左遷太守と不遜補佐 ―柳は青、花は赤―

佐竹梅子

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左遷太守と不遜補佐・4

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青明は手のひらをひらりと城門のくぐり口へ向け、赤伯を先に歩かせた。

中間部育ちの赤伯にとって、初めての地方都市だ。中間部といえば、王が君臨し財の豊富な貴族や旅の異国民が行きかう繁栄の王都から、幾筋かの山波を挟んでそれなりに栄えている。決して生活が楽だと言い切れるほどではないが、太守の統治も行き渡り、苦しい生活を強いられていた訳ではなかった。

赤伯を育んだ中間部の都市・菘斗《すうと》もまた、人の流れを王都から汲んでいることもあり、生家である宿屋に閑古鳥が鳴くことはなかった。だからこそ、家長の座を姉婿となる予定の青年に譲り、長男ながらも守備隊を希望して家を出たのだ。

「俺、地方って初めてなんだよ。どんな風なのか、ずっと楽しみにしてたんだ」

地方とはどういうものなのだろう。

やはり中間部よりは、長閑な田園風景が広がり、人々は温かく助けあって生きている……そんなことをぼんやりと思いながら、地方都市なりの風景を期待した赤伯の目に映ったものは――。

「え?」
「ようこそいらっしゃいました、都市・心芹《しんきん》へ」

赤伯の目の前に広がるのは、灰色、または砂ぼこりの色、と言ったらよいか。そのように、あまり色彩の豊かでない風景であった。
市場は立っているが、活気というものが一切感じられない。売られている野菜はやや萎び、食事処からは温かな湯気の匂いさえ漂ってこなかった。

行き交う民は赤伯をちらりと一瞥するが、なにやら怯えた目や寂しそうな目をした者、またはなにかの欲にまみれてぎらつかせた目をした者ばかり。
ほどよく栄えた中間部では、このような人々を目の当たりにすることなどなかった。ほんの少しの距離が、なぜこのような現実を生んでしまうというのか。赤伯には、皆目見当もつかない。

「地方都市、でございますからね」

唖然とした赤伯の様子に驚きもせず、淡々とした声が答えるように言う。まさに、望んでいた言葉だろうと、容赦なく告げる。

「特に夜歩きは、女子供でなくとも危険な地域です。先の太守さまはならず者に殺され、その前の太守さまは追剥にあい行方不明に。その前は、」
「もっ、もういい! いいから! さっさとタイシュカンとやらに連れていってくれよ!」

赤伯は青ざめて、半ば嘆願するかのように青明を見た。恐ろしくなった訳ではない。なぜこのような有様の都市が存在してしまうのか、その実情が彼には分からず、また、知らなかったことに怒りを覚えたからだ。

許せない。いままでののうのうと暮らしてきた、自分が。
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