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赤髪の花婿・11
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うっすらと瞼を開け、苦しそうに起き上がろうとする翠佳の肩を抱き支えると、彼の寝巻に赤くべっとりとした物が染みついた。
それは赤黒い血であった。
翠佳は自らの肩から腕に流れる血を認識すると、また倒れてしまいそうに視線をぐらつかせた。
「どうしたんですか? いまの悲鳴は……はっ、これは!」
「きゃー! ひっ、人殺しだわ!」
泊まり込みの衛兵と女官も集まり、場は一層騒然とし始める。
「っ……わ、わたくし……う、腕を、切りつけられて……」
「え?」
翠佳が指をさした方向……見たくはなかった。けれど、見てしまった。
――指の先には、気を失ったように倒れる青明。
彼の人の手に、しっかりと小刀が握られていた。その刃先には、翠佳の腕を流れるのと同じ色の……血が、べっとりと付着していた。
「……なんで、そんな」
「んん……痛っ……」
「青明!」
翠佳に遅れて、青明もぼんやりと目を開ける。痛むのだろう。頭を押さえて、ゆっくりふらつきながら上体を起こす。
「お前だな! 補佐様に危害を加えたのは!」
「……なに、を?」
まだ意識を取り戻したばかりだというのに、衛兵は青明の手首をきつく掴むと、乱暴に立ち上がらせる。その拍子に、まだ覚束ない足元に、からんと音を立てて、刃物が地面を転がった。
「まっ、待て! 青明にも話を……」
「いけません、太守様! まずは我々が」
「青明……っ、青明!」
一歩も退かぬ様子の衛兵は、赤伯から青明を引きはがし、彼を連行しようと暴れもしない身を強く押さえつける。
「わ、わたしは……」
青明は血の気がひいた顔色をしていたが、瞳は相変わらず感情を殺したままだ。
開きかけた唇は意思を失い、容易に閉ざされた。
「立て! この人殺しが!」
そして、青明は衛兵に取り囲まれても何も言わず、やがて連れ去られていく。
「さあ、翠佳様も、参りましょう!」
「手当をしなければ……ああ、おいたわしい」
女官に支えられ、血の流れる左腕を押えながら翠佳さえもその場から立ち去った。
「なんだよ……なんだよ、これ……」
嵐に取り残された赤伯は、ただ茫然と、地面に落ちた飾りの羽織を見下ろすしかできなかった。
そこに付着した血が、妙に生々しくぎらぎらと光って見えた。
赤伯の元に報告が寄せられたのは、それから半日が経った頃だった。
夜が明け、補佐として赤伯を起こしに太守館へ出仕した翠佳であったが、そこで青明に話があると引き留められた。
そして突然刃物を向けられ、もみ合っているうちに翠佳は自己防衛で青明を突き飛ばし、自身は出血と恐怖で気を失った。というのが、事の全容……らしい。
それは怪我を負った翠佳、駆け付けた衛兵、泊まり込みの女官らの意見を総括したもので、いまだ青明への取り調べは始まっていなかった。
「太守様のご友人として近くに取り立てていただいておきながら、我が娘に手をかけるだなんて……なんて恐ろしい人なのかしら」
太守の執務室には、怪我をした翠佳のかわりに、漣緋が訪れていた。
漣緋は心底悍ましいといった様子で、青明のことを責め続ける。
それは赤黒い血であった。
翠佳は自らの肩から腕に流れる血を認識すると、また倒れてしまいそうに視線をぐらつかせた。
「どうしたんですか? いまの悲鳴は……はっ、これは!」
「きゃー! ひっ、人殺しだわ!」
泊まり込みの衛兵と女官も集まり、場は一層騒然とし始める。
「っ……わ、わたくし……う、腕を、切りつけられて……」
「え?」
翠佳が指をさした方向……見たくはなかった。けれど、見てしまった。
――指の先には、気を失ったように倒れる青明。
彼の人の手に、しっかりと小刀が握られていた。その刃先には、翠佳の腕を流れるのと同じ色の……血が、べっとりと付着していた。
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「んん……痛っ……」
「青明!」
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「お前だな! 補佐様に危害を加えたのは!」
「……なに、を?」
まだ意識を取り戻したばかりだというのに、衛兵は青明の手首をきつく掴むと、乱暴に立ち上がらせる。その拍子に、まだ覚束ない足元に、からんと音を立てて、刃物が地面を転がった。
「まっ、待て! 青明にも話を……」
「いけません、太守様! まずは我々が」
「青明……っ、青明!」
一歩も退かぬ様子の衛兵は、赤伯から青明を引きはがし、彼を連行しようと暴れもしない身を強く押さえつける。
「わ、わたしは……」
青明は血の気がひいた顔色をしていたが、瞳は相変わらず感情を殺したままだ。
開きかけた唇は意思を失い、容易に閉ざされた。
「立て! この人殺しが!」
そして、青明は衛兵に取り囲まれても何も言わず、やがて連れ去られていく。
「さあ、翠佳様も、参りましょう!」
「手当をしなければ……ああ、おいたわしい」
女官に支えられ、血の流れる左腕を押えながら翠佳さえもその場から立ち去った。
「なんだよ……なんだよ、これ……」
嵐に取り残された赤伯は、ただ茫然と、地面に落ちた飾りの羽織を見下ろすしかできなかった。
そこに付着した血が、妙に生々しくぎらぎらと光って見えた。
赤伯の元に報告が寄せられたのは、それから半日が経った頃だった。
夜が明け、補佐として赤伯を起こしに太守館へ出仕した翠佳であったが、そこで青明に話があると引き留められた。
そして突然刃物を向けられ、もみ合っているうちに翠佳は自己防衛で青明を突き飛ばし、自身は出血と恐怖で気を失った。というのが、事の全容……らしい。
それは怪我を負った翠佳、駆け付けた衛兵、泊まり込みの女官らの意見を総括したもので、いまだ青明への取り調べは始まっていなかった。
「太守様のご友人として近くに取り立てていただいておきながら、我が娘に手をかけるだなんて……なんて恐ろしい人なのかしら」
太守の執務室には、怪我をした翠佳のかわりに、漣緋が訪れていた。
漣緋は心底悍ましいといった様子で、青明のことを責め続ける。
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