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12月31日 疲労
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新年の挨拶を考え直す、と当主は自室に向かった。その後を静々と付いてこうとした扇様のお母様は、私の方を見て微笑んだ。
「私達は明日の準備に取り掛かります。それまで、夕音さんは…えぇと…」
「奥様」
スッと戸を開けて音も無く現れたのは、花火だった。久しぶりに学友であり身分や口調に気を付けなくていい相手が現れた気がして、無意識に頬が緩む。
「夕音様は私にお任せください。儀式にも参加し、お疲れでしょうから」
「まぁ、助かるわ。ありがとう」
にこにこと朗らかに笑い、私の相手はお母様から花火へと変わる。花火と2人きりになった瞬間、やはり気を張っていたのか、膝からペタンと頽れた。
「夕音!?」
慌てた花火が私の元に駆け寄る。背中を支えてくれるが、私の体は動かない。
「ご、ごめん…ちょっと疲れたみたい…」
「そうよね…巻き込んでごめんね…」
「ううん、私から巻き込まれに来たの。花火のせいじゃないよ」
力無く返すと、花火は今にも泣き出しそうな申し訳なさそうな顔をした。そんなにも私は弱って見えるのだろうか。酷く眠いだけで、特に自分では異変を感じないのだが。
そういえば昨日、屋敷に来る際も朝早かった。それから慣れない会食を終え、儀式に飛び入り参加し、国で最も偉いお方と言葉を交わし、あちらこちらへと動き回った。改めて考えると、疲れない方がおかしい。
「夕音が通されている客間に戻りましょう。そこでゆっくり休んで」
「うん。ありがとう…」
立ち上がろうとしたが、体が言うことを聞かない。泥のように重く、固まって動かない。戸惑うが、対策を練るための脳もあまり機能していない。
そんな私に気付いたのか、花火は襟に付けた無線機のような通信機で誰かを呼んだ。すぐに現れたのは恰幅の良い30代くらいの女性で、私と花火を見て朗らかに笑った。彼女は私の膝裏に手を差し入れると、そのままの姿勢で持ち上げた。お姫様にするような抱っこの仕方だ。普段の私なら頬を赤く染めて軽く抵抗しただろうが、今はそんな気力も無い。
花火に先導されて、女性は私を運んでくれる。
「すみません、手伝っていただいて」
「構わないよ。儀式用の飾り物は重いから、小柄なアンタには難しいだろう?」
そんな会話が、かろうじて耳に入ってくる。私は女性の腕の中で、ほとんど微睡の中に落ちていた。客間まで運んでもらい、そのままベッドへと下される。ふかふかのシーツと枕、それに布団まで全てが包み込むような手触りで、私は飲み込まれるようにあっという間に眠りに付いた。
「私達は明日の準備に取り掛かります。それまで、夕音さんは…えぇと…」
「奥様」
スッと戸を開けて音も無く現れたのは、花火だった。久しぶりに学友であり身分や口調に気を付けなくていい相手が現れた気がして、無意識に頬が緩む。
「夕音様は私にお任せください。儀式にも参加し、お疲れでしょうから」
「まぁ、助かるわ。ありがとう」
にこにこと朗らかに笑い、私の相手はお母様から花火へと変わる。花火と2人きりになった瞬間、やはり気を張っていたのか、膝からペタンと頽れた。
「夕音!?」
慌てた花火が私の元に駆け寄る。背中を支えてくれるが、私の体は動かない。
「ご、ごめん…ちょっと疲れたみたい…」
「そうよね…巻き込んでごめんね…」
「ううん、私から巻き込まれに来たの。花火のせいじゃないよ」
力無く返すと、花火は今にも泣き出しそうな申し訳なさそうな顔をした。そんなにも私は弱って見えるのだろうか。酷く眠いだけで、特に自分では異変を感じないのだが。
そういえば昨日、屋敷に来る際も朝早かった。それから慣れない会食を終え、儀式に飛び入り参加し、国で最も偉いお方と言葉を交わし、あちらこちらへと動き回った。改めて考えると、疲れない方がおかしい。
「夕音が通されている客間に戻りましょう。そこでゆっくり休んで」
「うん。ありがとう…」
立ち上がろうとしたが、体が言うことを聞かない。泥のように重く、固まって動かない。戸惑うが、対策を練るための脳もあまり機能していない。
そんな私に気付いたのか、花火は襟に付けた無線機のような通信機で誰かを呼んだ。すぐに現れたのは恰幅の良い30代くらいの女性で、私と花火を見て朗らかに笑った。彼女は私の膝裏に手を差し入れると、そのままの姿勢で持ち上げた。お姫様にするような抱っこの仕方だ。普段の私なら頬を赤く染めて軽く抵抗しただろうが、今はそんな気力も無い。
花火に先導されて、女性は私を運んでくれる。
「すみません、手伝っていただいて」
「構わないよ。儀式用の飾り物は重いから、小柄なアンタには難しいだろう?」
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