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1月14日 本当の想い
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鹿宮くんは顔を伏せて、躊躇いがちに口を開いた。
「…明が、告白されているところを見て」
「うん?」
明はその可憐な容姿から度々そういった呼び出しを受けている。あまり珍しいことではないと認識していたが、鹿宮くんは違うのだろうか。
「わざとじゃなかったんすけど、申し訳なくて。あんなの見た後にどうやって接すれば良いんすかね」
「あんなのって、そんな珍しい告白だったの?」
「…」
私の問い掛けに、鹿宮くんは口を噤む。ずっと雨の気配が伝わってきて頭痛がする。思わず強くなってしまった口調を慌てて戻し、鹿宮くんの言葉を促した。
「…叫ぶような、強い言葉でした。見てるこっちがドキドキするような、心の底から想ってることがわかる…そんな告白で。本当に好きなんだ、って感じで。だから、見てて思ったんすよ」
鹿宮くんの心の中で、風が逆巻く。段々と強まっていく雨は、それでも静かに降り注ぎ続ける。
「…俺、本当に好きなのかなって」
雨が、凍る。
鹿宮くんの目が虚ろに開かれて、寂しそうに俯く。冷たくなった恋心が泣き出しそうに震える。
「…好き、って」
「…あれ?稲森は気づいてたんじゃないんすか?俺が、明を好きなこと」
「…っ」
心の気配と、伝わってくる感情では何となく気付いていた。けれど多くの人は隠す感情だから気付かないふりをしていて、本人に直接言われるなんて滅多にないことだから驚いてしまっただけだ。私が戸惑っていると、自嘲するように鹿宮くんは笑う。
「まぁ言っちゃったもんは取り返しが付かないし。惚れちゃったんすよ。ほとんど一目惚れみたいなもので。春休みに部活参加出来るって聞いて、行ってみたんすよ。そしたら校舎を見上げてる明がいて。明とは受験の日にも会ってたんでその時の話をして、それで、笑った顔が凄く綺麗で。気付いたら、もう」
懐かしそうに目を細めて話す鹿宮くんは、頬を少しだけ紅潮させて嬉しそうだった。
「それで自覚したっす。俺は明が好きだって。でもどうにかなりたいって気持ちはなくて。だから明が告白されてるのを見ても、びっくりしたくらいで引き止めたい気持ちは起きなかったんすよ」
鹿宮くんの言葉に、私は驚く。好きな人が他の人に取られそうだというのに、嫉妬の情も湧かなかったというのか。そんなこと、あるのだろうか。
「そんな程度の想いなんだって思い知らされたような気がして。こんな奴が明の側に居るのは告白した人や明が好きな人に申し訳なくて。だから、顔が合わせづらかったんすよ。明と何かあったわけじゃないんすけどね」
そう言って苦笑いを浮かべる鹿宮くんは、いつになく弱っていて。自分の想いに自信が持てない不安定な足場で、必死に解決方法を探っていた。
でも、私は"恋使"だから分かってしまう。
鹿宮くんは本当に明が好きなんだと、自分の気持ちを見失っていることが。
「…明が、告白されているところを見て」
「うん?」
明はその可憐な容姿から度々そういった呼び出しを受けている。あまり珍しいことではないと認識していたが、鹿宮くんは違うのだろうか。
「わざとじゃなかったんすけど、申し訳なくて。あんなの見た後にどうやって接すれば良いんすかね」
「あんなのって、そんな珍しい告白だったの?」
「…」
私の問い掛けに、鹿宮くんは口を噤む。ずっと雨の気配が伝わってきて頭痛がする。思わず強くなってしまった口調を慌てて戻し、鹿宮くんの言葉を促した。
「…叫ぶような、強い言葉でした。見てるこっちがドキドキするような、心の底から想ってることがわかる…そんな告白で。本当に好きなんだ、って感じで。だから、見てて思ったんすよ」
鹿宮くんの心の中で、風が逆巻く。段々と強まっていく雨は、それでも静かに降り注ぎ続ける。
「…俺、本当に好きなのかなって」
雨が、凍る。
鹿宮くんの目が虚ろに開かれて、寂しそうに俯く。冷たくなった恋心が泣き出しそうに震える。
「…好き、って」
「…あれ?稲森は気づいてたんじゃないんすか?俺が、明を好きなこと」
「…っ」
心の気配と、伝わってくる感情では何となく気付いていた。けれど多くの人は隠す感情だから気付かないふりをしていて、本人に直接言われるなんて滅多にないことだから驚いてしまっただけだ。私が戸惑っていると、自嘲するように鹿宮くんは笑う。
「まぁ言っちゃったもんは取り返しが付かないし。惚れちゃったんすよ。ほとんど一目惚れみたいなもので。春休みに部活参加出来るって聞いて、行ってみたんすよ。そしたら校舎を見上げてる明がいて。明とは受験の日にも会ってたんでその時の話をして、それで、笑った顔が凄く綺麗で。気付いたら、もう」
懐かしそうに目を細めて話す鹿宮くんは、頬を少しだけ紅潮させて嬉しそうだった。
「それで自覚したっす。俺は明が好きだって。でもどうにかなりたいって気持ちはなくて。だから明が告白されてるのを見ても、びっくりしたくらいで引き止めたい気持ちは起きなかったんすよ」
鹿宮くんの言葉に、私は驚く。好きな人が他の人に取られそうだというのに、嫉妬の情も湧かなかったというのか。そんなこと、あるのだろうか。
「そんな程度の想いなんだって思い知らされたような気がして。こんな奴が明の側に居るのは告白した人や明が好きな人に申し訳なくて。だから、顔が合わせづらかったんすよ。明と何かあったわけじゃないんすけどね」
そう言って苦笑いを浮かべる鹿宮くんは、いつになく弱っていて。自分の想いに自信が持てない不安定な足場で、必死に解決方法を探っていた。
でも、私は"恋使"だから分かってしまう。
鹿宮くんは本当に明が好きなんだと、自分の気持ちを見失っていることが。
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