神様自学

天ノ谷 霙

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12月27日 ハイジャンプ

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最初の和気藹々とした雰囲気は何処へやら、目の前には厳しい先輩と従い努力する後輩という力関係が目に見える構図となっていた。ただ互いを尊敬し合い、信頼しているようにも見えた。先程のやり取りで多少私にも打ち解けてくれたのか、皆率先して教えようとしてくれる。お陰で早い段階で記録作業には慣れた。バーの調整は基本的に当人らでやるので、私は専ら記録作業だ。
「次、浅野!」
他の2年生が呼び掛け、浅野くんが位置につく。走り、踏み込み、そして跳ぶ。バーに向かって体を逸らし、宙で体勢を整えマットに背中から着地する。まるで空を跳んでいるかのようか軽やかさに、私は息を呑んだ。浅野くんの踏み込みから着地までがスローモーションのようだった。
「余裕あるな。もう少し高くするか」
「了解」
私は慌てて数字を記録し、再度バーを見つめる。少し高くなっただけなのに、先程よりも断然難しそうに見えた。
「もう一回連続で行けるか?」
「行けるな。感覚掴んでおきたい」
「よし、浅野行くぞ!」
再度浅野くんがスタート位置につき、笛の音に反応して走り出す。助走をつけて踏み込んで跳ぶ。ただそれだけの動作が難しくて、美しい。バーに足が掛からないように体を丸めながら、マットに着地した。また成功だ。
「今日調子良いな」
「大会も近いしな」
「もう一回跳ぶか?」
「他の奴らも見なきゃ駄目だろ」
2年生組はくすくすと笑って、一旦最初の高さに戻す。次は1年生が跳ぶらしい。
「行きます!」
走ってバーに近付き、踏み込みを利用して体を逸らして跳んだ。しかし最後の最後で体の丸め方が足りなかったのか、足が引っ掛かりバーが落下してしまった。
「跳んでから気を抜くなー」
「最後、もう少し足を体に寄せる感じだな」
「はい」
先輩からのアドバイスに、素直に頷く1年生。実際に体を動かして慣らしていく。次に跳んだ時には、しっかりと体を丸めて成功させていた。1巡2巡と繰り返して、最も近い大会に出場する選手の優先練習となった。それ以外の選手は記録やバーの安全確認、給水準備などをこなしている。飛び終えた後の話は専門的で私には分からないので、首を突っ込まないようにして与えられた仕事に懸命になっていた。休憩を挟みつつ、あっという間に半日が経った。どうやらこの後は別の部活が使用するので、練習は終了らしい。
「掃除とか校庭整備をして、終わりだな。今日は助かったよ、ありがとう」
「いえいえ、拙いマネージャーで申し訳なかったな」
「全然。慣れてるのかっていうくらいテキパキ働いてくれてたよ」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとう」
そんな会話をしていると、浅野くんは記録用紙を持って顧問の元へ行ってしまった。私は他の小物を体育倉庫に戻しに行くのを手伝った。
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