は公爵家の次男ではあるが、父の弟が伯爵の婿入りをしているのだが、そこに子が居ない為、俺を養子にして伯爵を継がせよう─と言う話が出ていた。その為、俺は次男にも関わらず、毎日のように釣書が来ているのだ。その中の1人にエイダ=フロイアンも入っている。
「それは…知ってはいますが…それでも、フェリクス様にはまだ婚約者はいらっしゃいませんでしょう?隣国の王家の血を引く母の子である私と婚約すれば、メリットしかありませんのよ?そこの…かろうじて伯爵に収まっているような者より、私との方が………。」
「前にも言ったが、名前呼びは止めてくれ。許可はしていないし、フロイアン嬢に名前を呼ばれたくはない。」
「───なっ……!」
「それと、一つ大きな勘違いをしているようだが………私は叔父の伯爵家に養子に入る事はないし、継ぐ事もない。」
「───は?」
と、エイダは間抜けしたように口を開いたままポカンとしている。
「私は…伯爵にはならない。なれても騎士爵位止まりだろう。」
俺はもう、貴族なんてものは懲り懲りだ。だが、騎士としての自分には自信があるし、このまま努力すれば騎士爵位は手に入るだろうと思っている。それで十分だ。アンジーとうまくいけば、騎士爵位があれば苦労させる事もないだろう。例え、アンジーの記憶が戻ったとしても、貴族どっぷりではないから、貴族の柵からも逃れる事ができる。伯爵なんてものは、俺には必要ないのだ。
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