脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

文字の大きさ
139 / 209

特別な土

しおりを挟む
魔法の絨毯に乗り、リディアたちは地図の矢印に導かれるまま雲海を進んだ。やがて視界に現れたのは、真っ赤な溶岩が流れる火山島だった。熱気が漂い、ゴウゴウと音を立てる噴煙が空へと立ち上る。

「ここが目的地みたい……火山島ってなんだか怖いけど、特別な土が見つかるかもしれないね!」
リディアは少し緊張しながら絨毯を島に着地させた。メリーちゃんが「メェ!」と勇気を出すように鳴き、タフィーちゃんは「ぷるぷるん!」と弾んで島の様子を観察している。

火山島の地面は黒い火山灰で覆われており、ところどころに溶岩が流れている。リディアは慎重に足元を確認しながら、灰の隙間を覗き込んだ。

「これ、普通の土じゃないよね。火山灰って、もしかして植物の肥料になるのかな?」
そう言いながら近くの地面を掘っていると、小さな変わった植物が目に入った。鮮やかなオレンジ色の花をつけた小さな芽が、火山灰の隙間から顔を出している。

「こんな熱い場所でも育つなんて……すごい生命力!」
リディアは驚きながら植物をそっと摘み、メリーちゃんのふわふわの毛に丁寧に収納した。

その後、リディアは火山灰をかき集めて肥料袋に詰め始めた。メリーちゃんが鼻先で袋を支え、タフィーちゃんは周囲を見張りながらリディアをサポートしている。袋が一杯になるたび、メリーちゃんがふわふわの毛の中に収納していく。

「こんなに集めたら、浮島の植物も元気に育つはず!」
リディアは袋を詰め終わり、ほっとした表情を浮かべた。

しかし、作業を進める間に火山が「ゴゴゴ……」と低い音を立て始めた。リディアは思わず顔を上げ、噴煙が勢いを増しているのに気づく。

「や、やばいかも……早くここを出よう!」
メリーちゃんとタフィーちゃんも緊張した様子で頷き、リディアたちは急いで絨毯に飛び乗った。熱気が背中に迫る中、絨毯は地面を離れ、火山島を後にした。

雲海に戻ると、リディアは胸を撫で下ろしながら言った。
「ひやひやしたけど、特別な土も手に入ったし、植物が元気に育つといいな!」
メリーちゃんが「メェ!」と鳴き、タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と弾んで賛同する。


リディアたちは魔法の絨毯で再び芝生と土の広がる島に降り立った。リディアは深呼吸をして、目の前に広がる庭園の基盤を見つめた。

「よし、火山灰を使って植物たちをもっと元気にしてあげよう!」
リディアが意気込むと、メリーちゃんが「メェ!」と応えながらふわふわの綿菓子毛を揺らし、火山灰の入った袋を次々と取り出した。

「ありがとう、メリーちゃん! じゃあ、さっそく始めるね!」
リディアはスコップを手に取り、地面を丁寧に掘り起こしながら火山灰を混ぜ始めた。黒い灰がふかふかの土と混ざり、少しずつ庭が活気を取り戻していく。

リディアがせっせと作業をしている間、メリーちゃんとタフィーちゃんは島の中央にある鳥を閉じ込めたクリスタルへと足を運んだ。クリスタルは島の中心に浮かび、微かに光を放ちながら静かに揺れている。

メリーちゃんは「メェ?」と小さく鳴き、ふわふわの鼻先をクリスタルに近づけた。透き通った中には、まるで彫刻のように美しい鳥の姿が閉じ込められている。タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と弾みながら、クリスタルを興味深げに見上げた。

クリスタルは時折、淡い光を放ち、そのたびに鳥の彫刻が動いているように見える。メリーちゃんがそっと毛を伸ばして触れようとすると、クリスタルがかすかに反応し、周囲に一瞬だけ暖かな光が広がった。

「メェ……?」
メリーちゃんは不思議そうに鼻をひくひくさせ、タフィーちゃんも「ぷるぷるん?」とクリスタルを観察し続けた。

リディアは地面に火山灰を撒き終えると、スコップを置いて背筋を伸ばした。
「ふぅ……これで植物も元気になってくれるといいな!」
彼女は手を払いつつ中央の様子に目を向け、メリーちゃんとタフィーちゃんがクリスタルの周りで何かをしているのに気づいた。

「二人とも、何か見つけたの?」
リディアが近づくと、メリーちゃんが「メェ!」と鳴いてクリスタルを指し示した。その光の揺らぎと、中に閉じ込められた鳥の美しさに、リディアも思わず息を呑んだ。

「すごい……こんなに近くで見ると、もっと不思議な感じがするね。このクリスタル、何か秘密が隠されてるのかな?」
リディアはそう呟きながら、クリスタルの周囲をじっくり観察し始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...