【三章完結しました】チートは無いけどAIがある!社畜OLの異世界立身出世録

星 見人

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第13話 【エルフの姫とゴブリンたち】

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 湯ノ花の里の朝は、今日もにぎやかに始まっていた。帳場に並ぶ帳簿を前に、ミサトは目をこすりながらリリィの音声を聞いている。

『はい。ミサト。 リュシアさんについてですが……体内の魔力反応、一般的なエルフの二倍を超えていますね』
「え、二倍って?……えらく盛ってない?魔力の基準がわからんけど… つまり超エリートってこと?」
『はい。ミサト。 言い換えれば“エルフの王クラス”です』

 ミサトは思わず目を剥いた。
(やっぱり只者じゃないとは思っていたけど、本当に姫様か……!)
 リリィが淡々と告げる言葉に、ミサトの背筋が伸びる。

◇◇◇

 その頃、、
 里の作業場では、ゴブリンたちが汗を流しながら木材を運んでいた。
 そこへふらりと現れたのはリュシア。昨日と同じ、深いフードをかぶった姿だが、隠しきれない気品がにじみ出ている。

「おい、姫さんよぉ!」
 木材を抱えたゴブ五郎が、口をとがらせて言った。
「どうせお前もオレたちのこと、汚ぇって思ってんだろ? エルフは皆そうだ。オレたちを“鼻つまみ扱い”して近寄らねえ」
 隣のゴブ三郎もうなずく。
「あぁ!そうだっ!お前だって同じだろ。森じゃオレたちは追い払われるだけだ」

 リュシアはぱちりと瞬きをし、首をかしげた。
「……え? なぜ?別に貴方達臭くないわよ」
 その声音は心底不思議そうで、非難や蔑みの気配は欠片もなかった。
「昨日、あなたたち子どもを背中に乗せて遊んでいたでしょう? こんな優しい貴方達を、どうして汚いなんて思えるの?」

「んんっ!?な、なに……?」
「オレたちが優しいだと……??」

 ゴブリンたちは目を白黒させる。
 リュシアはにこりと微笑んだ。
「えぇ。力強く働いて、子どもに笑顔をくれるあなたたちを、私はとっても誇らしく思うわ」

「ん……っ!」
 顔を真っ赤にして、二匹は慌てて視線をそらした。
「ぐ、偶然だ! たまたま遊んでただけだ!」
「そ、そうだそうだ! 勘違いすんな!」
 だが尻尾はブンブン揺れている。

 その様子を遠巻きに見ていたミサトは、思わず口元を押さえた。
(ぷっ!あの二人タジタジじゃん♪やるなぁ、リュシアさん……これ、完全に心つかんでるじゃない)

 耳元でリリィがささやく。
『はい。ミサト。 天然の人心掌握力ですね。あれは交渉術としても超一級です』

「うぐぐ……なんか悔しいな…  私の地道な労働交渉スキルが一瞬で……!ぷぎゅゅ~」
 思わず机に突っ伏すミサトを見て、リュシアは首を傾げ、ゴブリンたちは妙にそわそわと鼻をこすっていた。

◇◇◇

 その夜。
 帳場でミサトはこっそりリリィに問う。
「ねえ……リュシアさんって、本当は……物凄い…」
『はい。ミサト。 ただの姫ではなさそうですね…。推測するに“リュシア•ノクティルカ”  エルフ純血王家の直系ですね』

 その名を聞いた瞬間、ミサトは息を呑んだ。
 リュシア本人は気づかぬふりをしているのか、ただ静かに月を見上げていた。

◇◇◇

 同じ頃、森の奥。
 エルフの捜索隊が里に向けて進み始めていた。
「リュシア姫を必ず見つけ出せ! 人間どもに知られる前に……!」
 夜風がざわめき、緊張の気配を運んでくる。
 湯ノ花の里の平穏は、確実に揺らぎ始めていた。

◇◇◇
 
 夜、、
 森を抜け、松明の光が里の外れに近づいていた。十数名のエルフ兵が静かに進む。尖った耳が風をとらえ、鋭い目が獲物を探す。

「報告ではここだ……この里に姫がおられる」
 隊長格のエルフが低く告げる。
「人間どもに囚われる前に連れ戻すのだ」

 その言葉に、隠れていた影がぴくりと動いた。
 ゴブ次郎たちだ。

「へっ……エルフが探してるエルフ?? ははぁ~ん!さては、頭がいいとわかるなぞなぞだな~♪テメェらがコソコソしてんのなんかわかってんだよっ!!」
 棍棒を肩に担いだゴブ次郎が、木陰から姿を現す。
 仲間たちも続く。十数名の兵に対して、たった五匹。だが一歩も退く気配はない。

「どけ。これはお前たちの関わることではない」
 エルフ兵が冷ややかに言い放つ。
「汚らわしく、臭い怪物風情が我々エルフの道を塞ぐな」

 その言葉に、ゴブリンたちの眼光が鋭くなる。
「……まただ。どいつもこいつも、お前らはオレたちを鼻つまみ者扱いしやがる!!」
「けどな、ここには……エルフなのに俺たちに優しくしてくれる奴が一人いるんだなぁ~」

 思い浮かぶのは、リュシアの微笑み。
 、、「どうして汚いなんて思えるの?」
 その一言が、胸の奥で燃えるように力をくれる。

「へへっ!だからここから先は通せねぇなっ!」
 咆哮と共に、ゴブリンたちは飛び出した。
 エルフ兵の剣が閃き、弓隊が弓を引き絞る。
 ゴブリンの棍棒が木の破片を散らす。

 圧倒的に不利な戦いだ。だがゴブリンたちは怯まない。
 一人が剣を受け止め、もう一人が背後から飛びかかる。牙を剥き、拳を叩きつける。
 エルフ兵が呻き、よろめく。

「おのれ……獣の分際で!」

 刃が振り下ろされる、、
 その瞬間、ゴブ三郎が体を投げ出した。
 血が飛び散る。だが彼は笑った。
「あ~はっはっ!効かないねぇ!生きて帰って、エルフの姫さんの言葉をまた聞くんだ!!」真剣な目でエルフ兵を睨む。

 その姿に、言葉に、仲間の怒りが爆発する。
 棍棒が折れ、拳が砕けても、ゴブリンたちは立ち上がり続けた。

 エルフ兵はゴブリンたちの猛攻により、負傷者続出で一時退却を余儀なくされる。
 
 月光の下で息を荒げるゴブリンたちの背に、里の灯が揺れていた。
 鼻血を垂らしながらゴブ次郎が声を出す。
「おぉ~い?お前ら、みんな生きてるか~?」
「へへっ!何とかな!」
「次郎ちゃん、、血が止まんないけどこの傷、ハナクソでくっつくかな??」
「あははっ!サブ、汚ねぇな!ボスにまた怒られんぞ!さぁ、血洗って里に帰っか?」
「「「おぉう!」」」

 彼らはもう、“ただの怪物”ではない。
 守るものを得た、誇りある戦士だった。


          続
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