神様自学

9月24日 大騒ぎ

21日に片付けを終え、22、23日は振り替え休日となった。今日は24日。久々の普通の授業日に、憂鬱になる生徒も多いだろう。
「おはよう」
「あ、おはよー」
「はよーっす」
荷物を置き、利羽と紗奈の会話に混ざろうとした時、廊下から大きな足音が聞こえた。
「藤上！！！待て！！！！」
普段あんな声を出せそうもないほど体調の悪そうな私達の担任、青海川おうみかわ  空太そらた先生が走っているのが見えた。藤上、と呼ばれたので結佑人くんを疑ったが、違ったらしい。呆れたような顔をして、窓際で立っているのが見えた。
となると、他の藤上さん。女の子のスカートの影が見えたので、考えられる可能性は。
「藤上の年子の妹、実栗ちゃんね」
由芽の声に、ビクッと肩を震わせる。
「他に藤上って名字はいないから、確定でしょ」
「…あいつ子供っぽい所あるからなぁ…」
由芽が藤上くんの方に向いてそういうと、藤上くんは面倒くさそうに呟いた。
「さて、あの青海川先生が焦るってことは、これから何が起こるでしょう」
「…えぇと、化学の先生だから…」
きゃぁあ、と悲鳴が聞こえて廊下に出ると、廊下は煙に包まれていた。
「何！？」
「うわっ！？」
咳き込んでいたり、叫ぶ声。私も目の前が何も見えないくらい濃い煙に包まれる。
やがて目を開けると煙は無く、いつもより視界が高く思えた。近くにはメモを取っている男子。目の前には男子生徒を捕まえようとする白衣を着た女性の先生。白衣は、いつも青海川先生が着ているものに似ていた。
「…あーぁ…薬が…」
そう呟いた女性の先生は、スッと立ち上がって男子生徒から奪った空のビンを振った。
「お前らよく聞け。俺は青海川 空太だ」
女性らしい静かな声で、その女性は話しだす。
「藤上がばら撒いた薬は俺の作ったもので、吸った奴の…男性ホルモンと女性ホルモンを…あー、つまり性別が逆になる。それで、もう１つ」
青海川先生は割れたガラスの破片を１つ拾い上げた。
「衣服の繊維に干渉して、服の種類を作り変える厄介な薬も蔓延している。だからお前らは服ごと性別が変わってる。周りにいる男子生徒は女、女子生徒は男だ。鏡見れば分かる。午後から夕方には薬の効果も切れる筈だ。校長とか他の先生にも話してくるから」
そういうと、青海川先生は面倒くさそうに校長室に向かって歩き出した。
「てことは…由芽？」
「あ、夕音？」
先ほどのメモを取っていた男子生徒は、由芽だったらしい。姿が変わってるので一瞬誰か分からなかった。私が他の人の事が分からないように、私の姿も他の人からしたら分からないのだろう。
「…どうしよう」
「まぁ、どうとでもなるんじゃない？」
由芽がバッサリと言うのに、苦笑いしか出来なかった。