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12月24日 クリスマスパーティ
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「乾杯ー!」
お母さんの掛け声でクリスマスパーティが始まった。参加者は私と私の両親、羅樹と羅樹のお父さんの5人だ。買い物から帰ってきた後、張り切っているお母さんの手伝いをして、ケーキ作りなどを手伝った。お母さん曰く、久しぶりに作りたくなったのだとか。香味野菜としてネギが添えられたチキンやサラダ、更にローストビーフ、その他いろいろな料理が並ぶ。お肉が多めなのは、比率的に男が多いからだろう。お酒に強いお母さんはジュースのようにお酒を飲んでいる。お父さんはいろんな料理を少しずつ取って食べては満足そうな笑みを浮かべていた。羅樹も肉を頬張り、嬉しそうに笑う。その姿を見て羅樹のお父さんも微笑んだ。皆の笑顔が見られるこの日は、とても大切で幸せな日だ。
良かった、またこの日を一緒に過ごすことが出来て。
ちょっと感傷的な気分に浸ってしまう。羅樹と羅樹のお父さんは仕事の関係であまり一緒に食事を取れていないようだし、2人が並んでいるところを見ると母親のような目線で見てしまう。
「美味しい~」
「本当?良かったぁ…」
「僕も手伝ったんだよ。お父さん、これ食べてみて」
「おう。旨いな」
「でしょう?」
得意げな羅樹に、皆が微笑ましげな目線を向ける。その視線に気付かない羅樹の嬉しそうな顔が、特に好きだった。羅樹の笑顔が、好きだ。心臓をぎゅっと掴まれたような、それでいて温かい気持ちになれるから。
わいわいと食事を終えて、食後のデザートを用意する。お酒を飲んで良い気分になったお母さんはそのままに、今日くらいは、と私が動くことにした。テーブルの上を片付けて、冷蔵庫で冷やしておいたケーキとお皿を置く。
「じゃあ切るよ」
お父さんがナイフを入れて、均等に5等分。それぞれにケーキが行き渡ったところで食べ始める。生クリームと苺でデコレーションした、定番のケーキだ。私と羅樹も手伝ったので、多少不格好な生クリームがあるのは、ご愛嬌だ。
「美味しい、羅樹?」
「美味しい!」
「手伝ったから余計に美味しいでしょう?」
「はい、幸せな気持ちになれます」
「夕音は手伝わなかったのか?」
「手伝ったよ!さっきの料理も手伝ったよ!?」
「そうか…上達したな」
「何それ!?」
お父さんがしみじみと言うので、ついツッコんでしまった。そのやり取りを聞いていた3人から笑いが起こる。少し恥ずかしかった。ケーキを片付け始めたところで、羅樹のお父さんに電話が掛かってきた。申し訳なさそうなジェスチャーをして廊下に行った後、数分で戻ってきた。その表情が少し暗い。
「羅樹」
「何、お父さん?」
「明日出掛ける予定だったが…急に仕事が入った。断ったんだが上司命令でな…埋め合わせは後で必ずする。けど、ごめんな」
羅樹は話を聞いて俯いた後、「そっか…」と悲しみを誤魔化して微笑んだ。
「稲森さん、クリスマス限定のペアチケット要りませんか?今聞いた通り、私は行けなくなってしまったので」
「羅樹くんはいいのか?」
羅樹はぼんやりとしていて、話が聞こえていないらしかった。久しぶりにお父さんと過ごせる筈だったのに、急にその予定が駄目になったのだから仕方ないだろう。
「…ふむ。夕音、明日の予定は?」
「え?特にないけど?」
「なら2人で行って来なさい」
「…は?誰と誰が?」
「夕音と羅樹くんだ。他に誰がいる」
「え、だって、他って」
「元は榊原さんのものだ。羅樹くんもそうした方が気が晴れるだろう」
「そうだけど…」
未だ話半分で聞いている羅樹の顔を覗き込むようにして、羅樹を現実に引き戻す。はっと我に返った羅樹が無理して笑うのが、痛々しかった。
「ね、羅樹。お父さんが2人で行って来たら、って言うんだけど…」
羅樹は私の言葉を聞いて、ぱちくりと目を瞬かせた。
「…2人?」
「私と、羅樹」
「…いいの?」
「いいっていうか、勿体ないし。私とお母さんで行くのもお父さんに悪いし…元は羅樹のものなんだから、羅樹が使えるならいいかなって…」
恥ずかしさを誤魔化すように、適当な言い訳を並べる。早く断るか承諾するかの返事をして欲しいと思いながら、平静を装った。長い付き合いのこの人たちには効かないんだろうけど。
「行く!行きたい!明日だけど、大丈夫?」
「大丈夫よ。予定なんてないし」
「約束ね!」
羅樹が小指を差し出して来た。いつまで経っても子供みたいだ、と微笑ましく思いながら私も小指を差し出す。明日の予定を決めた後に、羅樹はお父さんと2人で家に帰って行った。
その後、自室に戻って眠る直前にデートであることに気付いて、のたうち回ったのは内緒だ。
お母さんの掛け声でクリスマスパーティが始まった。参加者は私と私の両親、羅樹と羅樹のお父さんの5人だ。買い物から帰ってきた後、張り切っているお母さんの手伝いをして、ケーキ作りなどを手伝った。お母さん曰く、久しぶりに作りたくなったのだとか。香味野菜としてネギが添えられたチキンやサラダ、更にローストビーフ、その他いろいろな料理が並ぶ。お肉が多めなのは、比率的に男が多いからだろう。お酒に強いお母さんはジュースのようにお酒を飲んでいる。お父さんはいろんな料理を少しずつ取って食べては満足そうな笑みを浮かべていた。羅樹も肉を頬張り、嬉しそうに笑う。その姿を見て羅樹のお父さんも微笑んだ。皆の笑顔が見られるこの日は、とても大切で幸せな日だ。
良かった、またこの日を一緒に過ごすことが出来て。
ちょっと感傷的な気分に浸ってしまう。羅樹と羅樹のお父さんは仕事の関係であまり一緒に食事を取れていないようだし、2人が並んでいるところを見ると母親のような目線で見てしまう。
「美味しい~」
「本当?良かったぁ…」
「僕も手伝ったんだよ。お父さん、これ食べてみて」
「おう。旨いな」
「でしょう?」
得意げな羅樹に、皆が微笑ましげな目線を向ける。その視線に気付かない羅樹の嬉しそうな顔が、特に好きだった。羅樹の笑顔が、好きだ。心臓をぎゅっと掴まれたような、それでいて温かい気持ちになれるから。
わいわいと食事を終えて、食後のデザートを用意する。お酒を飲んで良い気分になったお母さんはそのままに、今日くらいは、と私が動くことにした。テーブルの上を片付けて、冷蔵庫で冷やしておいたケーキとお皿を置く。
「じゃあ切るよ」
お父さんがナイフを入れて、均等に5等分。それぞれにケーキが行き渡ったところで食べ始める。生クリームと苺でデコレーションした、定番のケーキだ。私と羅樹も手伝ったので、多少不格好な生クリームがあるのは、ご愛嬌だ。
「美味しい、羅樹?」
「美味しい!」
「手伝ったから余計に美味しいでしょう?」
「はい、幸せな気持ちになれます」
「夕音は手伝わなかったのか?」
「手伝ったよ!さっきの料理も手伝ったよ!?」
「そうか…上達したな」
「何それ!?」
お父さんがしみじみと言うので、ついツッコんでしまった。そのやり取りを聞いていた3人から笑いが起こる。少し恥ずかしかった。ケーキを片付け始めたところで、羅樹のお父さんに電話が掛かってきた。申し訳なさそうなジェスチャーをして廊下に行った後、数分で戻ってきた。その表情が少し暗い。
「羅樹」
「何、お父さん?」
「明日出掛ける予定だったが…急に仕事が入った。断ったんだが上司命令でな…埋め合わせは後で必ずする。けど、ごめんな」
羅樹は話を聞いて俯いた後、「そっか…」と悲しみを誤魔化して微笑んだ。
「稲森さん、クリスマス限定のペアチケット要りませんか?今聞いた通り、私は行けなくなってしまったので」
「羅樹くんはいいのか?」
羅樹はぼんやりとしていて、話が聞こえていないらしかった。久しぶりにお父さんと過ごせる筈だったのに、急にその予定が駄目になったのだから仕方ないだろう。
「…ふむ。夕音、明日の予定は?」
「え?特にないけど?」
「なら2人で行って来なさい」
「…は?誰と誰が?」
「夕音と羅樹くんだ。他に誰がいる」
「え、だって、他って」
「元は榊原さんのものだ。羅樹くんもそうした方が気が晴れるだろう」
「そうだけど…」
未だ話半分で聞いている羅樹の顔を覗き込むようにして、羅樹を現実に引き戻す。はっと我に返った羅樹が無理して笑うのが、痛々しかった。
「ね、羅樹。お父さんが2人で行って来たら、って言うんだけど…」
羅樹は私の言葉を聞いて、ぱちくりと目を瞬かせた。
「…2人?」
「私と、羅樹」
「…いいの?」
「いいっていうか、勿体ないし。私とお母さんで行くのもお父さんに悪いし…元は羅樹のものなんだから、羅樹が使えるならいいかなって…」
恥ずかしさを誤魔化すように、適当な言い訳を並べる。早く断るか承諾するかの返事をして欲しいと思いながら、平静を装った。長い付き合いのこの人たちには効かないんだろうけど。
「行く!行きたい!明日だけど、大丈夫?」
「大丈夫よ。予定なんてないし」
「約束ね!」
羅樹が小指を差し出して来た。いつまで経っても子供みたいだ、と微笑ましく思いながら私も小指を差し出す。明日の予定を決めた後に、羅樹はお父さんと2人で家に帰って行った。
その後、自室に戻って眠る直前にデートであることに気付いて、のたうち回ったのは内緒だ。
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