神様自学

天ノ谷 霙

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12月8日 ラッキーな日

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富くんの清歌さんの話は、清歌さんのおっちょこちょいの話が多かった。「携帯が見つからないの」と泣きながら電話して来たが、その番号が携帯のものだったこと、何もない場所で転びまくり、霙と富くんでガードしながら歩いたこと、バッグの中が重いと思ったら巫女服が入っていたことなど、学年を代表する天然おっちょこちょい、亜美でもやらなさそうなことばかりだった。清歌さんの話はそれだけでなく、年上らしく格好良い話もあった。その話をする時は、富くんが愛おしそうに空を見つめるので、こちらまで嬉しくなって微笑んでしまう。話を聞いているだけで楽しかったので、気付いたら神社まで数十メートルだった。前に見た清歌さんの巫女服が見えたので挨拶しようと影をしっかり捉えると、箒を乱暴に肩に担いでいた。驚いていると、相手もこちらをじっと見て、目を丸くした。
「あれ、富と…夕音!?」
「え、霙!?」
「お、今日はラッキーな日か」
「え?」
富くんの発言が理解出来なくて聞き返すと、富くんは笑って説明してくれた。
「霜月神社って娘が2人いることは有名なんだけど、その内1人しかほとんどいないから、もう1人の巫女が見られたらラッキーって噂があるんだよ。んで、そのもう1人の巫女が霙な」
「へ、へぇ…そうなんだ…」
霙は富くんの説明に嫌そうに顔を歪めた。
「…私だって手伝いたいけど、お姉ちゃんが先に帰って来て終わらせてるから、やることないんだよ…だからいつも裏でいろいろやってて…ってそんなこと分からないでしょうね!」
霙はそのままそっぽを向いてしまったが、あっと思い出したように再びこちらを向いた。
「そういえば何で2人で帰ってるの?お姉ちゃんというものがありながら」
「そのお姉ちゃんが原因でこうなってるんですけど」
「はぁ?」
霙が困惑して首を傾げていると、奥から誰かが手を振りながら走ってくるのが見えた。長い髪がふわふわと揺れて、思いっきり倒れ込んだ。
「「お姉ちゃん/清歌さん!?」」
霙と富くんの声がほぼ同時に聞こえて、転んだ清歌さんに駆け寄る。私も遅れて後に続いた。
「…あうー、ごめんなさいね。大丈夫よ」
「大丈夫じゃないでしょ!?何で何もないところで転ぶの!?」
「また怪我したらどうするんだよ!気を付けなさい!」
「だから、ごめんなさいってばー!」
わーん、とそのまま泣き出してしまいそうなトーンで話す清歌さん。私はどうすべきか分からず、困惑したままだった。
「あら、その子は…夕音ちゃんね!また遊びに来てくれたのね」
にこにこと笑う清歌さんに釣られて、私は苦笑いを浮かべる。大丈夫ですか、と手を差し伸べると受け取ってくれた。そのまま3人で立ち上がらせる。
「慣れてるから大丈夫なのに。富くんが見えたから急いで来たのよ。みーちゃんと夕音ちゃんも見えて、更にウキウキしちゃったわ」
その言葉に、私達は3人真っ赤になって黙ってしまった。
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