沈みゆく赤い島

ねむたん

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1章

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 次の日、教室に集まった5人は、先生のために何ができるか真剣に話し合っていた。普段はふざけることが多い海斗も、このときばかりはリーダーらしい顔つきで言う。

「とにかく先生を元気にするには、先生が好きなことをするのが一番だろ」

「やっぱりフラダンスじゃない?」

 悠人があっさり提案すると、七海がすぐに首を振った。

「いやいや、それは前にやったでしょ!何か新しいことをしなきゃダメだよ」

「じゃあ、先生の好きなものをプレゼントするのはどう?」

 陽菜が控えめに提案すると、颯太が手を挙げた。

「僕、お花摘んでくる!」

「お花もいいけど、それだけじゃ地味じゃない?」

 七海が悩むように言う。

「じゃあさ、プレゼントも用意して、何か面白いことを一緒にやるとかどう?」

 海斗が言うと、全員がうなずいた。

「それで、面白いことって何?」

 陽菜が聞き、みんながしばらく考え込む。
 すると、悠人がぽつりと言った。

「川遊びはどう?」

「川遊び?」

 七海が目を丸くする。

「先生、滝のある川が好きって言ってたじゃん。みんなで行って、川で遊びながら何か楽しいことをしようよ」

 悠人の案に、ほかの4人は顔を見合わせたあと、頷いた。

「いいじゃん、それ!」

 海斗が笑いながら拳を握る。

「先生を川に連れて行って、みんなで遊んで、元気にしてあげよう!」

「じゃあ、プレゼントはどうする?」

 陽菜が気にすると、七海がニヤリと笑った。

「それは私たちが準備するから、みんなも協力してね!」


 放課後、5人は先生を校庭に誘い出した。七海が走り寄って、腕を掴む。

「先生!今日は特別な場所に行こう!」

「特別な場所?」

 先生は首を傾げたが、七海の熱心な様子に少し笑みを浮かべた。

「どうして?」

「それは行ってからのお楽しみ!」

 海斗が横で笑い、颯太が先生の手を引く。

「早く早く!」

 渋る先生を連れ、子どもたちは滝のある川へと向かった。途中、草むらを飛ぶバッタを見つけて立ち止まったり、川沿いの石を拾っては投げたりと、相変わらずのにぎやかさだ。


 滝の前に到着すると、先生は驚いたように目を丸くした。「ここ、お祭りで来た川ね。昔、この辺りでよく遊んだのよ」

「そうでしょ!先生もここ好きかなって思ったんだ!」

 七海が胸を張る。

「で、せっかくだから!」海斗が大声を上げる。「今日はみんなで遊ぶんだ!」

 颯太は早速靴を脱いで川に飛び込む。

「ひんやりして気持ちいい!」

 陽菜は少し迷いながら足を水に入れ、「冷たいけど、確かに気持ちいいね」と微笑む。

 悠人は川辺の石を拾い上げて、「この形、先生に似てるかも」と言って笑いを誘う。

 先生はその光景を見ながら、次第に顔をほころばせた。

「みんな、ありがとうね。私、なんだか元気が出てきた気がする」

「まだ終わりじゃないよ!」

 七海が声を張り上げる。彼女が手にしていたのは、小さな花束と、子どもたちが寄せ書きしたメッセージカードだった。

「これ、先生に!」

 先生は驚きながら受け取り、花束とカードをじっと見つめた。

「みんな…こんな素敵なことをしてくれるなんて…」

「先生、これで元気になったでしょ!」

 颯太が嬉しそうに言うと、先生は笑顔でうなずいた。

「ええ、とっても元気になったわ。本当にありがとう」

 夕焼けが川辺を染める頃、子どもたちの笑い声と水しぶきの音が滝の音に混ざって響いていた。先生の笑顔を取り戻したことで、5人はまたひとつ、忘れられない思い出を作ったのだった。
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