リサA.D.3225

なつのかぜ

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Part5

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俺たちの生活に変化が起きたのは、リサと
暮らし始めて二十年が経った頃だった。

リサを教育したおかげで彼女はかなり人間
らしくなって来てた。

彼女は最近、冗談も言うようになった。


でもある日、海で泳いでいると、リサは
いきなりこう言った。

「ねえ、ジョン! 私、あなたのことが好
きよ! あなたは私のこと好き?」

いつもと違い、彼女の表情は輝いていた。

「リサ、好きに決まってるだろ! 俺は君
のことが世界中で一番好きだ!」

「じゃあ、私のオシッコが飲める?」

「えっ…」

彼女のこの言葉を聞いた時、俺は一瞬、
全身に鳥肌が立った。

人間に従順なはずのクローンがこんな言葉
を発するなんて…。

しかもリサは控えめな性格で、性的志向は
ノーマルに設定されている。

人間がアブノーマルな志向を手ほどきすれ
ば別だが…。


さらに驚いたのは、その後、彼女が立ち
泳ぎしながら近づいて来て、俺の胸を激
しく叩いたことだ。

「もうジョン、本当は私のこと嫌いなんで
しょう!」

彼女は泣きながら怒ってた。

リサは明らかに精神のバランスを崩して
いる…。

俺はそう思った。


◇◇


その日、リサは家に帰っても、家事を一切
やらなかった。

二十年間、一度も家事を欠かしたことがな
かったのに。

彼女はベッドに入ったまま、ずっと泣いて
いる。

彼女の心の中で、何か訳の分からない葛藤
が起きているようだった。


しばらくして、彼女はこう言った。

「ジョン、取り乱してごめんなさい。私、
自分の中に、もう一人自分が居るような
感じなの」

「いいんだよ、リサ。明日、ジェンキンス
博士に連絡を取ってみるよ」

リサはコックリと頷いた。

俺は一晩中リサを抱きしめ、夜を明か
した。
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