裏切られた聖女は、捨てられた悪役令嬢を拾いました。それが、何か?

みん

文字の大きさ
40 / 58

40 聖女と聖女

しおりを挟む
一悶着あった翌日


引き篭もっていた王太子が、久し振りに部屋から出てやって来たのは、比較的小さい応接室だった。
その応接室には、ルドヴィク国王とブラントとネッドと、フードを目深に被った者が居た。ちなみに、皆には見えていないが、フードを被っている者の肩には水の妖精がチョコンと座っている。





「それで、今日は謝罪をしてもらえるんですね?」
「謝罪も何も、こちら側は悪い事は一切していない。寧ろ、こんな時にも関わらず、我儘を言って外出をしたそちらに問題があるだろう?」

そもそも、何故未だに2人がミスリアルに居るのか。それは、デストニア国内が荒れているから。現国王の政治に反発した勢力が動き出し、その状況の中、王太子と聖女が帰国すればどうなるか分からないから匿って欲しいと言われ、預かっている状況である。
そんな状況下での外出。狙われても仕方無い。ただ、狙われるかもしれないと分かっていて何もしないと言う訳にもいかず、我儘な聖女の外出の為にどれ程の人員を動かす羽目になったのか。

「私は、2人を預かって欲しいと頼まれたから預かっているだけで、それを拒否してデストニアに送り返しても良いんだけどね?我が国にとって、現国王の統治が続こうが、新たな国王が立とうが、あまり関係ないからね」

確か……ミスリアルとデストニアは隣国だから商業に於いての国交はあるけど、王室や政治的には友好国と呼べる程の親交は無い─だったかな?

「外出を強請った事は…申し訳無く思ってますが、それでも!リリは聖女だから、聖女に対して無礼を働くのは許されない事ではないですか?」

外出は良くないと理解しているのに、聖女が絡むと阿呆な解釈しかできない事が残念だ。
ネッドさんとはまた違った意味での聖女信奉者なのかもしれない。

「それに、そのフードを被った女は、リリを脅したそうです」
「脅しではなく、忠告ですよ」

逆に褒めて欲しいぐらいだ。

「聖女だから狙われない、誰も手を出さないなんて事はありませんから。特に、聖女リリは、デストニアではまだ正式にお披露目されてませんよね?だから、貴方が聖女だと知らない人の方が多いと言う事です。でも、王太子の婚約者だと知っている者はそれなりに居ると言う事を鑑みれば、聖女であっても狙われる可能性が高いと言う訳です。そんな事、少し考えれば分かる事ですよね?だから、脅しではありません」

「な──っ!!」
「それに、マテウス様の為でもありますよ?王太子マテウス様の婚約者が、他国の騎士と2人でデートなんて…外聞が悪いですから。あぁ、今私が“デート”と言ったのは、聖女リリ自身が昨日のお出掛けは、ブラント様とのデートだと言っていたからです」

ネッドさん曰く、イカれた変換機能が発動されただけらしいけど。

「そもそも、服を汚されたと怒っていたけど、聖女であるなら浄化すれば済む話なんです。あそこまで怒る意味が、私には分からない。聖女なら簡単な事でしょう?」

「あ……貴方って本当に失礼な人ね!貴方に聖女の何が分かるの!?聖女だから何でもできるなんて思わないで!聖女がどれ程大変か、貴方には分からないでしょうけど。貴方、そのフードを外してちゃんと顔を見せなさい。それも失礼だわ!」
「あぁ…それは失礼しました」

バサッ─

「───え?」
「久し振りね?リリ…じゃなくて田辺さん?」

フードを外してニッコリ微笑むと、今迄勝ち誇ったような余裕のあった顔から、少し焦ったような顔になった。

「なんで……先輩がここに?」
「それ、愚問じゃない?この世界に異世界の人間が居る理由は1つしかないでしょう?オールデンさんから教えてもらわなかったの?そんな訳ないわよね?聖女様なんだから…」
「リリ、彼女も異世界の人間なのか?リリの知り合いなのか?」

この応接室に居る者の中で、マテウスさんだけが状況を飲み込めていない。

「知り合いも何も、元の世界では同じの先輩後輩の仲でした」
「職場?え?でも…17歳で……学校に……」
「ちがっ!ちょっ…先ぱ…って……まさか、先輩も……」
「そのまさかよ。私も聖女としてミスリアルに召喚されてやって来たのよ。田辺さんとは違って、もう浄化の旅も無事に終わってスローライフを楽しもうとしてたところだったのに……だから、本当に不思議で仕方無いのよ。服を浄化すれば済む話を大きくする田辺さんが。まさか、1年以上もこの世界に居て、聖女の力を扱えていないなんて事は…ないよね?」
「─っ!」

ー扱えていない……のかー

そうだろうと思っていたけど。まぁ…浄化目的の召喚じゃなかったんだろうけど。

「そもそも、田辺さんが聖女に選ばれた事事態が不思議なのよね」
「先輩、そんな言い方酷くないですか?」
「そ…そうだ!同じ聖女だからと言っても、それは失礼ではないか!?」

田辺さんが目をうるうるとさせると、王太子が慌てて慰める。

ーこの王太子、チョロいな……年下で箱入りだから仕方無いのかなぁ?ー

兎に角、ここまで来たら私だって容赦はしない。先に仕掛けて来たのはそっちだから。

「だって、本当の事じゃない。ねぇ、田辺さん。貴方……お腹に居た筈の子供はどうしたの?」




しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

婚約者を処刑したら聖女になってました。けど何か文句ある?

春夜夢
恋愛
処刑台に立たされた公爵令嬢エリス・アルメリア。 無実の罪で婚約破棄され、王都中から「悪女」と罵られた彼女の最期―― ……になるはずだった。 『この者、神に選ばれし者なり――新たなる聖女である』 処刑の瞬間、突如として神託が下り、国中が凍りついた。 死ぬはずだった“元・悪女”は一転、「聖女様」として崇められる立場に。 だが―― 「誰が聖女? 好き勝手に人を貶めておいて、今さら許されるとでも?」 冷笑とともに立ち上がったエリスは、 “神の力”を使い、元婚約者である王太子を皮切りに、裏切った者すべてに裁きを下していく。 そして―― 「……次は、お前の番よ。愛してるふりをして私を売った、親友さん?」 清く正しい聖女? いいえ、これは徹底的に「やり返す」聖女の物語。 ざまぁあり、無双あり、そして……本当の愛も、ここから始まる。

処理中です...