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12月14日 返事
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潮賀くんをたまたま手に入ったスイーツペアチケットで買収して、放課後に北原くんを呼んでもらうことにした。潮賀くんは目をキラキラと輝かせながら、きっちりと仕事をこなしてくれた。
というわけで今、私は人気のない校舎裏ベンチ近くで、北原くんと向かい合わせで立っている。傍目から見ると一触即発状態。決闘直前のピリピリした雰囲気を纏った男女は、異様だっただろう。いや、決闘なんてしたことないが。
北原くんも要件は分かっているのだろう、伏し目がちに私をじっと見つめていた。
「あの、北原くん」
「はい」
北原くんを見つめ返して、私は震える唇を開く。早く言わなければ。分かってる。でも。心の中で往生際悪く格闘し続ける安寧への執着心。変わらない関係を望み続ける心。そんなの無理だって、頭のどこかでは分かっているはずなのに。別の箇所ではまだ戻れるはずだって馬鹿なことを考える。
その時、チラッと北原くんが腕時計を見た。部活前の僅かな時間に来て貰ったのだ。あまり時間を掛けるわけにはいかない。それに、思い出した。回り始めた針が止まることは、一度も無かったことを。私は北原くんから少し目線を外して、唇を開いた。
「…告白してくれてありがとう」
声が、震える。
「でも、私には好きな人がいるの。だから、ごめんなさい」
息が上手く吸えない。12月の冷たい空気が肺に入って、キンキンする。
「でも」
私は北原くんの目を見た。いつもより少し悲しげな表情に、胸が痛む。それでももう紡いでしまった言葉は取り消せない。無理やり息を吸って、チクチクする胸に蓋をして、言葉を続ける。
「──好きになってくれて、ありがとう」
そう言って遠慮がちに微笑むと、北原くんは驚いたように目を見開いた。ゆっくりと目を伏せると、再度私と目を合わせて微笑んでくれた。
「こちらこそ、好きにならせてくれてありがとう」
北原くんはそう返して、部活の時間だから、と去っていった。
変わる、変わる。季節は巡る。冷たい空気が肌にひりついて痛む。苦しい。告白を断るのってこんなに苦しいの?怖いの?じゃあ告白する側は?
恋使である私にも分からないことを、皆やってみせたんだ。分からない苦しさを、体験して来たんだ。私より先に一歩も二歩も進んでいった皆。
小野くん、由芽。竜夜くんに紗奈。霙と雪くんはずっと前に経験してるんだっけ。それに亜美と潮賀くん。蒼くんに利羽。叶わない恋を抱いた菜古ちゃん。浅野くん、眞里阿。片倉さんに花火。そして、北原くん。
あぁ、格好良いな。
そんな当たり前のことに、今更気付いたんだ。
というわけで今、私は人気のない校舎裏ベンチ近くで、北原くんと向かい合わせで立っている。傍目から見ると一触即発状態。決闘直前のピリピリした雰囲気を纏った男女は、異様だっただろう。いや、決闘なんてしたことないが。
北原くんも要件は分かっているのだろう、伏し目がちに私をじっと見つめていた。
「あの、北原くん」
「はい」
北原くんを見つめ返して、私は震える唇を開く。早く言わなければ。分かってる。でも。心の中で往生際悪く格闘し続ける安寧への執着心。変わらない関係を望み続ける心。そんなの無理だって、頭のどこかでは分かっているはずなのに。別の箇所ではまだ戻れるはずだって馬鹿なことを考える。
その時、チラッと北原くんが腕時計を見た。部活前の僅かな時間に来て貰ったのだ。あまり時間を掛けるわけにはいかない。それに、思い出した。回り始めた針が止まることは、一度も無かったことを。私は北原くんから少し目線を外して、唇を開いた。
「…告白してくれてありがとう」
声が、震える。
「でも、私には好きな人がいるの。だから、ごめんなさい」
息が上手く吸えない。12月の冷たい空気が肺に入って、キンキンする。
「でも」
私は北原くんの目を見た。いつもより少し悲しげな表情に、胸が痛む。それでももう紡いでしまった言葉は取り消せない。無理やり息を吸って、チクチクする胸に蓋をして、言葉を続ける。
「──好きになってくれて、ありがとう」
そう言って遠慮がちに微笑むと、北原くんは驚いたように目を見開いた。ゆっくりと目を伏せると、再度私と目を合わせて微笑んでくれた。
「こちらこそ、好きにならせてくれてありがとう」
北原くんはそう返して、部活の時間だから、と去っていった。
変わる、変わる。季節は巡る。冷たい空気が肌にひりついて痛む。苦しい。告白を断るのってこんなに苦しいの?怖いの?じゃあ告白する側は?
恋使である私にも分からないことを、皆やってみせたんだ。分からない苦しさを、体験して来たんだ。私より先に一歩も二歩も進んでいった皆。
小野くん、由芽。竜夜くんに紗奈。霙と雪くんはずっと前に経験してるんだっけ。それに亜美と潮賀くん。蒼くんに利羽。叶わない恋を抱いた菜古ちゃん。浅野くん、眞里阿。片倉さんに花火。そして、北原くん。
あぁ、格好良いな。
そんな当たり前のことに、今更気付いたんだ。
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