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11月14日 頼って欲しい
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片倉さんはそっと胸元のバラを抜いた。今にも花びらが落ちそうなバラをテーブルの上に置いて、片倉くんは静かに口を開く。
「…もとは8本を渡す予定でした」
8本。私の脳裏に言葉が浮かぶ。恋使は花にも詳しくなれるのがありがたい。
「…"貴方の思いやり、励ましに感謝します"ですよね」
「はい。私は何度もあの人に救われていますから、感謝を伝えたくて。あの人はいつも真面目で、しっかりしていて、凛としていて、それでいて脆いのです。私はそんな彼女を守りたいのです。出来ることなら、私の手で」
ヒントが多すぎる。ほぼ答えじゃないか。なんて茶化す気にもならない。片倉くんがバラを渡そうと思っていた相手は、
「花火ですね」
「…ご名答です」
片倉さんが少し表情を崩した。悲しそうに、寂しそうに。
「私は稲峰さんを支えたいのですが、彼女にはどうも全てを1人で抱え込もうとする癖があるみたいで。頼って貰えるようにしたいのですが、やり方も分からなくて…情けない話です。色々と挑戦して、頼って貰える方法を探し出せば良いのに、それで嫌われるのが怖くて、何も出来ないのです」
自嘲の笑みを浮かべ、片倉さんは窓の奥を見つめる。秋が終わりに近づいて、晴れながらもどこか冷たい寂しい空を見つめる。
「…1人で抱え込もうとする人を頼らせるのは難しいです。何故なら、彼女たちは頼るのが怖いから」
「怖い、とは…?」
花びらが舞いだす。小さく、白や紫、桃に薄く色付いた可愛らしい花だ。
「怖いのは"自分だけが頼る"ことです。彼女たちは、自分が頼られていることにあまり気付かない。気付いていたとしても、その見返りとして相手に求めない。頼られすぎる大変さを知っているから、頼れない。大変な思いをさせるなら、自分で。そんな思考なんです」
竜夜くんの説明を思い出す。頼り方が分からないのは、こういう頼られる側の事情を知っている、というのも関係あるだろう。片倉さんが頷くのを見て、私は続ける。
「もう一つあります。彼女たちが人に頼らない理由」
「それは何ですか?」
「人に頼った後の面倒を知っているんです」
「面倒?」
花びらがくるくると風に乗って踊る。風なんて吹いていないはずなのに、ふわふわと舞う。
「"人に頼る"って、面倒なんですよ。彼女たちにとって。だって、自分に時間があれば簡単に終わるんです。なのに人にやり方を教えて確認もして…って二度手間じゃないですか?それだったら最初から、自分でやった方が楽だと思いだすんですよ」
片倉さんは納得したようだった。そして、悲しそうな顔をした。
「…どうすれば、良いんですか」
「…そう思う人が側にいるなら、話は別なんですよ」
ふわっと私の手元に花が現れる。誰も不思議に思わない、不思議な力。
「タイムの花です。花言葉は勇気、行動力。貴方が花火のことを本当に想っているなら、行動してください。貴方が花火の腕を引いて、止めてあげれば良いんです。それは誰もが出来ることじゃないから」
桃紫がかった白の小さな花が連なった、優しい花。片倉さんがそっと手に取って、目を瞑った。
「…ありがとうございます。私、行動したいと思います」
片倉さんは凛々しい表情でそう言った後、掃除用具を持って部屋を後にした。
「…もとは8本を渡す予定でした」
8本。私の脳裏に言葉が浮かぶ。恋使は花にも詳しくなれるのがありがたい。
「…"貴方の思いやり、励ましに感謝します"ですよね」
「はい。私は何度もあの人に救われていますから、感謝を伝えたくて。あの人はいつも真面目で、しっかりしていて、凛としていて、それでいて脆いのです。私はそんな彼女を守りたいのです。出来ることなら、私の手で」
ヒントが多すぎる。ほぼ答えじゃないか。なんて茶化す気にもならない。片倉くんがバラを渡そうと思っていた相手は、
「花火ですね」
「…ご名答です」
片倉さんが少し表情を崩した。悲しそうに、寂しそうに。
「私は稲峰さんを支えたいのですが、彼女にはどうも全てを1人で抱え込もうとする癖があるみたいで。頼って貰えるようにしたいのですが、やり方も分からなくて…情けない話です。色々と挑戦して、頼って貰える方法を探し出せば良いのに、それで嫌われるのが怖くて、何も出来ないのです」
自嘲の笑みを浮かべ、片倉さんは窓の奥を見つめる。秋が終わりに近づいて、晴れながらもどこか冷たい寂しい空を見つめる。
「…1人で抱え込もうとする人を頼らせるのは難しいです。何故なら、彼女たちは頼るのが怖いから」
「怖い、とは…?」
花びらが舞いだす。小さく、白や紫、桃に薄く色付いた可愛らしい花だ。
「怖いのは"自分だけが頼る"ことです。彼女たちは、自分が頼られていることにあまり気付かない。気付いていたとしても、その見返りとして相手に求めない。頼られすぎる大変さを知っているから、頼れない。大変な思いをさせるなら、自分で。そんな思考なんです」
竜夜くんの説明を思い出す。頼り方が分からないのは、こういう頼られる側の事情を知っている、というのも関係あるだろう。片倉さんが頷くのを見て、私は続ける。
「もう一つあります。彼女たちが人に頼らない理由」
「それは何ですか?」
「人に頼った後の面倒を知っているんです」
「面倒?」
花びらがくるくると風に乗って踊る。風なんて吹いていないはずなのに、ふわふわと舞う。
「"人に頼る"って、面倒なんですよ。彼女たちにとって。だって、自分に時間があれば簡単に終わるんです。なのに人にやり方を教えて確認もして…って二度手間じゃないですか?それだったら最初から、自分でやった方が楽だと思いだすんですよ」
片倉さんは納得したようだった。そして、悲しそうな顔をした。
「…どうすれば、良いんですか」
「…そう思う人が側にいるなら、話は別なんですよ」
ふわっと私の手元に花が現れる。誰も不思議に思わない、不思議な力。
「タイムの花です。花言葉は勇気、行動力。貴方が花火のことを本当に想っているなら、行動してください。貴方が花火の腕を引いて、止めてあげれば良いんです。それは誰もが出来ることじゃないから」
桃紫がかった白の小さな花が連なった、優しい花。片倉さんがそっと手に取って、目を瞑った。
「…ありがとうございます。私、行動したいと思います」
片倉さんは凛々しい表情でそう言った後、掃除用具を持って部屋を後にした。
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