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R.I.P.
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「今日の予約は3件っと。(メモを見ながら)……参列は喪主とご家族、ご友人のみ」
家族葬でこじんまりとコースだ。
このところ我が葬儀社は少し活気づいてきた。
終活セミナーも忙しい。
本人がどうしたらいいんでしょうか?なんせ初めてでと、やってくることもあれば、ご家族がそろそろ生前整理をと前もっての準備を勉強しにくるケースもある。
本日一組目の葬儀がしめやかに始まった。お名前は「木村コロちゃん」年齢8歳。なるほどなぁ。まぁ今はもう少し寿命が延びているかな。
生前彼が好きだった童謡が次々と会場に流れ、故人の愛らしい生前がしのばれる。
読経の中、祭壇の遺影は真面目な顔なのかすましているのかわからない表情をしている。
みんなそうだ。
あ、最近は表情が変えられるタイプも多いから、哀しい顔や変顔の遺影もあるのだが。
友人としてピンクのウサギやら、黄色い鳥の姿が見えた。鳥型のぬいロボは足が短いので歩く姿がたどたどしい。略さずに言うとぬいぐるみロボット。
彼らも沈痛な面持ちで焼香をすませたようだ。あたりには線香の煙が立ち込め、喪主家族達はすすり泣いている。この線香は無香タイプ、線香の匂いがぬいぐるみに染みついて困ると苦情が多かったのだ。
カメラの様子を確認してみよう。機材のトラブルなどもってのほかだ。この葬式はライブ配信中。と言っても、全世界に公開されるわけではない。ご家族の要望で入院中のおばぁちゃんの病床にタブレットでこの葬式を届ける。オプションサービスだ。
そう、わが葬儀社は最近ぬいロボの葬儀で忙しい。
ロボットよりもぬいぐるみにAIが入ったタイプの方が、普及度が高いのだ。
人型よりも、可愛いし癒される。特に一人暮らしのお年寄りには、なくてはならない存在らしい。
もちろん、生活の補助として料理や掃除もしてくれる。わが家にももちろん2匹いて、子供たちもかわいがっている。
人の葬儀は減り、ペットの葬儀も減ったが、このおかげで私たち町の葬儀屋は生きながらえている。
ちなみに、体をもたないAIの葬儀と言うのもある。
これは実店舗を持たないネットの葬儀サービスが主に活用される。
終活セミナーでも『記憶を新しい体に移せないんですか?』とよく聞かれるが、安全性の問題でまだ一般向けには認可されていない。」
「主任大変です―来てください―」
慌てて駆け寄ってきた従業員の声は、少し震えていた。その指先が、祭壇のぬいロボを指している。
「生き返っちゃいまいした。どうも死んでなかったみたいで」
「またか~、ホント、人間と同じだな!」私の頭には葬式中に生き返ってみんなびっくりなんて、世界衝撃映像がよみがえった。
だが違うと思い直した。今のぬいロボたちは、とにかく規格がメーカーや年式で統一されていなくて、ややこしいのだ。ネットワークを介して予備電源にアクセスしたり、遠隔でバックアップが作動したり……。おかげでこの手のトラブルが絶えない。
昔はもっと単純でバッテリーを抜けばそれで完全に終わっていたのに。
あわてて私も祭壇に駆け寄った。
「おばぁちゃん、退院待ってる……」
最後の力をふり絞りクマのぬいロボはそれだけを伝え、再び棺桶に倒れた。
私はすべての配線と記録媒体をくまなく点検し、家族に向き直った。
「ご臨終です」
「おばぁちゃん、あさって退院するんです」
やれやれ今日も一日が終わった。
従業員をみると、おや?ひじがすりきれている。そういえば最近体調が悪そうだった、早めにお針子に見せに行かねば……。私はスマホで予約を入れたが、やはりかなり混雑しているようだ。
家族葬でこじんまりとコースだ。
このところ我が葬儀社は少し活気づいてきた。
終活セミナーも忙しい。
本人がどうしたらいいんでしょうか?なんせ初めてでと、やってくることもあれば、ご家族がそろそろ生前整理をと前もっての準備を勉強しにくるケースもある。
本日一組目の葬儀がしめやかに始まった。お名前は「木村コロちゃん」年齢8歳。なるほどなぁ。まぁ今はもう少し寿命が延びているかな。
生前彼が好きだった童謡が次々と会場に流れ、故人の愛らしい生前がしのばれる。
読経の中、祭壇の遺影は真面目な顔なのかすましているのかわからない表情をしている。
みんなそうだ。
あ、最近は表情が変えられるタイプも多いから、哀しい顔や変顔の遺影もあるのだが。
友人としてピンクのウサギやら、黄色い鳥の姿が見えた。鳥型のぬいロボは足が短いので歩く姿がたどたどしい。略さずに言うとぬいぐるみロボット。
彼らも沈痛な面持ちで焼香をすませたようだ。あたりには線香の煙が立ち込め、喪主家族達はすすり泣いている。この線香は無香タイプ、線香の匂いがぬいぐるみに染みついて困ると苦情が多かったのだ。
カメラの様子を確認してみよう。機材のトラブルなどもってのほかだ。この葬式はライブ配信中。と言っても、全世界に公開されるわけではない。ご家族の要望で入院中のおばぁちゃんの病床にタブレットでこの葬式を届ける。オプションサービスだ。
そう、わが葬儀社は最近ぬいロボの葬儀で忙しい。
ロボットよりもぬいぐるみにAIが入ったタイプの方が、普及度が高いのだ。
人型よりも、可愛いし癒される。特に一人暮らしのお年寄りには、なくてはならない存在らしい。
もちろん、生活の補助として料理や掃除もしてくれる。わが家にももちろん2匹いて、子供たちもかわいがっている。
人の葬儀は減り、ペットの葬儀も減ったが、このおかげで私たち町の葬儀屋は生きながらえている。
ちなみに、体をもたないAIの葬儀と言うのもある。
これは実店舗を持たないネットの葬儀サービスが主に活用される。
終活セミナーでも『記憶を新しい体に移せないんですか?』とよく聞かれるが、安全性の問題でまだ一般向けには認可されていない。」
「主任大変です―来てください―」
慌てて駆け寄ってきた従業員の声は、少し震えていた。その指先が、祭壇のぬいロボを指している。
「生き返っちゃいまいした。どうも死んでなかったみたいで」
「またか~、ホント、人間と同じだな!」私の頭には葬式中に生き返ってみんなびっくりなんて、世界衝撃映像がよみがえった。
だが違うと思い直した。今のぬいロボたちは、とにかく規格がメーカーや年式で統一されていなくて、ややこしいのだ。ネットワークを介して予備電源にアクセスしたり、遠隔でバックアップが作動したり……。おかげでこの手のトラブルが絶えない。
昔はもっと単純でバッテリーを抜けばそれで完全に終わっていたのに。
あわてて私も祭壇に駆け寄った。
「おばぁちゃん、退院待ってる……」
最後の力をふり絞りクマのぬいロボはそれだけを伝え、再び棺桶に倒れた。
私はすべての配線と記録媒体をくまなく点検し、家族に向き直った。
「ご臨終です」
「おばぁちゃん、あさって退院するんです」
やれやれ今日も一日が終わった。
従業員をみると、おや?ひじがすりきれている。そういえば最近体調が悪そうだった、早めにお針子に見せに行かねば……。私はスマホで予約を入れたが、やはりかなり混雑しているようだ。
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