元猫、魔法学園で屋上サロン作ってます!ローズフェスタと恋の行方は?

チャイ

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21話 君を思い思われる

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聖薬師協会の手先たちが連行された後、迎賓館に戻った一同。
シモンがあたたかなお茶を運んできた。

「やっと……終わったのね」セレスティアが深く息を吐く。
「はぁ、長かったですよね。数カ月間、気が休まる暇がなくて、すっかりダミドク茶中毒ですよ、私なんて。
まぁ、一番大変だったのは、研究されていたアレクシス様達と学園の方々でしょうが」

しばらく無言でお茶を飲む一同。緊張の糸が切れたように、みんなの表情に疲労と安堵が浮かんでいた。

「それにしても、ミアの体が無事でよかった」サクラがようやく口を開く。「アレクシス様、感謝だぜ。
あいつら、ずっとお互いのことばかり心配してたもんな」

「こんな大変な時期に気づくなんて、おふたりらしいというか」シモンが苦笑いする。

「危機を乗り越えて、やっと素直になれたのですわね」セレスティアが優雅に笑った。

「ううっ、恥ずかしいニャ!」

突然、ミアの声が響いた。みんな振り返る。
「あ、えっと……その……聞こえちゃって」ミアが真っ赤になる。

アレクシスも後ろから現れた。
「僕も聞いていた。君たちには、随分と心配をかけていたようだ」

「お前ら、マジでじれったかったんだぜ!」サクラが両手を上げる。

寄り添う二人に拍手をしながらみんな二人に祝福の言葉を投げかけた。



十一月も終わりに近く、空は高く澄んでいた。
少し肌寒い日もあるけれど、週末に文化祭が行われる聖アルカディア学園は、どこもかしこも賑やかなざわめきに包まれていた。

オータムフェスタ──聖アルカディア学園「秋の文化祭」は、近隣住民や父兄にも開放されている。子供たちも多く訪れる、学園最大の催しだ。

「今年こそは、バザーで売り上げを上げようではないか!」

手芸部の部室では、会計係の先輩が拳を振り上げて絶叫していた。いつもは優雅に薔薇だらけの帽子作りにいそしむ先輩だがやる時はやるのだ。

「毎年削減される我が部の部費、それを今回の売り上げで補うのだ!」
「おおお~!」

自称芸術性の高い品々。奇抜で実用性のない商品ばかりで万年不人気の手芸部。でも今年は違う。今年こそは!

「猫耳カチューシャはどうでしょうか?」
ミアの提案に、部室内がざわめいた。
「それよ、それなのよ~!」
部長が涙を流さんばかりに感動している。

パチパチパチと拍手が起こり、手芸部は猫耳カチューシャ、猫の肉球手袋、そして猫型ポーチを作って販売することが決定した。

「よし、他にも料理同好会のジャム作りのパッケージデザインも手伝うぞー!」
「おー!」
ミアの忙しい準備の日々が始まった。



文化祭当日。手芸部の教室は……。
ワイワイガヤガヤと人でにぎわい、特に女生徒が多く押しかけていた。

「うわあああ、人がいっぱい!」
「やった!やったよ部長~!」
予想以上の大繁盛ぶりに、部員たちは大興奮だった。

風紀委員として校内を巡回している二人が姿を見せた。

「アレクシス様、シモン様も、どうぞつけてみてください!」
ミアがキラキラした目で猫耳カチューシャを差し出すと──

「話に聞いていた通り、よくできてるね」
アレクシスがなんのためらいもなく、さらっと頭につけた。
「にゃっ!黒猫ちゃん!」
ミアは何度か試作品を試してもらっていたので見慣れた光景だったが、周囲は騒然となる。

「え?アレクシス様が?」「うそ、つけてる!」「え、イケメンすぎる!」
周りがざわつく中、シモンは渋い顔で「はぁ……」と深いため息をついた。

「シモン様も、どうぞ!」
ミアに熱心に勧められ、シモンは観念したように猫耳カチューシャを手に取った。
「仕方ないな、ったく……」
ブツブツ文句を言いながらも、結局はめることに。

次の瞬間、教室に悲鳴のような歓声が響き渡った。

「うわあああ!シモン様超可愛い~!」
「なにあれ、反則すぎるでしょ!」
「シモン様の目つきの悪さが、逆に猫っぽくて最高!」

ぱっつん前髪のおかっぱ頭のシモンが猫耳カチューシャをつけると、予想外の破壊力だった。女子生徒たちは興奮のあまり、押し寄せてくる。

「っ……な、なんだ君たちは!風紀を乱すな!」
シモンは赤面しながら叫んだが、その姿がまた可愛らしく、ますます大騒ぎになっていった。

ミアはアレクシスにさりげなく握らされた紙切れをこっそり広げた。『6時に屋上で』と、それだけ書かれていた。

(それまで会えないけど、6時には会えるんだ!)
胸がキュンと高鳴った。

「あの、ミアさん」
ニコニコ顔のミアに、シモンが真剣な顔で尋ねた。
「ダミドク茶は販売されないのですか?」

「え?ここ手芸部ですよ?」
「あなたの村のダミドク茶でないと、もう効果が出ないんです!ぜひ販売をお願いします!なんなら、学園の購買部と村で販売ルートを正式に作って——」

「ちょっと待って、落ち着いて!祖母に話してみますから」
ミアは慌てて手をひらひら振った。シモンの熱心さが怖い。



そんな騒ぎをよそに、手芸部の猫グッズは飛ぶように売れていく。
アレクシスが感心したようにつぶやいた。
「残念だが、これでは僕が買うのはやめておいた方がよさそうだな」

シモンも彼に同意しつつ、ため息をついた。
あのご様子では、アレクシス様、手芸部丸ごと買い占める気満々でしたね。ミア嬢への溺愛っぷりったら……。

「あ、そのリボン、アレクシス様からって聞きました!」
「素敵ですね~!」

ミアの髪につけられたピンクのリボンに気づいた女子生徒たちが、キラキラした目で見つめてくる。

「そうなんです!お嬢さんたちお目が高いですわ~!あれが噂の幸運のリボン」
部長が1オクターブ高い声を出して、彼女たちにリボンの数々を見せた。

リボンは色とりどりだった。
素材も様々、シルクやサテン風の光沢のあるタイプ、透けるシースルー、水玉やストライプなど柄入りのもの。そしてレースのリボン。
好きな長さだけ買うことができる量り売りだ。

「これがうわさの幸運をもたらす光るリボンですのよ!」
部長は得意満面で胸を張った。

王都随一の高級服飾店の娘である部長の審美眼は確か。お客さんに似合うリボンをちゃちゃっと見繕うのも得意技だ。夜道でほんの少しだけ光る魔法がかけられているリボンは、あっという間に完売した。

「部長、すごいです!」
「やったね~!」
手芸部、大勝利である。
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