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12月23日 用件
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クリスマス直前というか、冬休み直前でも部活はあるらしい。私は特にやることはないので帰り支度をする。そこでたまたま、廊下をすれ違った五十嵐くんに気付く。五十嵐くんもこちらに気付いたらしく、ふっと笑顔を見せてくれる。
「やぁ、稲森さん」
「部活?」
「うん、まぁ。そんなとこ」
曖昧に笑う五十嵐くんに、何だか違和感を感じた。何かを隠して笑う人は、心の音を聞き取れる私には違和感として映る。そういう人が友人に多過ぎて、つい踏み込んでしまう。
「私も行っていい?」
「え、どうして?」
「少し前に、いくつか部活見学したんだ。科学部と天文部。それで、写真部も見てみたいなって」
「そうなんだ」
相槌を打つ五十嵐くんはどこか上の空で、なんとなく断りたがっているように見えた。見えたからと言って、空気を読むとは限らないけど。笑顔で了承してくれたが、向かうのは部室の方向ではなかった。気付いてはいても、それを指摘はしない。あまり人の来ない場所、前に霙が酸欠になった際に来ていた場所まで案内された。冬も本格的になってきた12月下旬に、風通しの良い廊下はとても寒い。マフラーや手袋で防寒をしていても震えてしまいそうだ。
「それで、本当の理由は?」
立ち止まった五十嵐くんが、振り向きながらそう言った。私の嘘に気付いていたらしい。嘘というか、適当に合わせて言っただけだ。
「本当の、って?」
「冬休み直前に部活見学なんてしないでしょ。ボクに何か話でもあるの?」
五十嵐くんに話、と聞いて思い出したのは半月前のこと。菜古ちゃんに相談されていたな、とふと思い出す。あの後爽に「馬鹿」と言われてすっかり忘れていた。
「まどろっこしい話は無しにしてさ。単刀直入に言ってよ」
ふっと笑う五十嵐くん。部活について話してくれたときはこんなにピリピリした笑顔を向けるようなことはなかった。何か、あったのだろうか。
「亜美が、好きだったの?」
私の直接的な言葉に、五十嵐くんは予想外だとでもいうように目を見開いて、やがて眉尻を下げて笑った。
「好きだったよ。わかりやすかった?」
本当は菜古ちゃんから聞いただけだが、それについては触れない方が良いだろう。沈黙を肯定と取ったらしい五十嵐くんは、風の根本、窓の方を見て笑った。
「ボクは割と一途でね。幼い頃から引っ越してくるまでずっと好きだった人がいたんだよ。親戚付き合いで遠い昔に何度か会っただけだけど、ボクを引っ張ってくれる彼女が好きだった。親の仕事の関係もあるけど、彼女との再会を夢見てこっちに来たんだ」
五十嵐くんは語り出す。いとこの少女との出会いを。オレンジのふわふわのショートカットに、黒縁眼鏡が似合う小柄な女の子のことを。
今入 紗奈のことを。
「やぁ、稲森さん」
「部活?」
「うん、まぁ。そんなとこ」
曖昧に笑う五十嵐くんに、何だか違和感を感じた。何かを隠して笑う人は、心の音を聞き取れる私には違和感として映る。そういう人が友人に多過ぎて、つい踏み込んでしまう。
「私も行っていい?」
「え、どうして?」
「少し前に、いくつか部活見学したんだ。科学部と天文部。それで、写真部も見てみたいなって」
「そうなんだ」
相槌を打つ五十嵐くんはどこか上の空で、なんとなく断りたがっているように見えた。見えたからと言って、空気を読むとは限らないけど。笑顔で了承してくれたが、向かうのは部室の方向ではなかった。気付いてはいても、それを指摘はしない。あまり人の来ない場所、前に霙が酸欠になった際に来ていた場所まで案内された。冬も本格的になってきた12月下旬に、風通しの良い廊下はとても寒い。マフラーや手袋で防寒をしていても震えてしまいそうだ。
「それで、本当の理由は?」
立ち止まった五十嵐くんが、振り向きながらそう言った。私の嘘に気付いていたらしい。嘘というか、適当に合わせて言っただけだ。
「本当の、って?」
「冬休み直前に部活見学なんてしないでしょ。ボクに何か話でもあるの?」
五十嵐くんに話、と聞いて思い出したのは半月前のこと。菜古ちゃんに相談されていたな、とふと思い出す。あの後爽に「馬鹿」と言われてすっかり忘れていた。
「まどろっこしい話は無しにしてさ。単刀直入に言ってよ」
ふっと笑う五十嵐くん。部活について話してくれたときはこんなにピリピリした笑顔を向けるようなことはなかった。何か、あったのだろうか。
「亜美が、好きだったの?」
私の直接的な言葉に、五十嵐くんは予想外だとでもいうように目を見開いて、やがて眉尻を下げて笑った。
「好きだったよ。わかりやすかった?」
本当は菜古ちゃんから聞いただけだが、それについては触れない方が良いだろう。沈黙を肯定と取ったらしい五十嵐くんは、風の根本、窓の方を見て笑った。
「ボクは割と一途でね。幼い頃から引っ越してくるまでずっと好きだった人がいたんだよ。親戚付き合いで遠い昔に何度か会っただけだけど、ボクを引っ張ってくれる彼女が好きだった。親の仕事の関係もあるけど、彼女との再会を夢見てこっちに来たんだ」
五十嵐くんは語り出す。いとこの少女との出会いを。オレンジのふわふわのショートカットに、黒縁眼鏡が似合う小柄な女の子のことを。
今入 紗奈のことを。
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